ANSYS Vice President Asia OperetionsのTom Daniel Kidermans氏

アンシス・ジャパンは9月4日、都内でプライベートイベント「ANSYS Convergence - 2015 Japan」を開催し、同社の最新技術などの説明をユーザーなどに行ったほか、ANSYS Vice President Asia OperetionsのTom Daniel Kidermans氏が日本で9月7日より正式提供を開始した汎用エンジニアリングシミュレーションソリューションの学生向けパッケージ「ANSYS Student」の説明などを行った。

ANSYSは、「すべての製品開発に携わるエンジニアがシミュレーションを利用する時代が来る」という目標の元、さまざまな分野で利用が可能なシミュレーションソリューションを提供してきた。そうした取り組みの結果、2005年には、シミュレーションを活用していたエンジニアは22人に1人の割合であったものが、2015年には6人に1人へと増加してきており、2020年にはすべてのエンジニアが活用することが期待できるようになってきたと同氏は説明する。

ANSYSの目標とするところ。2020年とここではしているが、時期的なものは問題ではなく、あくまですべてのエンジニアがシミュレーションを活用する時代がくることが目標となっている

そうしたエンジニアの育成に向けて、早い段階からのシミュレーション活用という観点から、学生の育成にも注力しており、今回の「ANSYS Student」の提供もその一環だという。ちなみに先行して発表されている米国では、発表48時間で、世界中からアクセスがあり、数千のダウンロードが実行されたという。

ANSYS Studentは、学生が無償でANSYS Fluent、ANSYS Mechanicalなどの同社の主要製品の解析ワークフローやプリ・ポストプロセッサ、およびソルバーソリューションをフル機能で用いることを可能とするパッケージで、機能面の制約はないかわりに、サイズとしてStructural physics(構造解析)が32,000nodes/elements、Fluid physics(CFD)が512,000cells/nodesを上限として、商用利用は不可としている。

また同社では、ダウンロードサイトやツールそのものは英語版での提供となるため、今後、日本の学生に向けた日本語コンテンツの充実などを図っていく予定としている。

ANSYS Studentを紹介する同社の特設Webサイト。見るとわかるがすべて英語であり、アンシス・ジャパンでは、日本の学生に向けた日本語コンテンツの拡充などを図ることで、利用促進を図りたいとしている

加えて同氏は、今後、ANSYSとしてどういった方向に技術を発展させていくかにも言及し、「システムエンジニアリング」「クラウドおよびコラボレーション」「IoT」「ビッグデータ解析」の4つの分野が鍵になるとした。1つ目の「システムエンジニアリング」は、単なるコンポーネントレベルのシミュレーションの実行ではなく、最終製品をより良いものとするために、それらコンポーネントを組み合わせた状態でのシミュレーションを実行するツールを提供していくというもの。2つ目の「クラウドおよびコラボレーション」は、ツールをクラウドベースで提供することで、場所の制約なしにシミュレーションを実行することを可能とするサービス「ANSYS Enterprise Cloud」であり、すでに国内でのサービス提供も開始している。3つ目の「IoT」については、「さまざまな機器をネットワークに接続するためには、『アンテナ』『センサ』『電源』『組み込みソフトウェア』の4つのコンポーネントが必須。これらを組み合わせてIoTを具現化しようという企業に対し、最適なツールを提供していきたいと思っている」(同)とする。そして4つ目の「ビッグデータ解析」については、「ANSYSでは、コア領域であるシミュレーション周辺のみにフォーカスしており、データ処理全体に手を出すつもりはない」(同)とし、ものづくり企業であればどこでも有しているであろう過去のシミュレーションデータをすべて解析し、活用できるインテリジェントなツールを提供したいとするほか、IoTと連動させることで、IoT機器に搭載されたセンサからもデータを取得し、次世代製品開発に活用できるツールも提供していきたいとした。

なお同氏は、「ビッグデータとIoT、そしてシミュレーションは、異なる分野のようで、実は大きな枠組みの中ではつながっている」とANSYSとしてのビッグデータやIoTに対する考え方を示しており、そうした新たな技術をシミュレーションの世界に取り込んでいくことで、製品の高性能化や長寿命化を図っていく手助けができれば、としていた。

ANSYSが考える、今後のシミュレーション技術に求められる4つのキーテクノロジー