「CurrentC」における問題点とは

Apple Payのローンチ以降よく言われるのは「Apple PayはNFCなのに、CurrentCはQRコードで技術的に前時代的」「Apple Pay対抗のためにMCX加盟店がCurrentC以外のNFC技術(例えばApple Pay)の利用を排除している」といった話だ。

だが、CurrentCの問題の本質はNFC対応かどうかの部分ではなく、実質的にクローズドな環境とすることでクレジットカード取り引きを極力排除しようとしている点にある。以前のApple Payのレポートでも少し触れているが、MCXでは独自の決済システムを構築することで、現在は店舗負担になっているクレジットカード手数料の支払いを避ける狙いがあるといわれている。

CurrentCでは、アプリのセットアップの際に、基本的なプロファイル入力のほか、4桁数字のPINコードと支払い手段を設定する。支払い手段はTargetの発行するデビット/クレジットカード/ギフトカードのほか、「ACH」と呼ばれる銀行の当座口座(Checking Account)の指定が可能だ。つまり現状ではTargetのカードを用いない限り、支払いに際して銀行口座を直接指定して引き落とす形となる。

これにより、決済手段にクレジットカードなどを指定した場合に比べ、CurrentCでは中間介在業者が少ないため、銀行や決済事業者間でやり取りされる決済手数料(Interbank Feeなどと呼ばれる)がほぼ最低で済むため、小売事業者の決済手数料負担が少なくなって利益が上がるという仕組みだ。

もちろん、クレジットカードそのものを排除してしまうと、顧客を失う結果となるが、CurrentCなどMCXが提供するサービスの決済比率が高まれば、自然と店舗決済全体における手数料負担は少なくなる。MCX加盟店同士でさらにストアカードや顧客情報を相互運用することで設備投資負担も下げ、小売事業者のメリットを最大化しようというのがMCXの背景にある。

こうした試み自体は理解でき、その目指す方向性もわかるが、問題はこれが顧客のメリットにつながっているかという点だ。

前述のようにストアカードの相互運用と決済のシンプル化は大きな点だが、一方、7-Elevenが従来まで店舗に導入していたNFC対応読み取り機が除去されてしまったり、Best BuyやCVSなどの小売店がNFC対応の決済ターミナルを導入しているにもかかわらず、Apple Payの決済を拒否しているなど、せっかくの支払い手段を限定してしまっている。

全米にドラッグストアチェーンを展開している「CVS」。決済端末はNFC対応だが、Apple Payは受け付けておらず、実際にiPhone 6をかざしても決済ネットワーク側で拒否のエラーメッセージが出てくる