――製品やWebに対するビジョンや理念という点では、Vivaldiはどういう考えを持っていますか。

オープンなWebを実現するという考え方は、Operaの創業当時と変わっていないですね。特定のデバイスに限らず、Webのプラットフォームをどんどん広げていく。

今Webが一番大きく広がっているのはモバイル端末の世界だと思いますが、モバイルのブラウザがあまりオープンでない。iOSでは未だレンダリングエンジンを選択することができず、Androidはオープンでないこともないですが、最近Googleの意向がより強く働くようになっている。

ビジネス的な観点から見ると非常にわかりやすい動きではあるんですが、しかし、Webがここまで発展した理由として、OSにかかわらず同じアプリケーションを利用できる環境をブラウザが提供してきたことが大きいわけじゃないですか。

Webのプラットフォームを、アプリケーションの実行環境や開発環境としてより使いやすいものにしていく。この理念を今後も推し進めていくため、Vivaldiが世の中に与えられる潜在的なインパクトは大きいのではないかと考えています。特に互換性に関しては、昔のOpera時代にうまくいった経験も失敗した経験も含めて、どうしたらWebが互換性を保ちながら前進していけるというかという点で貢献できるのではないかと思います。

オスロのVivaldi開発チーム。このほかアイスランドのレイキャビクにも拠点があり、全体では20名あまりのスタッフで製品開発に取り組んでいる

また、標準化団体や業界のコミュニティへ積極的に参加し、Webの技術はこうあるべきだという自分たちの考えを伝えていくこと、プロジェクトに貢献することも必要です。これは他のブラウザに対抗するということではなく、僕らが独自の仕様を実装していくのは現実的ではないしWebにとってもいいことではないからです。まだバージョン1が出ていないので取り組めていないのですが、Chromiumプロジェクトが作ったものを常に決まった与えられるものとして使っていくのではなく、コミットもしていきたいなと。

アクセシビリティも取り組まなければいけないことのひとつですよね。Webがプラットフォームとして広がっていっても、何らかの理由でWeb自体が使えない人がいてはいけない。アクセシブルな環境を提供していくことは我々が継続してやっていかなければいけない。小さな会社ではありますが、僕らにできること、やるべきことはいろいろあると思っています。

――どこまで開発が進んだ段階で製品版リリースとする予定ですか。また目標時期は。

まずは、Opera 12に相当するだけの機能を実装するのが製品版、Vivaldiバージョン1へのステップですね。時期は具体的には言えないですが、我々内部での目標はあります。なるべく早く製品版を出したい。

最初のころはChromiumがバージョンアップするごとにいろいろなところが壊れて、バージョンを追いかけるのにもけっこう時間がかかっていたんですが、最近はChromiumのアップデート時も1人のスタッフがパートタイム的に対応するくらいでなんとかなっています。

試行錯誤を繰り返して土台の部分を敷けたので、ここに機能を実装していくのは比較的楽かなと。これから開発のスピードは上がっていくと思いますので、ご期待ください。

――ところで、CEOのJon von Tetzchner氏といえば「100万ダウンロードで大西洋横断」宣言(※)がもはや伝説となりつつありますが、Vivaldi製品版リリースのあかつきには……。

やっぱり泳いだほうがいいですかね……。一応、相談はしておきます(笑)。

※ 2005年4月にOpera 8をリリースした際、公開から4日以内に100万ダウンロードを突破したらノルウェーからアメリカまで大西洋を泳いで渡ると宣言。実際に100万以上のダウンロード達成したため大西洋横断が実施されたが、開始から間もなく伴走役が乗るゴムボートがパンクして沈没。社員の人命救助を優先するためやむなく、あくまでやむなく遠泳は中止となった)