iOS 8.3アップデートでもっともメリットを享受できる端末は、おそらく「au版iPhone 6/6 Plus」だろう。本稿では、そのメリットの内容と留意点について解説する。
弱点だった「コンカレント通信」が可能に
iOS 8.3にあわせて「VoLTE」が利用可能になったiPhoneだが、アメリカなど海外ではすでにサービスが開始されているし、日本でも一部のAndroid端末では対応している。VoLTEそのものはキャリア側のサービスであり、対応チップが必要とはいえシステム(iOS)に依存していないが、サービス開始のタイミングを踏まえそこを敢えて混同するのであれば、iOS 8.3最大の注目機能はVoLTEであることは間違いない。
しかし、VoLTEは通話相手が限定される。利用できるのは同じキャリア間のVoLTE対応端末のみで、具体的にはiPhone 6/6 Plusまたは2014年夏モデル以降のVoLTE対応Android端末を使うユーザで、かつ同じキャリア(またはMVNOの回線提供元が同じ)を利用しているときにかぎり高品質音声通話が可能になる。異なるキャリア間との相互接続開始時期は未定、VoLTE対応端末の少なさもあり、メリットをフルに享受できる日は当分先だ。
もっとも、au版iPhoneのユーザにとってのVoLTEには、音声通話以外にも大きなメリットがある。それが、音声通話とデータ通信を並行して処理する「コンカレント通信」だ。
ドコモやソフトバンクの3G回線(W-CDMA方式)はコンカレント通信に対応するため、通話しながらWEBブラウジングやメール送受信といったデータ通信を行うことができる。一方、auの3G回線に採用されている「CDMA2000」という通信方式は、音声通話とデータ通信を切り替えて使う仕様ため、Wi-Fi環境がないかぎりはその2つを並行処理できない。
一方、au版iPhone 6/6 PlusでVoLTEを有効にすると、3Gの音声通話とデータ通信機能は無効化され、以降はすべてが4G回線で行われるようになる。3Gへの切り替えが発生しないため、au版iPhoneでもコンカレント通信が可能になるというわけだ。
実際にau版iPhone(正確にはSIMフリー版iPhoneにau SIMを挿したもの、VoLTE有効化済)で通話中にWEBブラウジングやマップの閲覧、メールの送受信をひととおり試してみたが、確かに通話が途切れることなく処理できた。ソフトバンクからauへ移行してきたとき、もっとも"回線の違い"を実感した部分なだけに、これだけを見てもVoLTEのメリットは大といえる。