既報の通り、アクロニス・ジャパンは9月9日、個人向けとなるバックアップソフト「Acronis True Image 2016」と「Acronis True Image Cloud」を発表。ここでは同日に行われた発表会をレポートする。米アクロニス社 CEOのセルゲイ・ベロウゾフ氏も訪れた。

まず、今年(2015年)アクロニス・ジャパンの代表取締役に就任した大岩氏が簡単にスピーチ。「注視しているのはシステムバックアップ、モバイル、クラウド、コンシューマー。日本は通信インフラが安定していて、たくさんのユーザーが多岐にわたるマルチデバイスをすでに経験中であることから、モバイルデバイスも意識したコンシューマー向けクラウドバックアップソフトを発表できるのは大変重要」(大岩氏)と述べた。

アクロニス・ジャパン 代表取締役の大岩憲三氏。就任早々、こうしたイベントに関われてうれしいとのことだ

米アクロニス社 CEOのSerguei Beloussov(セルゲイ・ベロウゾフ)氏。来日は2年ぶりで、コンシューマー製品関連では初来日

米Acronis社 CEOのセルゲイ氏は、自社の概況と新製品について説明した。アクロニス社はバックアップソフトで有名だが、その原動力となっているのが多大な開発投資。社員の半数が研究開発部門に所属することで、先進技術を開発しているという。

近年「データの爆発」といわれているように、日々多くのデジタルデータが生まれており、個人でもスマートフォンの普及などによって、大量のデータを生成・保持するようになった。これらデータを安全に守りたいという欲求も強くなっており、五大欲求の一つにデータ保護があると指摘。

コンシューマー系のフルバックアップソフトでは定評あるアクロニス社は、2003年の設立。企業向けでも実績を積んできている

代表的な製品はコンシューマー向けの「Acronis True Image」と、企業向けの「Acronis Backup」、ファイル同期・共有ソフト「Acronis Access」

企業での採用例は非常に多い。国内では神奈川県庁での採用例もある

社員の4割以上が開発者で、収益の25%を再投資しているという

データ爆発は少し前から叫ばれている話だが、スマホ時代になった現在では個人のデータ量も急激に増えている

データ喪失は起こるもので、それを防ぎたいというニーズが強くなっているという

アクロニス社は2年前から、あらゆるデータを安全に保管する「Acronis Anydata Engine」のプラットフォーム開発に着手し、企業向けでも活用されている。ここで発表された「Acronis True Image 2016」「Acronis True Image Cloud」は、個人向けに最適なバックアップ環境を提供すると強調した。

新バージョンでは、「Acronis True Image Unlimited for PC and Mac」として提供していたものを「Acronis True Image Cloud」と改名。これは、Windows PCやMacのみならず、モバイル環境(iPhone / iPad / Android / Windows Phone)にも対応したためだ。なお、Windows Phoneは後日の対応予定となっている。

ローカルバックアップに加えてクラウドへの無制限バックアップに対応(サブスクリプション制)。さらにアーカイブ利用にも対応した

Acronis True Image Cloudは、モバイルデバイスへの対応、Web一元管理、クラウド最適化、Windows 10対応が主な新機能だ

PCだけでなくモバイル環境にも対応。PCを持たない人(モバイルデバイスのみ)でも利用可能とのこと。モバイルデバイスの買い替えに伴うマイグレーション(データ移行)にも活用できる

Web管理画面では、「1PC版」の場合でモバイルデバイスを3台まで管理可能。リモートでPCのバックアップ指示を出すことや、バックアップ・アーカイブファイルの個別ダウンロードが行える

クラウドのストレージスペースはバックアップだけでなく、アーカイブスペースとしても利用可能で、ストレージの少ないPCの外部ドライブとして使えるようになった。さらに、「クラウドは遅い」のイメージを払しょくすべく努力しており、現在は日本にデータセンターを設立した関係で、3年前と比べて半分程度の時間でクラウド上へデータをアップロード可能になったと説明。データセンターは東京に設置しているが、今年さらに2カ所増やす予定も示された。

昨年(2014年)の無制限バックアップに続き、ファイル置場としての利用も可能。ただし、ビデオファイルをオンラインでストリーミング視聴するのは難しいらしい

転送速度は3年前の倍、3年後にはさらに倍以上の速度アップを計画。データの転送は暗号化し、国内複数拠点も計画されている

PC環境に目を向けると、Windows 10とMac OS 10.10に対応している

価格はPC版のTrue Image 2016が4,980円から、True Image Cloudが年間9,980円から

日本からの要望によって「Try&Decide」機能が復活

アクロニス・ジャパン リージョナルプロダクトマネジャーの古館與章氏

続いて、リージョナルプロダクトマネジャーの古館氏が、実際にソフトを使用しながらのデモを行った。新バージョンは「速くて簡単確実」をキャッチフレーズとしており、「OS丸ごとバックアップ」も高速化したという。

日本のユーザーからの要望が多かったということで、一時的なテスト環境を提供する「Try&Decideモード」が復活。繰り返しになるが、最新OSへの対応などもAcronis True Image 2016とAcronis True Image Cloudの主な新機能だ。

Acronis True Image Cloudに関しては、先述したモバイル環境への幅広い対応と無制限のクラウドストレージ、Webコンソールが三大特徴。Windows Phoneに関してはコメントしなかったものの、推測すると、後日公開となるWindows 10 Mobileで対応すると考えられる。

Windows用画面。昨年からかなり地味なカラーリングとなった

バックアップ先の指定画面。外付けドライブの他にAcronis Cloudがある

Mac用画面。こちらもAcronis Cloudへ無制限のバックアップが行える

iPhone用画面。連絡先/写真/ビデオ/予定表/リマインダーのバックアップが可能。iCloudと違って容量無制限で追加費用がかからないことや、連絡先の端末移行時に向いているとした

セキュリティとプライバシーに関しては、クラウド上に保存するユーザーデータはAES-256で暗号化しており、ユーザーがパスワードを設定して使う。このパスワードを忘れたり紛失したりすると、アクロニス側でも復号できないとした。

ローカルストレージからのアーカイブは、利用頻度とジャンルで選択。読み出しは、PCならマウントされたネットワークドライブ越し、その他のデバイスからはWeb管理画面でアクセスできる。同一アカウントならば他のOSからでも利用可能だ。

Web管理画面。オンライン状態ではリモートでバックアップを指定することもできる

9月9日から発売するのはオンライン版。当然ながらクラウド版は高めだが(しかも1年単位のサブスクリプション)、無制限のストレージ容量とアーカイブ利用にも使えると考えると悩ましい

パッケージ版は11日からの発売だが、ラインナップが絞り込まれている

旧バージョンからのアップグレードは従来通り「二つ前のバージョン」までが対象

パッケージ見本。地味な印象なので店舗で見つけにくいかも

デモブース。多くのOS、機器に対応する

セルゲイ氏によるまとめスライド。「バックアップで将来のデータ喪失に備えろ!」ってことで、スライドに出してしまったために後日ノベルティが作成されるかも