10月7日より千葉県の幕張メッセで最先端IT・エレクトロニクス総合展「CEATEC JAPAN 2014」が開催されている。次世代コンテンツ保護技術「SeeQVault(シーキューボルト)」が2013年に引き続き、今回も出展している。

SeeQVaultはパナソニック、サムスン、ソニー、東芝の4社によって開発されたコンテンツ保護技術で、多様な対応機器での再生互換性と強固なセキュリティが両立されている。これにより2013年8月、ホームネットワーク向けの著作権保護技術「DTCP」の管理運用を行うDTLA、デジタル放送の送受信技術に関する規格化推進を行うDpa(デジタル放送推進協会)の2団体から記録メディアとして認可された。

対応機器の状況などについて、ソニー RDSプラットフォーム 研究開発企画部門 VEプロジェクト室 メディア規格課シニア・アライアンス・マネジャーの鈴木健二氏と、東芝 セミコンダクター&ストレージ社 メモリ事業部 メモリ応用技術部 主幹の三村英紀氏に話を聞いた。

著作権保護の仕組みを機器バインドからメディアバインドへ

ソニー RDSプラットフォーム 研究開発企画部門 VEプロジェクト室 メディア規格課シニア・アライアンス・マネジャーの鈴木健二氏(右)と、東芝 セミコンダクター&ストレージ社 メモリ事業部 メモリ応用技術部 主幹の三村英紀氏(左)

SeeQVaultが登場する以前、著作権保護が付された地上デジタル放送などの番組を録画機能付きテレビで外付けHDDに録画した場合、録画を行ったテレビを買い換えたりするとその録画番組は基本的に見られなかった。これは、録画データがテレビなどの録画機器と一対一で関連付け(いわゆる"ヒモ付け")されて著作権保護の認証が行われているためだ。これを後述するNSM Initiativeでは、「機器バインド」と呼んでいる。

一方、SeeQVaultで録画データとのヒモ付けが行われるのは録画機器ではなく、録画先となる記録メディア(この場合は外付けHDD)となっている。このため、録画機能付きテレビが壊れて買い換えた場合でも、外付けHDDに録画された番組を新しいテレビで見ることが可能だ。これは、機器バインドに対して「メディアバインド」と呼ぶ。

機器バインドのイメージ

メディアバインドのイメージ

SeeQVaultのライセンス運用や提供を行う会社として設立されたNSM Initiativesは、昨年10月に開催されたCEATEC JAPAN 2013でも出展を行っていた。DTLAとDpaによる認可が降りた直後となる時期だが、鈴木氏と三村氏によれば昨年のCEATECの時点でSeeQVaultへの対応および対応検討を行っていたのは、技術の開発に関わった4社(パナソニック、サムスン、ソニー、東芝)プラス数社だったという。それから1年経ったCEATEC JAPN 2014では、対応および対応検討を行っている16社による共同出展が行われている。爆発的とはいかないが、少しずつ波及している印象だ。

出展している16社はAVCマルチメディアソフト、バッファロー、CyberLink、デジオン、富士通、船井電機、Genesys Logic、アイ・オー・データ機器、メディアロジック、パナソニック、ピクセラ、サムスン電子、Silicon Motion、ソニー、東芝、東芝情報システムとなっている(順不同)。

鈴木氏によれば「バッファロー、アイ・オー・データ機器、ピクセラ、デジオンの4社による参加は大きい」という。バッファロー、アイ・オー・データ機器はHDDベンダーとして大手であり、一方のピクセラ、デジオンは視聴・録画ソフトを広く提供しているからだ。特に、ピクセラはAndroid向けに視聴・録画ソフトを提供しており、三村氏はこれによりスマートフォンやタブレット端末での対応がいっそう進むと期待を寄せる。

【左】アイ・オー・データ機器が発表したSeeQVault対応HDD 【右】ピクセラが参考出展していたAndroid向け視聴ソフト

今後は録画だけでなくBtoB用途への波及にも期待

将来的な展望としては、テレビ番組の録画向けだけでなく、BtoB分野へも波及していきたいと鈴木氏は語る。そもそもSeeQVaultが提供するのは放送録画の技術ではなく、前述したように多様な機器での互換性と強固なセキュリティだ。これらを転用することで、ゲーム産業でのコンテンツ流通であったり教育用途での個人情報管理であったりと、多様な用途が可能となる。鈴木氏は「放送録画だけでなく、多様な潜在需要がある」と、将来の成長に期待を寄せた。

広がる対応。今後は多様な用途が見込まれる