東京でも「開花宣言」が出るなど、各地で桜が咲き始め、写真撮影を楽しむ人にとっては休日が待ち遠しい季節になってきた。桜撮影のコツを紹介する短期連載企画の第3弾は、カメラのチルト可動液晶やWi-Fi機能を活かして、構図とアングルにこだわった撮り方をお伝えしよう。使用したカメラはキヤノン「PowerShot G7 X」。1.0型センサー&チルト可動液晶を備えた高級コンパクト機だ。

今回の相棒、キヤノン「PowerShot G7 X」。静岡県河津町の桜並木にて

前回は静岡県河津町での夜桜撮影のコツを取り上げたが、今回は同じく河津町での2日目、昼間の桜撮影を楽しんでみようと思う。

天候は朝から小雨まじりのくもりとなった。青空を背景にしてピンク色が映える桜の写真は撮れないが、晴天でなくても悲観することは何もない。曇天なら、曇天らしい落ち着きのあるしっとりした雰囲気の写真を狙えばいい。そう言って、心配そうに曇り顔した同行編集者を鼓舞し、いざ撮影スタートだ。

曇りの日は、フレーム内に●●を入れない

曇天撮影でまず気を付けたいことは、画面の中に空をできるだけ入れないようにすること。曇天や雨天の空は、写真上では真っ白に写り、あまり見栄えがしないからだ。白い空を入れずに、桜の木や花びら、建物などだけで画面を埋め尽くすような構図を心かげよう。

F2.8 1/500秒 ISO200 WB:オート

この写真では、空を切り詰めたほかに、もうひとつ画面から排除したものがある。行き交う歩行者の姿だ。実際には、桜並木の横には遊歩道があり、平日の朝にもかかわらず大勢の人でにぎわっていた。だが、カメラポジションを低くして、レンズをやや上に向けて撮ることで、主題である桜と菜の花だけで画面を構成した。

こうしたローポジション&ローアングルでの撮影では、PowerShot G7 Xのチルト可動式液晶が重宝する。しかもタッチパネル対応なので、画面に触れることでAF測距点(ピント位置)を自由に動かせる。上の写真では、画面奥の桜にフォーカスを合わせ、近景の菜の花を前ボケとして表現した。

液晶の角度を変えることで構図の自由度が大きく広がる

さらに次の写真は、花びらをクローズアップで捉えることで、白い空を隠した例だ。第1回の鹿児島編でも紹介したように、PowerShot G7 Xはマクロ性能の高さが魅力のひとつ。マクロモードの場合、ワイド端となる24mm相当から中間位置である40mm相当くらいまでは、レンズから最短5cmまで近寄って撮ることが可能だ。

露出については、露出補正をプラスにする、またはマニュアル露出モードを利用して、明るめにするのがおすすめ。曇天の桜を標準露出で撮影すると、全体にやや暗く、色が濁ったような印象になりがちだからだ。下の写真では、あえて明るめの露出にして花びらが透き通るようなイメージを狙ってみた。

F9 1/160秒 ISO400 WB:太陽光

この撮影の際も、花びらがやや下に向いて咲いていたため、チルト液晶を活かして下から見上げるようなアングルで写している。また、桜の色彩感を強調するために、ホワイトバランスを「太陽光」にしたうえで、補正機能を使って「A1、M7」に設定した。PowerShot G7 Xはファンクションメニューからホワイトバランスの選択、およびホワイトバランスの微調整を素早くセットできるのが便利だ。

次は、桜と菜の花によって画面を斜めに分断するように構成したもの。ここ河津町の桜撮影では定番ともいえる組み合わせである。ズームは100mm相当になるテレ端を使用し、遠近感を圧縮することで画面を引き締めた。

F8 1/200秒 ISO200 WB:太陽光

こうした縦位置での撮影では残念ながらチルト可動機構は使えない。だが、それ以上に構図の自由度を広げてくれる、もうひとつの機能がある。PowerShot G7 Xが備えるWi-Fi機能だ。