5月21日、シャープは液晶テレビのフラッグシップモデル「AQUOS 4K NEXT」(LC-80XU30)の製品発表会を行った。

「AQUOS 4K NEXT」(LC-80XU30)

デジタル情報家電事業本部 液晶デジタルシステム第一事業部部長の宗俊氏は、「シャープでは4Kの次、つまり8K時代を見据えて技術開発を行っており、今回のAQUOS 4K NEXTは、そのなかから生まれたもの」と語る。

デジタル情報家電事業本部 液晶デジタルシステム第一事業部部長の宗俊氏

AQUOS 4K NEXTは、映像信号を超解像技術によって8Kアップコンバートし、8K相当の解像表現が可能な4Kパネルで表示するというテレビだ。

4Kパネルで8K相当の映像を表示する技術とは

従来の4Kテレビに使用されていたパネルは、1画素単位で見ると、RGBサブピクセルの1カ所にしか輝度ピークを作ることができなかった。LC-80XU30に使用されているパネルは、RGBにYを加えた4原色パネルであり、このうちの4カ所に輝度ピークを作ることで輝度方向の解像度を2倍に高めた。

また、RGBYの各サブピクセルは上下2つに分割されており、それぞれを独立して駆動。これにより、垂直方向の解像度も2倍となり、4Kパネルでありながら、8K相当の解像度を実現できるという仕組みだ。

左が従来の4Kパネルの画素イメージで、右がLC-80XU30に採用されているパネルの画素イメージ

シャープは2013年10月に開催された「CEATEC JAPAN 2013」で、2Kの液晶パネルで4K並みの高精細表示を実現する技術を出展。さらに同月に発表されたAQUOSクアトロンプロで、市場に投入している。今回のパネルはこの技術を発展させたものだ。

従来技術の4KテレビとLC-80XU30の精細度の違い。下は、それを拡大したもの

また、高い演色性能を持つ「高色再現型LED」を新たに開発し、直下型のバックライトとして採用している。従来のバックライト用LEDは、青色のLEDに黄色の蛍光体を使用することで白色を発光していた。対して新開発の高色再現型LEDでは、青色LEDに新緑色蛍光体と新赤色蛍光体を使用することで、白色光を得ている。

この新型LEDを使用したバックライトによって、緑方向と赤方向の色域を大幅に拡大。さらに、4原色パネルを採用することでの黄色方向の色域も拡大。スタンダードクラスのフルハイビジョンテレビ(LC-40H20)に比べて、約1.4倍の色再現範囲を実現した。

新開発のメガコントラスト技術も採用されている。パッケージ映像や放送などで圧縮された映像信号を分析し、シーン内の輝きの部分を復元してダイナミックレンジを拡大。直下型のバックライトの分割駆動により再現するというものだ。

緑と赤、黄色方向の色域を拡大している

映像解析とバックライトの分割制御でダイナミックレンジを拡大

LC-80XU30のおもな仕様

LC-80XU30の画面サイズは80V型。パネルの画素数は3,840×2,160ドットだが、前述のように8K相当の表示が可能だ。チューナーは地上/BS/110°CSデジタル×3基で、USB HDDに2番組の同時録画が可能だ。

HDMI端子は4入力を装備しており、HDMI 2.0、HDCP 2.2、ITU-R BT.2020に対応している。スピーカーは、ツイーター×2。ミッドレンジ×2、ウーファー×2の3Way構成で、実用最大出力は65Wだ。

電源はAC100Vだが、消費電力や年間消費電力量などは、現時点では未定。サイズや質量も未定だ。発売は7月10日で、価格はオープン。推定市場価格は1,680,000円前後(税別)。

次世代規格への対応は

先日、4K向けの次世代ブルーレイ「Ultra HD Blu-ray」の規格策定が完了したというニュースが報じられた。Ultra HD Blu-rayでは、各色の色深度が8bitから10bitに拡張され、ハイダイナミックレンジ「HDR」もサポート。会場では、AQUOS 4K NEXTがUltra HD Blu-ray、なかでもHDRに対応できるのかという質問が出たが、デジタル情報家電事業本部 次世代AVシステム開発センター所長の加藤氏は、「HDRに関しては、表現能力としては十分対応できる。HDRの規格が固まった時点で、対応していくかどうかも含めて検討していく」と述べた。

デジタル情報家電事業本部 次世代AVシステム開発センター所長の加藤氏

注意したいのは、AQUOS 4K NEXTは、あくまでも4K規格のなかで作られているテレビだということ。4K映像を8K相当で表現できるが、アップスケールおよびその他の技術による表示のみで、その後に控えている8K放送や8Kテレビに対応しているわけではない。

ただし、8Kテレビには、現在のHDMI 2.0では伝送のための帯域が足りないなど、まだ乗り越えなければならない壁があり、すぐに商品化されるものでもない。AQUOS 4K NEXTは、現在の規格で実現できる最高の画質を追及したモデルであり、画質を求めるユーザーには注目の製品だといえるだろう。

従来の4KテレビとLC-80XU30の映像比較。左側に映っているのが従来4K、右側に移っているのが今回のAQUOS 4K NEXTだ。写真ではうまく表現できていないが(むしろ従来4Kのほうがきれいに見える写真もあるが)、AQUOS 4K NEXTは高輝度かつ高彩度(広色域)だ。さらに高彩度ながら、階調(グラデーション)も上手に描写されている