製品ラッシュとなる2015年後半
AMDの2015年前半は、PC市場の落ち込みなどが影響して、損益の悪化が生じる状態になっている。しかし、スー氏は「2015年後半は、数多くの新製品が投入され、Windows 10の後押しも期待できるため、収益性が改善する」と見ている。そこで、AMDは、本会議に会わせて開発コードネーム「Carrizo-L」(カリッゾL)と呼ばれてきた新しい省電力APUを「AMD 7000シリーズAPU」として発表、中国市場を中心に出荷を開始した。また、GPUについてもモバイルGPUの新製品となる「AMD Radeon M300シリーズ」と、OEM向けデスクトップGPUの「AMD Radeon 300シリーズ」の出荷を開始し、欧米の新学期商戦に、これらの製品を採用したシステムが数多く投入させるという見通しを明らかにした。
さらに同社は、「Carrizo」の開発コードネームで知られるモバイル向け次期主力APUを「第6世代APU」として第2四半期中に出荷する計画を明らかにした。同APUは、Bulldozerシリーズの最終形態となる「Excavator」(エクスカヴェター) x86 CPUコアを採用し、従来製品と同じ28nm製造プロセスながら、高密度ライブラリを採用することで、半導体サイズを抑えつつ省電力性も向上させている。また、Carrizoでは4K時代のビデオ圧縮技術として期待されるHVEC(H.265)のデコード機能を実装しており、CPUに負荷をかけることなく、HVEC 4Kコンテンツのスムーズな再生を実現できるとして、競合となるIntel Core i5との比較デモも披露された。
Intel Core i5とCarrizoこと第6世代AMD AシリーズAPUによるHEVCコンテンツの再生デモ。Core i5(左)では、デコードのためCPUを利用しており負荷も高くなっているのに対し、Carrizoベースのシステム(右)ではCPUに負荷をかけることなくスムーズな再生を実現しているとアピール |
動画 |
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Intel Core i5システム(左)のHEVCビデオ再生では、CPU負荷が100%に貼り付くこともあるり描画がカクカクするが、第6世代AMD AシリーズAPU搭載システム(右)では、CPU負荷も低く、スムーズな再生を実現している |
AMDは、このCarrizoベースのAPUをサーバー市場にも積極展開する。Carrizoは、同社がARMやQualcomm、Samsungらとオープンスタンダード規格として推進する、CPUとGPUの密接な連係を実現するHSA(Heterogeneous System Architecture) 1.0をフルサポートした最初のSoCとなる。同社で、サーバーや組み込みビジネスを統括するフォレスト・ノロド上級副社長(Senior Vice President and General Manager, EESC:Enterprise, Embeddes, Semi-Custom)は、HSA 1.0をフルサポートし、CPUとGPUの密接な連係が可能になるサーバー向けAPUでは、急速に市場が拡大しつつある機械学習(マシーン・ラーニング)などの用途でその実力を発揮できるとみており、オープンソースの開発環境の整備も進めているところだと言う。
同社は、APUによる機械学習のパフォーマンスをアピールするため、同社が開発中の「AMD Looking Glass」と呼ぶ、映像から特定の人物を顔認証で見つけ、映像ファイル名のみならず、その人物が登場するビデオのフレームまで特定するデモを披露。データセンターにおいて、より高度な検索サービスを提供するときなどに、APUや同社GPUが役に立つとアピールした。
データセンター市場への再参入戦略について説明するノロド上級副社長 |
AMD Lookng Glassでは、人物を指定することで同人物が登場するビデオを検索することができる。ただし、今回は開発中のシステムということで、PC内ストレージの検索のみで、また、人物の顔情報のデータ構成などの詳細も聞くことはできなかった |
GPUでも、2015年後半は新製品ラッシュとなるようだ。同社は第2四半期中に、新しいハイエンドGPUを投入する計画を持っているが、リサ・スー氏は「一般市場向けデスクトップGPUは、2015年後半にトップ・ツー・ボトムの新ラインナップに切り換わることになり、売上げアップが期待される」と明らかにしている。そして、このハイエンドGPUには、GPU市場においてパフォーマンスリーダーシップを奪回するための秘策が講じられる。