生産設備関連

次いで生産設備関係について。まず先端プロセスを国内で製造する可能性について作田会長は

「私の考えは、開発は日本というか、ルネサスの中でやる。ただその製造がルネサスである必要はないと考えている。ただ外部に出すにしても、最低でも2カ所の委託先でやりたいと思っている。なので、委託先として、技術だけでなく周辺環境も台湾に集中しているなら、台湾でかまわないが、そこで2社にしたいと考えている」とした。

この2社はBCPの観点か? との問いには「BCPもあるし、1社依存が行き過ぎると色々まずいだろう、という判断」とした。

そこでTSMCへの委託状況について、鶴丸社長は「90nm以降はTSMCに委託しており、55nmもTSMC、40nmに関してもすでに委託を始めている」と説明したほか、車載向けなどで需要が逼迫しているが、外部委託を増やす形にするのか、それともIn HouseのFabの生産能力を引き上げるのかとの問いにも鶴丸社長が「話が2つあり、例えば40nmプロセスを使う製品はこれから増えてゆく事になる。一方で、足元を見るとマイコンの需要が逼迫しているが、これは我々のIn HouseのFabでの生産のキャパシティを増やしている形。もちろん昔のように、100億円単位での設備投資とかはやっていないが。これらの製品は、外部のFoundryが台頭して来る前の世代。我々は90nmから外部に委託しており、一方現在ニーズが高いのは130nmとかの製品」と説明した。

さらに長期的に、材料あるいはサプライヤに関しても、見直しをするのかとの問いには、まず作田会長が「そのあたりはもっと社内で議論しないといけない部分。半導体は規模の経済だけで話をされるし、それは事実であるが、問題はルネサスがそこで勝負するのか? という話。例えば我々はSmartphone系からどんどん撤退しているが、現在世界で一番のVolume Gameはそこ。その一方でIndustrialというのはずっと小さな世界で、それをやりながらそこで規模の経済性とか言っても矛盾する。なので、もっと違うところでルネサスの強みを発揮しないといけない。もちろんこれには色々な議論があるのだが、私自身は、本当の意味での規模の経済性での勝負はルネサスには向いていないんじゃないかな、と思っている」とした。

ついで鶴丸社長が「我々はIn houseのFabを持っているが、いままではそのFabの稼働率の向上を目指していました。しかし実際には余剰能力があって、それの削減を進めている状態。だからといって0にする訳ではなく、Fabのあり方の議論を現在している。つまり、自動車とかFAといったアプリケーションを考えた時、どういうIn HouseのFabの使い方があるのか、という議論をもう一回しないといけないと考えている。というのは少なくとも開発にFabを持っていないと、数の論理が無い限り、ファウンドリに対する最適マッチングができないから」という答えをされた。

今後の展望

最後に再びビジネス寄りの話を。まず作田会長が就任して以降の見通しと自己採点を求められて「どういう課題認識で来たかと申しあげると、元々はルネサスから商品を買う立場にいた。で、必要不可欠な半導体を製造して頂いていたので、オムロンとしては存続してもらわないと困るという考えが強くあった。つまり、存続しないとダメというのがスタートになる。

改めて見た場合、経営資源は2003年以前は個々の会社がそれぞれ別会社として運営をしてきて、それぞれ設備投資をされて来ていた。それぞれの個社がピークの時に投資をした金額は、売り上げとして1兆8000億円くらいをイメージした投資だったと思う。ところが実際に3社のピークの合計は1兆3000億~1兆4000億円しかない。それだけでもすでに投資はオーバーなのだが、残念ながらルネサスのドメインは右肩上がりで成長した訳ではないわけで、大変な事だなぁというのが正直な実感。なので、この会社を生き残らせるためには、申し訳ないけど、選択と集中で絞り込まないと会社全体がおかしくなるというのが率直な判断。

この選択と集中で一番苦しいのは人。例えば1000億の設備を特損で落としちゃう訳だから、もし機械に口があったら文句を言うかもしれないが、幸か不幸か口がないので何も言わない。だが人の場合、お金を払えばよいだろうという問題ではない。なので、人の削減が一番苦しい。

ただ、この結果として最適人員に近づきつつある。いつ到達できるのか、というとこれは商売なので、環境、つまりお客様も競合も変化しているので、いつというのは申し上げにくい。ただ、当初の目標値には段々近づいてきている、という認識。

自分自身の評価は、なにしろまだ1年3カ月なので、採点するには早すぎるかもしれない。あえて言うなら60点、ぎりぎりの合格点ですかね」と答えた。

さらに、産業革新機構が5年位で投資を引き上げるという見通しを述べている事に関しては「まず、黒字化という事と、単独という事は、全然違う話だと思っている。黒字化だけで言えば、17年3月期には2桁営業利益と申し上げている。で、足元から言えば、可能性は結構あると思っている。ただそれが10年先、20年先も大丈夫か? と言われると判らない。その時に、どこで誰をお客様にして、どういった戦い方をしているか、という意味では単独には余り意味が無いと考えている。大体その時まで私は生きていない(笑)。目先のことで勘弁していただきたい、と」と締めくくった。