PC接続での再生か、本体のみでの再生か

HA-P90SDには、PCと接続して使うUSB-DACとしての側面もある。アシンクロナスモードに対応しているため、PC側のクロックに依存せず内蔵の高精度なマスタークロックを使い再生できる。マスタークロックとして使用されるオーディオ用の高精度水晶発振器は、44.1kHz系と48kHz系の2基が搭載されており、再生する音源のサンプリング周波数系統に合わせることで、正確なDA変換およびジッター低減効果を期待できる。

WindowsやMacに保存してある音源は、無償のハイレゾ対応プレーヤー「ティアック HR Audio Player」で再生できる(画面はMac版)

その音だが、DSD再生に関していえば本体のみで再生したときに軍配が挙がる。PC(Mac)側のプレーヤーソフトには「ティアック HR Audio Player」を使用したが、本体のみで再生したほうが音の輪郭や音場感が際立っていた。原因として考えられるのは、USBケーブルを経由しPCのノイズの影響を受けたか、PCとHA-P90SDどちらで再生(DSFデコード)を行ったかだが、伝送経路が最短となる本体のみの再生のほうに分がある。

最大128GBのmicroSDXCカードが利用可能。容量がかさみがちなハイレゾ音源にも余裕で対応できる

また、ここまで触れてこなかったが、HA-P90SDはスマートフォン対応に力を入れている。iOSデバイスとのLightning接続(Aポート使用)、またはAndroidデバイスとのOTGケーブル接続(micro Bポート使用)のどちらでも、DSD 2.8/5.6MHzのネイティブ再生およびPCM 192kHz/24bitの再生が可能なのだ。

今回の試用機はファームウェア(v0.82)が完成版ではなかったため、スマートフォンを接続した再生は不安定だったが、スマートフォンのハイレゾ音源をケーブル直結で再生できることは、ユーザにとって大きな魅力となることだろう。

テストした時点のファームウェアは若干安定性に欠けたが、それを除けばHA-P90SDというポータブルデバイスには十分以上の魅力がある。microSDカードにPC、スマートフォンと音源の保存場所を選ばないこと、そしてReference 501シリーズで培ったノウハウを惜しげもなく投入した音質面でのこだわり。コストパフォーマンスにも優れ、2015年話題のモデルとなることは確実だろう。

HA-P90SDの仕様

最大出力 170mW+170mW(32Ω負荷時)
周波数特性 10Hz~80kHz(SDカード再生時)
DAC BurrBrown PCM1795
オペアンプ BurrBrown OPA1602 SoundPLUS
ディスプレイ 2.7型 単色OLED
対応インピーダンス 8~600Ω
対応フォーマット DSD(2.8/5.6MHz)、PCM(44.1/48/88.2/96/176.4/192kHz、16/24bit)
対応ファイル形式 WAV、MP3、AAC、WMA、FLAC、DSF、DFF(DSDIFF)
対応メディア microSD/SDHC/SDXC(最大128GB)
入力 USB 2.0(microB端子×1、A端子×1)、3.5ミリ端子(光デジタル/同軸デジタル/アナログ兼用)
出力 3.5mmステレオミニジャック(アンバランス)、3.5ミリ端子(デジタル/アナログ入力と切り替え)
バッテリー リチウムイオン(3,460mAh)
サイズ/重量 W69.6×D123×H21.5mm/280g
カラー ブラック、レッド
価格 オープン(推定市場価格:70,000円前後)