なぜXilinxは今後の戦略を披露したのか?

さて、ここまでの話は実はSDxの発表会の際にも部分的には出てきた事柄で、今更という感もあるのだが、にも関わらず本国から何故Senior VPがわざわざ来日してこんな説明会を開催したか、といえば言うまでもなくIntelによるAlteraの買収に伴う状況の変化をXilinxがどう捉えてどう対抗してゆくかを明確にするためのものとして良い。実のところIntelはAltera買収完了後に、どうシナジーを生み出し、それに伴いどういう製品ポートフォリオを展開してゆくかに関して明確な指針を出していない。だからといってXilinxとしては、向こうが明確な方針を出すまで待ってるのは馬鹿であって、幾つかのシナリオを描いた上でそれに対抗できる戦略を先に打ち出し、手を打つ必要がある。

そのシナリオで一番考えやすいのは、データセンターあるいはクラウドにおけるFPGAの利用であり、ここでIntelとAlteraの価格面でのコラボレーションなどが考えられる。このあたりをGlaser氏にぶつけてみたところ「考えて欲しいのだが、FPGAを使うとデータセンターでの性能を例えば30倍とかに効率アップできる。ということは、それだけIntelのCPUが売れなくなるということになる(笑)。これはIntelにとっては必ずしも好ましい変化とは言えない。彼らはCPUを売りたいわけだからね。だから、彼らのコラボレーションはむしろ最小限のものに留まると思う。一方顧客はコストを削減したいわけで、だからIntel-Alteraのソリューションが必ずしも最適なものとはならないと予想している」という返事であった。

ちなみに、既存のZynqはともかく、次に登場するUltraSCALE世代のMPSoC Zynqの場合、Quad Core Cortex-A53×4+Dual Core Cortex-R5、さらにMali-400という恐ろしく重厚な構成になっており、Glaser氏によれば「ダイエリアの70%はこれらのProcessingなどの固定機能に当てられており、FPGAのエリアは30%程度」というほどである。これは最初に新規の製品を作るときには便利であろうが、ある程度こなれた第2・第3世代の製品を作るときにはややOverkillな嫌いもある。このあたりを伺ったところ「Zynq MPSoCはバリエーションを多く用意するので、ローエンドはもっとプロセッサ数などが少なくなる。それはともかく、もし顧客が価格面での差別化を重視し、機能や性能での差別化を要求しないのであれば、それはXilinx以外のソリューションをお勧めする。我々は機能や性能面での差別化を追及する顧客向けに製品を提供しており、そうした顧客には(Zynq MPSoCの)豊富な機能が有用になる」ということで、このあたりの割り切りも戦略の一部と見做してよいのだろう。

Intel/Altera連合という、傍目には強大な組み合わせに対峙するためにXilinxもある程度先鋭化してゆかないといけない、という意思を表明したのが今回の発表会の骨子であったと筆者には受け取れた。