初めて入手したiOSデバイスは、初代iPod touchだった。その後iPhone 3G以降は、iPhone 5cを除きすべて購入している

筆者にとって最初のiOSデバイスは、2007年10月に国内発売された「iPod touch」。2007年に米国で発売された初代iPhoneは、海外在住の知人のものを触らせてもらったことはあるが、日本のキャリアで取り扱いがなかったため購入する気にはならなかった。もちろんiPhoneとiPod touchは異なるデバイスだが、OS Xをベースに設計されたiOSにいち早く触れる必要があり、当時としては他に選択肢がなかったのだ。

当時を知らない読者も多いことだろうから、簡単に説明しておこう。まず、初代iPhoneの発売当初Appleはサードパーティーによるネイティブアプリ開発を許可せず、WEBアプリの枠内でのみ認める方針を採用していた。筆者がiPod touchを手にした時点では、この先WEBアプリ開発が流行るのだろうか(しかしパフォーマンスに懸念あり)、アプリの販売/配布はどうなるのだろうか(しかしドライバのようなハードウェアに近い層で動くものは無理)、といった疑問が渦巻いていた。言い換えれば、アプリという視点からはiOSデバイスの将来がバラ色に見えなかったのだ。

しかしその数週間後にAppleは方針を変更、iPhone/iPod touch用開発キットの提供開始を発表した。サードパーティーにObjective-Cを利用したネイティブアプリ開発を認めるというのだ。ドライバのような低位レイヤーで動作するアプリは許可せず、必ずサンドボックスで保護された領域で動作するためセキュリティは守られる。現在に至るApp Storeのポリシーは、その頃から基本的に変わっていない。

2008年2月に提供開始されたSDKは、Objective-C/C/C++以外の開発言語を認めないなど制限はあったものの、Webアプリに比べパフォーマンスは大幅に改善され、結果として「できること」は格段に増えた。2008年7月に発売されたiPhone 3Gと、それにあわせスタートした「App Store」の成功は、見てのとおりだ。

なぜそのようにアプリの開発方針が気になっていたかというと、もちろん「スマートフォンのこれから」(そしてそれを執筆の材料とする自分のこれから)を大きく左右する要素と考えていたからだ。筆者にかぎらず、デスクトップ(PC)からモバイルへというトレンドの変化を感じていた人は多いはずで、アプリの質的向上はその変化を促進する。そしてアプリの質を決めるのは、最新機能の投入や開発環境の充実など支援体制も大きいが、煎じ詰めれば「速さ」だ。速さを優先したAppleの判断が、現在のiOSというプラットフォームの隆盛のきっかけとなったことは間違いない。