シャッター速度や絞り、ISOは、露出補正ボタンを押してから選んで変更するという不思議仕様

ちなみにXG-1には、X-5になかった「AV」(絞り優先)モード、前述のTVモード、「M」(マニュアル撮影)モードがある。だが、X-5にあったコントロールダイヤルは存在しない。では、一体どのように絞りやシャッター速度を設定するのだろうか?

答えは「露出補正ボタンを押す」のだ。すると、絞りやシャッター速度が選べるようになるので、十字キーを使って設定するのである。あくまで慣れの問題といえばそれまでだが、直観的とはいえないUIなのも事実。操作の手数においても、一眼レフライクにダイレクトな設定操作が可能なコントロールダイヤルに対して、露出ボタンを押して、さらにシャッター速度や絞りを選択するという複数ステップが必要になってしまう。

【左】撮影時、EVFおよび液晶モニターに表示される情報 【中】究極的にストイックなメニューデザイン 【右】再生時の情報表示。こちらもストイック!

先にも背面のUI配置がPENTAXらしさに欠ける、と書いたが、それはソフトウェア面でも顕著で、メニュー画面のデザインや画像効果の種類も、従来のPENTAX製品とはまったく違うものとなっている。撮影あるいは再生時にエフェクトを設定できる「アート効果」にも「日本スタイル」「イタリアスタイル」「 フランススタイル」「パンク」「反射」「4グリッド - スタイリッシュ」など、他の同社製品にはないユニークなものが搭載されている。ただし、これはこれで面白く、PENTAXらしくないからダメ、というものでは決してない。

【左】アート効果の「ネガ」。アート効果は撮影時、撮影後ともに利用できる(原寸大画像を見る) 【中】わかりにくいが、実はアート効果の「モノクロ-青」(青だけを抽出)を使用(原寸大画像を見る) 【右】アート効果の「パンク」(原寸大画像を見る)

【左】アート効果の「日本スタイル」(原寸大画像を見る) 【中】アート効果の「イタリアスタイル」(原寸大画像を見る) 【右】アート効果の「反射」。撮影した画像を加工するより、効果をセットして撮影した方が構図を決めやすい(原寸大画像を見る)

【左】アート効果の「4グリッド - スタイリッシュ」(大きな画像を見る) 【中】再生時のアート効果適用プレビュー画面 【右】目を大きくしたり、白目を明るくする効果も搭載している

また、最大60コマ/秒(画像はVGAサイズ)の連写やインターバル撮影(30秒、1分、5分、10分)も行えるので、これらの性能を求める人の選択肢ともなるだろう。RAW撮影には非対応、昨今のデジタルカメラでは標準装備となりつつあるWi-Fi機能も搭載していないが、Eye-Fiカードに対応する。

【左】インターバル撮影の設定画面 【中】ホワイトバランスは色温度(ケルビン)での設定も可能 【右】SD/SDHCカード、Eye-Fiカードに対応。実は約15.4MBの内蔵メモリーも搭載

最後に、動画について触れておこう。動画は、フルHD(1,920×1,080ドット)、HD(1,280×720ドット)、VGA(640×480ドット)に対応。ただし、60fpsで撮影できるのはHDサイズのみ。下の作例中では使っていないが、撮影中のズーム操作が可能なので、光学52倍ズームを駆使して被写体にグッと寄っていく、といった演出も不可能ではない。

【動画】PENTAX XG-1 フルHD動画サンプル

フルHD(1,920×1,080ドット)だと30fpsでしか撮影できないのは、直近の製品としてさすがに物足りないスペックだ。120fpsのハイスピード動画撮影も可能だが、こちらはサイズがVGA(640×480)サイズとなってしまうので、一般ユーザーにとってあまり使い途はないかもしれない。

以上、いくつか辛辣なことも書いたが、これもPENTAXというブランドを愛すればこその改善希望点と受け取っていただければ幸いだ。正直なところ、XG-1は、目の肥えた日本のユーザーより海外に目を向けた海外戦略商品なのかもしれない。しかし、繰り返し書いているように、光学52倍もの超高倍率ズームと(高感度撮影以外での)しっかりした写り、そして何より、手に持ったときの質感の高さは高く評価できるポイントだ。

原稿執筆時の実勢価格は、3万円台後半から4万円代前半(※)といったところ。実際に店頭で触ってみて「何だ、マイナビニュースのレビュー内容よりずっといいじゃん!」と思えれば、購入を検討する価値は十分にあると思う。

【左上】シーンモード「花火」の選択画面。サムネールは右の画さえあればいいような…… 【右上】遠方の花火大会を花火モードで撮影してみた。広角側ではこの程度しか写らないが…… 【左下】222mm相当では、こんなに良く写る。ちなみに、望遠端を使うと花火かどうかわからなくなってしまい、ピントも合わない。とにかく端までズームすればいい、というものではないのだ(原寸大画像を見る)

※ 価格は2014年9月中旬のもの。筆者調べ