既存のWebブラウザには満足できないパワーユーザーに応えるため登場した新たなブラウザ「Vivaldi」。開発元・Vivaldi Technologiesの冨田龍起COOへのインタビュー後編では、Vivaldiの開発方針や製品の内部について、さらに細かく話を聞いていく。
Vivaldi TechnologiesのCOO・冨田龍起氏。普段は米シリコンバレー在住だが、オスロへの出張中にインタビューが実現した。ノルウェー国内では比較的温暖なオスロだが、3月に入っても朝晩は氷点下の日も |
――Vivaldiはパワーユーザー向けのブラウザを目指すということですが、ブラウザに多機能を求めるなら、例えば拡張機能の仕組みを利用すれば現在でも多彩な機能を追加できます。そういうやり方とはどう違うのでしょうか。
拡張機能にはもちろん良い点もたくさんあると思います(※)。しかし、機能的には良い拡張でも、ブラウザ本体と同じようにパフォーマンスが最適化されているわけではないですし、たとえ作者に悪意がなかったとしても、実装に問題があって個人情報が漏れてしまう可能性といった、セキュリティやプライバシーの面での潜在的なリスクがあります。
多くの人が必要としている機能なら、わざわざ拡張機能にするよりビルトインのほうがユーザーにとっても使いやすいし、ブラウザ本体のベンダーが開発するほうがきちんと検証・最適化できます。コンパクトに作りながらも、高機能なものが最初からパッケージされているというところをVivaldiは目指しています。
――VivaldiではレンダリングエンジンにChromiumプロジェクトの「Blink」を選択しました。少人数でブラウザ開発を行うためにエンジンを外部調達するという点は理解できますが、「Blinkでなけれぱいけない」という理由はあったのでしょうか。
Blinkを選んだ理由のひとつは、メンテナンスの継続性です(今後も安定的に開発が継続されることが期待できる)。
それから、多くの開発者がBlinkをベースとしてWebを作るようになっている……特定の実装に集中するのは決して良いことだとは思っていないのですが、やはりWeb開発者がそのブラウザでテストしないと、レイアウトが崩れたりJavaScriptの誤動作でページが見られなかったりといった問題が発生します。そういう互換性はOperaのとき一番苦労した部分なので、先行きの見通しもあわせて、今ある選択肢の中ではBlinkが一番いいかなと。
――仮にですが、将来的に開発リソースが潤沢になったとしたら、かつてのOperaのように独自のレンダリングエンジンを開発する可能性もありますか。
開発リソースが用意できて、それで十分差別化が図れる、Webを大きく前進できるということであれば、可能性としてはあり得ると思います。いきなり全部をということではなくコンポーネントごと、例えばJavaScriptのエンジンだけ書くとか。もちろん可能性としての話で、今具体的に計画があるわけではないです。