COMPUTEX TAIPEI 2015の基調講演の中でIntelのKirk Skaugen氏(Senior VP&GM, Client Computing Group)がUSB Type-Cコネクタを利用したThunderbolt 3について言及したが、これに関する詳細が別セッションで行われ、Shahaf Kieselstein氏(Photo01)とJason Ziller氏(Photo02)より説明があった。

Photo01:Shahaf Kieselstein氏(VP&GM, CCD, Client Computing Group)

Photo02:Jason Ziller氏(Marketing Director, CCD, Client Computing Group)

Thunderbolt 3はAlphine Ridgeというコード名として開発されていたものだ(Photo03)。この名前自体は2014年から出ていたが、製品化にたどり着くかどうかが危ぶまれていた。ただ結果的には、これが製品化にむけて進んでいるのが確認できたことになる。さて、そのAlpine RidgeというかThunderbolt 3の特徴であるが

Photo03:ちなみに「現状はTechnology Demoだ」(Ziller氏)ということで、Alpine Ridgeの消費電力とか価格については未公表状態だ

  • Alpine Ridge自身はThunderbolt3のコントローラ兼USB 3.1のコントローラとして動作する。なので、USB 3.1デバイスを直接接続することも出来る。
  • Thunderbolt 3モードでは、最大40Gbpsの転送が可能(USB 3.1では10Gbps)。
  • 複数のビデオ映像を通すことができる
  • USB-PD(Power Delivery)を使って最大100Wまでの供給が可能
  • 複数プロトコルをサポート

といったあたりだ(Photo04)。以下個別に説明する。

Photo04:旧来のThunderbolt/Thunderbolt 2との最大の違いは、MiniDisplayPortコネクタと決別したことという言い方もできるかもしれない

まず速度。Thunderboltは3種類のケーブルをサポートしており、Passiveで20Gbps、Active/Opticalで40Gbpsとなっている。もともと、USB Type-Cコネクタは裏表をひっくり返しても通信に問題ないように2対の送受信信号線が配されており、どっちでも使えることになっている(Photo05)。

Photo05:Passive Cableでも使えるのはせめてもの救いか

一対の信号はそれぞれ10Gbpsであるが、これを両方使えば20Gbpsということになる。Passive Cableの場合に20Gbpsというのはこれをそのまま使った形で、なのでケーブル長は2mに制約される。

では40Gbpsは? というと、信号速度を倍に引き上げたものと思われる。もちろんこうなるとPassive Cableではまともに送受信できないから、Bufferを挟んだActive Cableとなるが、それでも信号速度が20GbpsになるからCopper Cableだと2mが精一杯で、それ以上はOptical Cableという制約がつくのは妥当なところだろう。

次がモニタの出力で、Thunderbolt 3では1本の配線で4K@60Hzのモニタ×2、もしくは5K@60Hzのモニタ接続が可能だという(Photo07)。また、ひとつのThunderbolt 3からは最大8枚のモニターが接続可能だ。

Photo06:これはVESAの"DisplayPort Alt Mode for USB Type-C Standard"という資料より抜粋。DisplayPortもAlt ModeとしてType-Cコネクタを使うモードを定義しており、その資料である

Photo07:最近では4Kモニターの価格が非常に下がっており、これを「複数接続するのも現実的」とする

Photo08:もちろん4Kモニターが8枚というわけではない

電力に関しては、Bus Powerで15Wまで供給され、またUSB-PDを使うことで100Wまで供給されることになる。ただこの15Wのうちのいくらかは、Thunderbolt 3のActive Cable内部のBuffer用にも使われることになるから、最終的にデバイスにBus Powerとして供給できるのがどの程度かは現状はっきりしない。

Photo09:この場合、USB-PDの制御もAlpine Ridgeで行えるのか、別にコントローラが必要なのかは不明。恐らく外付けでUSB-PD用のPMICが必要になるように思う

最後にマルチプロトコルというか、そのほかのFeatureについても触れておきたい。まずThunderbolt 3は従来通りディジーチェーン接続が可能で、最大6台まで可能となっている(Photo10)。またThunderboltの上にPCI Expressを通すことはもちろん可能だし(Photo11)、Thunderboltを介してPeer-to-PeerのNetworkも実現可能である(Photo12)。

Photo10:2nd Port(写真で言えば真ん中の2つのポート)も、デバイスから見るとHostと同じように扱われるそうである

Photo11:帯域的には、仮に40Gbpsを全部割り当ててもPCIe Gen3 x4相当にしかならない(というか、そもそもAlpine Ridge自身がPCIe Gen3 x4接続である)ので、そう広帯域というわけではない

Photo12:もっともこれは複数のマシンをThunderbolt 3で相互接続できるだけで、外に繋げるには何かしらRouterが必要となるのは言うまでもない(PCがその役割を果たせるかもしれないが)

さて、従来のThunderboltとの互換性はこのままではないが、それを可能にするBridgeが別途提供される予定らしい(Photo13)。ちょっとわかり難いのがロゴ/アイコンで、これは従来のものと一緒で名前だけ異なるという形になるそうだ。まぁコネクタ形状が違うから挿せば分かるということかもしれないが。

Photo13:物理層の違いを吸収できればそう問題はないと思うが、プロトコル層がThunderbolt 3でどの程度拡張されているかは気になるところ

Photo14:せめて色を変えるとかしてほしかった気はする

会場には、サンプルシリコンのAlphie Ridgeを使ってのデモも行われていた。Photo15はThunderbolt 3→2×Display Portのコンバータ、Photo16はThunderbolt 3を使ってのPeer-to-Peer Network接続例、Photo17~20はPCIe接続のデモである。また、Thundebolt 3対応のドッキングステーション(Photo21)や小型ストレージ(Photo22)などが展示されていた。

Photo15:Thunderbolt 3をDP×2に変換するだけ。Mini DPではなくDPというのは、やはり誤解を招かないためだろうか?

Photo16:2台のノートで、お互いのストレージにそれぞれ置かれた動画ファイルにリモートでアクセスして再生するというもの。しかし、さっぱり立ち上がらない10GBase-Tに代わってThunderbolt 3がLANの標準になったらそれはそれで面白いのだが、それには同時接続数が絶対的に足りない気もするし、ケーブルが2mというのも致命的に短すぎる気がする

Photo17:一見すると単にHDDかSSDが入ってるだけの箱に見えるが

Photo18:中身はこちらである。つまりPhoto17の箱にはPCIe Gen3 x4レーンがきており、ここにSSD 750を装着しているというもの

Photo19:これはノートの外にGPUをThundebolt経由のPCIeで接続して動かすデモ

Photo20:動いているのはAMDのRadeon。担当者に「政治的に問題ないのか?」と聞いたら、「我々はどんなデバイスもカバーするんだ」という答えが(笑)

Photo21:USBとDisplayPort出力をサポートしたドッキングステーション例。他にも何種類かデザイン違いがあった

Photo22:将来は、USB type-CとThunderbolt 3に両対応の外付けHDDケースとかが流通するのかもしれない

現状はあくまでもテクノロジデモであり、正式出荷の時期などはまだ明らかにされていない。またAlpine RidgeはHost/Device両対応のコントローラであるが、HostのみあるいはDeviceのみという製品は、それがあるかどうかを含めて現状では不明である。

ただActive Cableの事も考えると、引き続き高コストのハイエンドI/Oというポジションから脱するのは難しいだろうし、そうであればそれほど急ぐ必要もないのかもしれない。