ソニーは11月18日、Sony IR Day 2014を開催し、同社のエンタテインメント事業について説明。2017年度の経営数値目標を発表した。映画分野では売上高が100~110億ドル、営業利益率で7~8%、減価償却費や構造価格費用控除などを除く調整前の営業利益率で9~10%を目指すほか、音楽分野では売上高が48~52億ドル、営業利益率は10.5~11.5%、調整前営業利益率で13.5~14.5%を目標とする。

2014年度実績は、映画分野の売上高が81億ドル、営業利益率は6.6%、音楽分野の売上高が48億ドル、営業利益率は9.8%であったことに比べると映画分野では大幅な増収を見込むものの、音楽分野では若干の増収に留まる。

ソニーのエンタテインメント事業は、映画分野と音楽分野で構成されている

音楽分野の鍵を握るストリーミング配信

ソニー・エンタテインメント CEOのマイケル・リントン氏は、「音楽分野は今後、ストリーミング配信が急速に広がっていくことになるだろう。パッケージでの販売に比べてコスト負担がなく、収益性が高いビジネスになるのは明らかだ。だが、無料配信から有料配信への転換が鍵になる。ストリーミング配信が持つ価値は大きく、音楽業界における新たなチャンス」とコメントした。

ダウンロード販売からストリーミング配信の時代に移行する

ソニー・エンタテインメント CEO マイケル・リントン氏

ソニーとしても、今後は月額費用(サブスクリプション)によるストリーミング配信に力を注ぐ姿勢を示しており、「現在は市場全体の約65%がダウンロード販売であるが、これが2017年度には約60%がストリーミング配信になる。ソニーでは業界を上回る約78%をストリーミング配信で占めるとみている。日本ではまだパッケージが主流となっているが、2016年にはマスマーケットにストリーミング配信が普及していくと予測している」などと述べた。

さらに「ソニーは新たなアーティストの発掘に成功している。これはソニーにとっても重要な役割である」と語った。音楽分野においては、間接費の67%削減、人件費の60%削減、30拠点の統合、ITシステムの統合などの構造改革の効果があがっていることも示した。

音楽分野の経営目標数値と推移

2017年度は映画の当たり年に

また、映画分野においては、「いくつかの映画が不振だったこと、インド市場が低迷したことが減収の要因」とする一方で、「2014年度はテレビ番組製作でセカンドシーズンをはじめとする続編が決まった人気作品が多く、番組配信で24億ドルの収益をあげている。そして、2017年度は映画のヒット作の当たり年になると予測される」と見通しを述べた。また、プレイステーション向けに配信するコンテンツについても、「プレイステーションは配信先のプラットフォームとしても理想的なもの。One SONYを実現するための先行事例になる」などとした。

なお、ソニーでは、映画分野における人件費および調達コストの削減目標を、2013年11月に発表した約2億5000万ドルから、5000万ドル増額し、総額3億ドルとした。年間ベースでのコスト削減に向けた施策は2015年度までに完了する予定だという。

映画分野の経営目標数値と推移

エンタテインメント事業はソニーの大きな柱

ソニーの代表執行役社長兼CEOの平井一夫氏は、「ソニーはエレクトロニクス事業が本業でエンタテインメント事業は副業と捉えている人も多いが、エンタテインメント事業はソニーにとって重要な事業である。18年連続で黒字を達成しており、安定的に収益をあげているソニーグループの大きな柱の事業。1968年にこの分野に参入以来、約半世紀に渡る事業経験があるという歴史も持つ。2000年以降、全米ナンバーワンとなった映画作品は90本以上にのぼり、メディアネットワーク事業は178カ国で、12億人のサブスクライバーがいる。音楽では2年連続で世界最多のトップ10アルバムを獲得している。映画も、音楽も、ソニーはリーデイングポジションにある企業だ」と力強く語った。

ソニー 代表執行役社長兼CEO 平井一夫氏

なお、ソニーのエンタテインメント事業を担う事業体は、映画製作やテレビ番組製作、メディアネットワークを担当している「ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)」、日本以外での音楽製作事業を行う「ソニー・ミュージックエンタテインメント(SMEI)」、日本での音楽製作と映像メディアプラットフォーム事業を営む「ソニー・ミュージックエンタテインメントジャパン(SMEJ)」、音楽出版事業を担当しているソニーATVとEMIミュージックパブリッシングとを合わせた「ミュージックパブリッシング」の4つから構成されている。