既存分野でのイノベーション

既存の白物家電分野においても革新的な製品を世に送り出すとして、掲げたのが2つめの戦略「既存分野でのイノベーション」だ。伊藤氏は洗濯機を例に挙げて、「これまで洗濯機と言えばハコ状の機械だった。でも洗濯機を持ち歩けたらいいんじゃないの? という思いから『COTON(コトン)』というハンディ洗濯機を開発した。スマートフォンをちょっと大きくした程度のサイズなので持ち歩けるのはもちろん、家庭内だけでなくオフィスやレストランなどいろんな場所に導入できる可能性がある」と語った。

世界初のハンディ洗濯機「コトン」。3色のカラー展開で3月上旬に発売される

コトンのヘッド部分

スプーン1杯程度の水を噴射しながら、上下に振動するヘッドでたたき洗いする

コトンは、筒状で持ち運びができる大きさ。衣類の汚れた箇所に液体洗剤を少量塗布し、コトンのヘッド部分を布に押し付ける。電源ボタンを入れると上下に振動し、汚れを繊維から押し出す"押し出し洗い"を行うという部分洗い用の洗濯家電だ。

コトンのほか「スーツリフレッシャー」も伊藤氏は紹介した。"エアウォッシュ"と呼ばれる独自の機能により、スイッチを押すと衣服のニオイを除去してくれるというものだ。旧三洋電機の洗濯機における看板技術であり、同社が引き継いだ「オゾン洗い」によって、水を使わず除菌と消臭を行える。さらに"香りプラス"という機能も搭載し、お気に入りの香りを衣類にまとわせることもできる。伊藤氏によると、デザインは検討中の段階で、アパレルメーカーとコラボレーションした製品展開も考えているとのことだ。

オゾンの力で除菌と消臭を行う「スーツリフレッシャ―」。2015年春に発売予定

家電の嗜好品化

3つめの戦略として掲げたのは"家電の嗜好品化"。伊藤氏は「日本の家電業界は価格と性能の追いかけっこをしている。それに巻き込まれるのではなく、嗜好性を高めた製品を提供していきたい」と説明し、冷蔵庫を着せ替えできるカバーをはじめ、衣類をキレイにしていく様子を眺められるスケルトン洗濯機などを紹介した。

冷蔵庫を着せ替えできるカバーの第1弾のラインナップはディズニーキャラクターを採用したもの

製品化を目指しているスケルトン洗濯機。伊藤氏は「作っている側がワクワクできる製品」と語った

これらの製品に加えて、amadanaブランドで発売されるレザー張りの冷蔵庫や、AV機器をイメージしたトースター、ステンレス素材の縦型洗濯機、シンプルに洗練されたデザインの二槽式洗濯機などもあわせてお披露目した。

伊藤氏によると「今回紹介した新商品とコンセプトモデルは、現在進めているプロジェクトのうち、ほんの15%くらいであくまで第1弾にすぎない」とのこと。3月にも第2弾の発表を予定しているとし「今後は黒物と白物家電の垣根がなくなるだろう。そうなった時に必要なのはスピードと、他とは違った視点。我々は中国資本のメーカーだが、資本がどの国であるかは関係ない。アジア10カ国を統括している会社として、画期的でエキサイトなものを提供していきたい」と、閉塞感のある日本の家電業界に旋風を巻き起こしていく強い意志を表明した。

amadanaデザインの冷蔵庫モックアップ。取っ手部分や前面にレザー張りを施すなど、これまでにない素材が採用された画期的なデザインの冷蔵庫だ

二槽式洗濯機。既に前時代的な商品とも言えるが、ハイアール製品では根強いユーザーが残るカテゴリーとのこと。それをわざわざamadanaデザインでセンスアップするところに心意気が感じられる

ステンレス製の縦型洗濯機。業務用のような工業的デザインを家庭用洗濯機にあえて採用したセンスが高く評価される

amadanaデザインのオーブントースター。オーディオ機器のボリュームコントロールを模したつまみが採用されており、黒物家電のようなデザインが特徴だ