構図については、光と影が作るコントラストを意識しながら、被写体の形を見極めることが大切だ。夜桜を見ると、どうしても鮮やかな色彩と輝きに目を奪われがちになる。だが、そのとき少し冷静になって、風景の全体と桜のシルエットをしっかりと見て、主役となる桜の木を画面上でバランスよく配置するように心がけたい。

下の写真では、画面の上1/3に漆黒の夜空を、下1/3に明るく輝く川面を配置し、その間にあるライトアップされた桜並木をはさみこむような構図を狙ってみた。もっとズームアップして桜のみを大きく写すことも可能だが、ここではあえて上下に空間を設けて整然とした雰囲気を強調している。

F8 15秒 ISO200 WB:オート

さらに次の写真は、下から上へ放射状に伸びる画面左の木を主役にしつつ、夜空や手摺りを写し込むことで、見る人の視線を左上から右下へと誘導するように画面を構成した例だ。そのうえで、桜を眺める人の後ろ姿を点景として配置した。

MF1.8 1/8秒 ISO1600 WB:電球

見栄えのいい桜には昼夜を問わず人が集まるため、どうしても画面に歩行者や見学者が写ってしまうことがある。そんなときは無理に避けようとせず、このように人の姿を構図のアクセントとして利用するのも有効だろう。

夜桜とループ橋、そして満天の星空を組み合わせる

川沿いのライトアップをひとしきり撮影した後は、河津桜まつりの別会場でもある湯ヶ野・七滝温泉地区まで足を伸ばした。といっても、温泉につかって一杯というのはまだ早い。ここでの目当ては、山中にそびえ立つ巨大建造物「河津七滝ループ橋」である。

このループ橋は建造物マニアにはお馴染みのもの。ぐるぐると渦巻く橋の根元には河津桜の木があり、自然と人工物の絶妙なマッチングが絵になる、隠れた桜の撮影スポットでもあるのだ。

PowerShot G7 Xを三脚にセットし、レンズを上に向けて、桜ごしにループ橋の滑らかな曲線を捉えてみた。感度はISO400に、シャッター速度は30秒に設定。小さく見える星の輝きまで、きっちりと撮ることができた。

F4 30秒 ISO400 WB:電球

さらに、PowerShot G7 Xに搭載されたユニークな撮影機能、シーンモードの「星空軌跡」も活用してみた。このモードを選んでシャッターボタンを押すと、低速シャッターによる撮影が一定間隔で連続的に行われ、同時にその撮影データがカメラ内で合成され、星の動きが1枚の写真上に光跡として記録される。

一般的な長時間露光による星の撮影では、空に露出を合わせるとライトアップされた建物や夜桜は露出オーバーで写ってしまうことが多い。だが、この星空軌跡モードでは、カメラまかせの設定で明るい部分と暗い星空の両方が最適な露出に仕上がる。

しかも、インターバル撮影と画像合成の進行状況はリアルタイムで液晶表示されるので、撮影途中で構図のミスに気づいてもすぐに撮り直しが可能だ。誰でも手軽に星の光跡写真が撮れる、とても便利な機能といえる。以下は星空軌跡モードを使って、30秒×10回=5分間撮影した写真だ。

F3.5 30秒×10 ISO125 WB:星空

これにて本日の撮影は完了。ミッションを無事遂行し、同行の編集者とともに、ようやくビールと食事にありつくことができた。狙いどおりの写真が撮れたあとの一杯は格別である。今回の撮影でもPowerShot G7 Xが大活躍してくれた。

次週は「桜の撮り方 2015」の第3弾として、PowerShot G7 XのWi-Fi機能を生かした撮影テクニックを紹介しよう。