「グッドデザイン大賞」候補

電動義手「HACKberry」(exiii)。3Dプリンターを活用することにより製造コストを大幅に抑えた上に、設計データをウェブで無償公開し、世界中の技術者やデザイナーが機能やデザインの選択肢を連鎖的に追加できるようオープンソース型の仕掛けを採用しているのも評価のポイントとなった。

パーソナルモビリティ「WHILL Model A」(WHILL)。どんな人でも"ちょっと乗って移動する"を叶えた、車椅子が必要な人に限定しない、パーソナルなモビリティとしての新しいコンセプトで開発された電動駆動車。

「ミライ」(トヨタ自動車)。世界初のセダンタイプの量産型燃料電池自動車。優れた環境性能だけでなく、燃料電池自動車としての独自のデザイン様式にも挑戦している。

「フリーフォームディスプレイ」(シャープ)。ディスプレイ=四角形という固定概念を崩したデザインで、コンテンツやユーザーインターフェースにもイノベーションをもたらす可能性が評価された。

「地域経済ビッグデータビジュアライゼーションのプロトタイピングシステム」(タクラム・デザイン・エンジニアリング)。経済産業省の地域経済分析システム「RESAS」のプロトタイプとして開発。大規模な経済データを美しい3Dのグラフィックでわかりやすく表現する。

道の駅「ソーネ周南」(一般社団法人周南ツーリズム協議会)。道の駅に公共施設としての役割を持たせ、高齢化が進む小規模農家や加工所、交通弱者の人でも農作物を出荷できるようにした山口県での取り組み。

道の駅「FARMUS木島平」(一級建築士事務所スターパイロッツ+長野県木島平村)。古い工場を改修し、農業の拠点施設、および道の駅として再生したプロジェクト。工場独特の既存の空間性や構造設備を活かしながら、新しい独自の空間を築いた点が、古いものを大切にして新しい価値を加えながら未来へ引き継ぐとう村の姿勢を引き継いでいる。

和食給食推進事業「和食給食応援団」(合同会社五穀豊穣)。和食文化の継承に意欲を持つ約30人の料理人が結集して設立された団体。全国各地の小中学校を訪問し、学校栄養職員と連携した和食給食の献立の開発や調理提供、食育授業などを通して、子どもたちに和食の大切さを伝えている。

審査員の総評

10月30日に行われた「グッドデザイン賞特別賞発表会」に登壇した、日本デザイン振興会理事長の大井篤氏は「近年、社会の中でデザインの役割がますます大きくなっている。こうした時代環境を踏まえて、審査の過程においては、新たな試みとして社会やわれわれ一人ひとりが解決しなければならない問題・課題について、12の"フォーカス・イシュー"という形にまとめて、それらにデザインがどのように働きかけるかに目を向けることで、デザインの本質的な役割はもとより、これからの暮らしや社会を形づくる上で種になりうるもの見いだすことに努めた」と説明した。

フォーカス・イシューとして掲げられたのは、「地域社会・ローカリティ」、「社会基盤・モビリティ」、「地球環境・エネルギー」、「防災・減災・震災復興」、「医療・福祉」など、社会が抱える12項目の課題だ。

グッドデザイン賞特別賞発表会の席で挨拶する、日本デザイン振興会理事長の大井篤氏。

今年度から審査委員長を務める永井一史氏。

永井氏と同じく、今年度から審査副委員長に就任した柴田文江氏。

また、審査委員長を務めた永井一史氏も「グッドデザイン100の中から、暮らしを豊かにしていく審美性に加えて、フォーカス・イシューの視点を導入することで、より広い観点から評価したものが特別賞として選ばれている。デザインが社会の中で毛細血管のようにあらゆる場所や地域に流れはじめている今、特別賞の中にあるデザインの多様な領域や外見だけでなく、その中にあるプロセスやそれがもたらす価値やそういう観点でデザインを注目していただければありがたい」と語り、今年度の審査における新しい試みへの理解を求めた。

同じく今年度から審査副委員長に就任した柴田文江氏は「これまでデザインというのはプロジェクトや問題に対して対面して物をつくってきた傾向にあったと思うが、今年は問題の内側に入って当事者が抱える問題を丁寧にひもといたものが今回ベスト100の中に多く見られたと感じる」と総評した。

グッドデザインを一覧できる「G展」

2015年度のグッドデザイン賞受賞デザインやロングライフデザイン賞などを集めた「GOOD DESIGN EXHIBIYION 2015(G展)」は、東京・六本木の東京ミッドタウンで11月4日まで開催。開場時間は11時から20時まで(最終日は17時30分まで)。入場料(6日間共通)は大人1,000円、中学生以下は無料。

2015年度に最も多くの「グッドデザイン賞」を獲得した三菱電機とパナソニックの特別展示コーナー。受賞デザインとデザインマインドを紹介。

展示の他に、グッドデザイン・ベスト100に選ばれたデザイナーによるプレゼンテーションやトークイベントなども予定されている。

2015年度「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」の展示。長年消費者に親しまれた数々のおなじみのプロダクツが今年も受賞している。

東京ミッドタウン内には、Gマーク商品を販売する期間限定ショップも登場。場内吹き抜けになってる2階フロアからショップを見下ろすと、天井部分に"Gマーク"がデザインされている。

ちなみに、参加することで同展のチケットが無料で入手できる参加型コンテンツ「MEETinG」も実施中。気になる人はぜひ参加してから、会場に足をはこんでみては。