続いては、昨年大好評だったアーキテクト部門だ。2014年は10チームが参加した。地区別の内訳は、北海道、東北、北関東、東京、南関東、東海、関西、中四国、九州、沖縄が1チームずつ。残念ながら北陸は参加していない。また内容的にD部門と比較して、アイディアで勝負できたり、会場パフォーマンスでフレッシュさや勢いなどをアピールできたりする一面があるため、学生チームが多いのが特徴だ。今年はちょうど社会人と学生と半々である。学生チームの内訳としては、大学(大学院)が2、高専が2、高校が1。というわけで、以下が会場での競技審査の得点順位ベスト5だ。

競技審査得点順位

  • 1位:175.0点 Circle of "F"(トヨタテクニカルディベロップメント/東海)
  • 2位:167.5点 男子力∞MAKOTO+α(宇部工業高等専門学校 ETロボコン同好会/中四国)
  • 3位:165.0点 mirai craft(富士ゼロックス/南関東)
  • 4位:157.5点 追跡線隊HiICSグリーン(日立産業制御ソリューションズ/東京)
  • 5位:145.0点 伊良部高校(沖縄県立伊良部高等学校/沖縄)

それぞれ簡単に説明していくと、1位の「Circle of "F"」は、NXTWayを筒の上に乗らせて、それで前進(障害物をよけるのに左右にも多少動く)するというもの(画像31~33)。要は、サーカスで見るような玉乗り芸に近いスゴ技をNXTWayにやらせたというハイレベルなパフォーマンスだ。しかも、筒をスラローム走行させて障害物を回避したり、筒の長さよりも短い一本橋の上を渡ったりというプラスアルファがある内容である。NXTWayの尻尾を降ろして、タイヤとその尻尾で筒を挟むような形にすることで多少は倒れにくくしているのだが、それでもバランスを取るのは大変なはずだ。これは、NXTWayにとって極限のパフォーマンスの1つといっていいのではないだろうか。レゴ・マインドストームNXTは発売から年数が経ち、すでに新製品のEV3が発売されて切り替わっており、ETロボコンでも2015~2016年にスイッチすることが決定しているが、ここまでやれればきっとNXTWay自身も満足していることだろう。その結果、200点満点中の175点という記録的な高得点となった。

画像31(左):Circle of "F"がセッティングしたパフォーマンスフィールド全体の様子。画像32(中):筒乗りパフォーマンス。NXTWayでもここまでできるという驚異的な内容だ。画像33(右):競技(会場)審査員の前を通った後は、1度筒を降りて、90度ターンしてから2つ目の筒に乗って一本橋を渡り、ゴールした

続いて2位は、昨年W優勝を果たしたディフェンディングチャンピオンの「男子力∞MAKOTO+α」(画像34~36)。2年連続でCS大会に進出しただけでなく、競技審査で2位に付けて2年連続優勝の可能性をきちんと見せてくるあたりが、大したものである。昨年からのスタイルを踏襲した形で、MC担当の子たちはコスプレをして役になりきって会場を沸かせ、NXTWayの進行と共に演技が行われた。

「怪盗VS警備システム ~狙われた秘宝~」というストーリーなのだが、特に怪盗役のメンバーの声がよくて、そのイケメン声にアニメに出演したら女性ファンができるんじゃないかというほど(笑)。内容は、とあるセキュリティ企業が守るお宝を、怪盗が狙うというもので、怪盗に対して地上からは警備ロボが、空中からはドローン(マルチコプター)が追跡するという流れで、実際にマルチコプターが飛行して会場にインパクトを与えていた。インパクトを与えるのにマルチコプターはコストパフォーマンス的に優れていると思われ、導入を思いついたのはナイスアイディアというところだ。

画像34(左):男子力∞MAKOTO+αのパフォーマンスの様子。怪盗とセキュリティ企業の攻防を描いた内容。画像35(中):セキュリティ企業側の怪盗追跡用の奥の手ということでマルチコプターが登場。画像36(右):マルチコプターもロボットということで、ドローンロボ(?)を演じたメンバー

そしてわずかに2.5点差で3位となったのが、「mirai craft」(画像37~39)。富士ゼロックスはETロボコンに社を上げて取り組んでいる企業の1つで、同社のチームは「mirai」を踏襲するのが慣例となっているそうだ。登場順は最後ということで、A部門の最後というだけでなく、全競技の最後で大トリも大トリだったため、なかなかプレッシャーがあったものと想像される。しかし、スマホでロボットを手軽に制御して買い物を自動的に行ってくれるという(しかもドロボウに対するセキュリティ機能も装備)、近未来というか、今の技術ならすぐにでも実現しそうな、「あったらいいな感」を披露した内容となった。唐草模様の風呂敷をホッカムリにしたドロボウ役を演じるなど、メンバーの学生に負けないコスプレっぷり(?)と演技も見物であった。

画像37(左):mirai craftのパフォーマンスは、ロボット型ショッピングカートが買い物を代行してくれるという内容。クリスマスプレゼントを購入し、これはストーリーの最後にそれを受け取っている場面。画像38(中):A部門はさまざまな機器を使用してよいので、自前のプロジェクターを使って、スマホでカートロボを手軽に操作して買い物を行う様子が披露された。画像35の前の場面なのだが、不正カードでドロボウが買い物を盗もうとするところ。それがしっかりと検知され、あえなくドロボウはご用となった。画像39(右):唐草模様のホッカムリという、最近はあまり見かけないレトロファッションなドロボウ。学生チームに負けず、社会人チームも演技派というかコスプレ派(?)が結構いるのだ

4位は、メンバーの中の1人が戦隊戦士のコスプレをする追跡線隊HiICSの「グリーン」(画像40~42)。スマホで指示したラインの通りにドミノ倒し用のドミノを自動で並べてくれて、倒した後のお片付けもしてくれるという内容が披露された(ただし、2機の並べ機が並べた後、そのほぼ直角になっている両列をつなげる狭い部分はロボットだとさすがに難しいので、人の手で行われた)。きちんと等間隔に並べてあり、直線だけでなく曲線もOK。最後もゴールまでドミノがきちんと倒れ、くす玉が見事に割れたという具合だ。

ちなみに筆者、追跡線隊が毎年取材する度に気になって気になって仕方がないのだが(笑)、なんと今年のA部門ではグリーンの応援として、レッドに加え、CS大会には残念ながら出場できなかったブルー、イエロー、ピンクも駆けつけ、ステージで5色がそろっていた(画像39)。A部門の優勝チームにはインタビューをさせてもらっているのだが、追跡線隊のメンバーはしゃべってはいけない不文律があるらしいし、正体も明かしてはいけないらしい。もし優勝したらインタビューはどうすればいいのだろうか(笑)? 身振り手振りと筆談で行うことになるのか、確かめてみたいので、ぜひ次回は優勝を果たしてもらいたいものである。

画像40(左):追跡線隊HiICSのパフォーマンスの様子。直線・曲線問わずドミノをきれいに配置していった。画像41(中):きちんと倒れてくす玉も割れた後は、ブルドーザーのようにドーザのようなパーツを前面に取り付けた2台のお片付けロボが倒れたすべてのドミノを1カ所に集めた。画像42(右):グリーンの応援のため、同じくCS大会に参加したレッド以下、ブルー、イエロー、ピンクも集結! 5人になると迫力がさらに増すが、来年は追加戦士のシルバーあたりが参加して6チーム体制か?

5位は、CS大会に参加した全部門全クラスのチーム中で最も若い高校生チームの「伊良部高校」(画像43~45)。内容は、30年に及ぶ計画と、約9年に及ぶ着工時間を経て2015年1月31日に遂に開通した、通行料無料の橋としては日本最長の「伊良部大橋」(宮古島~伊良部島間を結ぶ沖縄の青い海の上を走る非常に景観のいい橋)を中心に、地元・伊良部島をアピールするというものだ。本部審査員からの橋の全長に関する質問が飛んだ時も、「それはちと、後で話しますので」と存外に「余計な質問は迷惑です」という雰囲気ありありで切り返し、その回転の速さに会場中を爆笑の渦に誘うなど、やはりA部門はMCのスキルが大きいと感じるのであった(ちなみに全長は3540m)。

こうして会場を温めてしまうと、もう10代というだけで、応援したくなってしまうわけで、多少予定通りにいかなくても、筆者も含めた会場中が「がんばれ!」という雰囲気で固唾を呑んでNXTWayの一挙手一投足を見守ってしまうという具合。ただし、さすがにフレッシュな高校生チームだからといって、まったくうまくいかなかったら点数は伸びないはずで、145点という高得点は、確かに「高校生のフレッシュさ」への心情票も多少は入っているにしても、ただそれだけではなかったこともお伝えしておく。十分楽しませてくれたし、きちんと地元をアピールしていた。会場の観客の20%を伊良部島に観光させようと決断させる狙いがあるそうで、筆者も伊良部大橋を車で走ってみたい! と思ったので、同じように行ってみようと思った人は結構いたのではないだろうか?

画像43(左):チームメンバーには女子も参加しており、これがETロボコンの風景か!? という具合。全国の高校のロボット同好会とか、ロボカップやWROなどに参加している高校生は、A部門も今後は出場ターゲットの大会として検討しても良いかもしれない。画像44(中):伊良部高校のパフォーマンスステージの全景。NXTWayがコースに沿って進んでいくと、置物や仕掛けなどを利用して伊良部島の名産や特徴などを紹介していくという内容。画像45(右):NXTWayが伊良部大橋を渡っているという設定。沖縄に行って走ってみたくなった

というわけで5チームを紹介。競技審査での得点で、1位と5位の得点差はわずかに30点。特に4位までは17.5点差と、本部審査員による企画審査次第で(競技の時点ですでに点数はつけられているのだが)ひっくり返せる点差である。また、6位以下でも、「ロボコン危機一髪(協栄産業 システム第二事業部開発第二部)」(画像46)も137.5点、7位の「Ace艮(東北大学大学院 情報科学研究科/東北)」(画像47)も130点を記録しており、7位までは45点差と大接戦となった。

画像46(左):ロボコン危機一髪。ホラー系アトラクションという設定で、最後は150cmという高さのタワー・オブ・スクリームをNXTWayが登っていくというもの。結構高いので、NXTWayが落下しないか会場中がハラハラした。画像47(右):メンバーが弾いた演奏をロボットキーボーディストが真似して演奏し、さらにそれ以上にゴージャスにするという内容。大学での専門的な知識なども活かされていると思われるが、ちょっとわかりにくかったか?