そんなPowerShot SX60 HSの最大の特長といえば、やはり光学65倍ズーム。ひとくちに65倍といっても、もはや想像を超えていてピンと来ない人も多いかもしれない。そこで、こんな画像を用意してみた。遊園地の夜景だ(下の写真を参照)。

35mm判で21mm相当の広角端からズームしていき、65倍の1,365mm相当に達すると、観覧車の中央にある時刻表示の文字が画面に入り切らなくなる。LED文字のドット欠けもはっきりとわかるだろう。さらに超解像処理を併用したプログレッシブファインズームで130倍(2,730mm相当)まで迫ると、もはや文字は約半分しか画面に入らず、なんと、ひとつのドットを構成するLEDの集合までが見えるのだ!(原寸大写真を参照のこと)

【左上】1/13秒、f3.4、ISO1600、21mm相当 三脚使用 【右上】1/160秒、f6.5、ISO800、1,365mm相当 三脚使用 【左下】1/60秒、f6.5、ISO800、2,730mm相当 三脚使用

ちなみに、広角端の写真の撮影感度はISO 1600。数年前のコンデジをお使いの方なら1/2.3型センサーでISO 1600、しかも夜景撮影なんて無謀なことを……と思われるに違いない。だが、ここまでキレイに写る。さすがにグラデーション部分には多少のノイズが乗るものの、この厳しい撮影条件でこの画質が得られるのは驚きだ。

もう1点、65倍ズームの底力を感じさせる画像を掲載しておこう。手持ちで撮影した月面の写真だ。左が光学60倍ズームの望遠端、右は約2倍のデジタルテレコン機能を使用しているが、ある程度シャッター速度が稼げていることと手ぶれ補正機構の優秀さにより、焦点距離が2,000mm相当(プログレッシブファインズームを使用)を超えていてもまったくぶれず、クレーターがしっかりと写っている。

【左】1/160秒、f6.5、ISO250、1,365mm相当 【右】1/500秒、f6.5、ISO400、2,730mm相当

しかも、撮影は「P」(プログラム)モードで、露出を-1.0補正したのみという手軽さ。もし、一眼でこれに匹敵する写真を撮ろうとするなら、三脚はもちろん、巨大かつ高価なレンズが必須装備となることは想像に難くない。それでもここまで大きく写すのは不可能だろう。たとえ画質の差を差し引いても、PowerShot SX60 HSの圧倒的なコストパフォーマンスには目を見張るものがある。

望遠撮影時に被写体を見失った……そんなときはコレ!

ただ、高倍率ズーム機には不自由な部分もいくつかある。そのうちのひとつが「望遠撮影時に被写体を見失ってしまう」こと。これは鳥や飛行機、スポーツといった動体の被写体を撮影する際、特にやっかいな問題だ。これを解決するために、PowerShot SX60 HSは「フレーミングアシスト 探索ボタン」を装備している。レンズ側面の2つのボタンのうち、上のボタンがそれだ。

【左】レンズ側面のボタンは「フレーミングアシスト 探索」ボタン(上)と「フレーミングアシスト 固定ボタン」(下) 【右】「フレーミングアシスト 固定ボタン」(下のボタン)を押しながらシャッターを半押しすると、構図決めのための手ぶれ補正が働く

望遠側で撮影中、被写体を見失ってしまったら探索ボタンを押してみよう。すると、一瞬でズームが広角側に戻る。探索ボタンを押している間はずっと広角側になっているので、被写体の行方を探しやすくなるのだ。このとき、先ほどの望遠撮影時に見えていた部分以外が半調表示されるので、自分がどこを見ていたのか、そして被写体がどちらに動いたのかもわかりやすい。

望遠撮影時の視野以外を半調表示。自分がどこを見ていたのか、被写体がどちらに動いたのかがわかりやすい

実は、この機能は旧機種のPowerShot SX50 HSにも存在した。だが、PowerShot SX60 HSではこの機能がさらに進化している。まず、探索時のズーム動作の自動設定が可能。探索ボタンを押した後にカメラを大きく振ると、カメラが「ははぁん、さては被写体を見失いましたね? 見つかるまでズームを少々引いて差し上げましょう」と判断するのだ。そしてカメラが静止すると「おや、見つかったようですね。ではズームを望遠に戻しましょう」と判断する。

さらに、探索ボタンを押した後に人物を認識した場合は[顔/上半身/全身/マニュアル/切]から構図を維持するよう設定することもできる。つまり、「了解です。この人物の上半身が常に画面に入るよう、ズーム操作を調整していけばいいのですね」とカメラが考え、動作してくれるのである。これらは精緻な電気的ズームコントロールが可能なレンズ固定式カメラだからこそ、実現可能な機能なのだ。

なお、念のため記しておくが、このカメラが本当にしゃべるわけではないので、悪しからず。