拡張

AppleはiOS 8において、サードパーティ製アプリにキーボード/ウィジェット/iCloudドライブへのアクセスを許可した。6月に行われたWWWCでティム・クックが「これまでで最もジャイアントなリリース」という言葉で表した、開発者に向けた自由度の拡張だ。

実際にiOS 8がリリースされると、満を持してというべきか、期待されていた日本語キーボードが登場し、ウィジェットアプリやiCloudドライブ対応へのアップデートも増えていった。だが、個人的には今のところこれらの新しいアプリを十分に活用できていないと感じている。

Androidと比べて、キーボードは純正のみ、通知センターは使えるがウィジェット的な役割は一部のApple公式アプリのみ、ファイルの扱いが不自由……というのがiOSの枷になっていた部分であることは確かで、筆者も両方使ってみてそれを実感していた。だが、無ければ無いなりにやりくりするのが人間というもの。ユーザー辞書をコツコツ育てたり、通知センターを使ったランチャーや外部のクラウドストレージ対応のアプリを組み合わせるなどで、それなりに必要な作業をこなせるような環境になっていた。

ここへ来てそれらの迂回を経ずとも出来ることが増えたわけだが、後付けされた新機能というのはなかなか身に付かないものだ。ウィジェットを登録したアプリも存在を忘れてホーム画面から起動したり、長年使い込んだキーボードの使い勝手と微妙に違うところで小さなストレスになったりして、せっかく導入してもあまり使わずに元に戻ってしまう。クラウドに至ってはこれまでの資産を移動する手間を惜しんで未だに試すこともしていない。今年のジャイアントな拡張による効果は、今の段階では判断しかねる状態だ。

もし、使い方が固定されるiOS 5や6あたりの段階でこれらを開放してくれていたなら、もっと慣れることができたのだろうか。あるいは、ここまで来たらむしろ解放せずに不可侵を貫いた方が良かったのだろうか。