グラスソ・スミスクラインは9月3日、8月29日に抗てんかん薬「ラミクタール錠 25mg/100mg(ラモトリギン)」が成人てんかんにおける単剤療法の承認を受けたことを受け、その意義に関する説明などを行った。

同治療薬は世界100カ国以上で承認され850万人以上に服用されている薬で、国内でも併用療法の承認を2008年に得てはいたものの、これまでは併用療法のみに限られていた。

日本てんかん学会理事長の大澤真木子氏は、「近年、新規抗てんかん薬が、神経系の興奮と抑制に絡んだメカニズムから理論的に提案されるようになってきたが、日本では欧米に比べ、そうした新薬の承認が遅れており、いわゆる"ドラッグラグ"という問題が生じていた」とし、てんかん診療に携わる医師たちの悩みとなっていたとする。

国際的なガイドラインでは、てんかんの治療は薬物療法が基本となっており、患者の発作系や年齢から、何かの薬剤1つを決定し、単剤療法を行うことが推奨されており、もし効果がない/薄いといったことが確認されれば、別の薬剤を試すとい流れになっている。これまでの研究から、1種類の薬剤の服用で発作をコントロールできる割合は約6割とされており、併用療法でなくても、相当数のてんかん患者の発作を抑えることが可能だという。

「てんかんは一度症状を発症すると、長期間、薬剤を服用していく必要がある。そうなれば、できれば薬剤の数も服用回数も少ない方が、患者の煩わしさの面でも、副作用の面でも最低限で済ませることができる」(大澤氏)とするほか、「発作そのものだけでなく、それに伴う日常における気持ちの落ち込みや、子供の場合、学校で飲むのではなく、夕方飲む必要がある場合は、家に帰ってから飲めるようにするなど、環境に対する負担を減らすことも重要」とし、「今回、ラミクタールの単剤療法が認められたことは画期的な意義を持つ」と説明した。

一方、今回のラミクタールの単剤療法の治験にも関わった聖隷浜松病院てんかんセンターの山本貴道 診察部長も、「てんかんは脳の異常によって引き起こされるものであり、脳がある動物であれば生じる。国内では100人に1人がてんかん患者と言われており、厚生労働省の統計ではなく、実際の患者総数としては100万人以上とも言われている」とするほか、「子供の病気と思われがちだが、成長しても発症する人は一定数いる。また、近年は高齢者のてんかん患者の数も増加傾向となっている」とし、年齢に関係なく発症する可能性があるとし、それだけ多くの患者がいれば、薬を飲むのを忘れたり、副作用で悩んだりする機会も増える。だからこそ、副作用が少なく、飲む回数が少ない薬剤を選択する必要があり、それによって、結果的に医療費も抑えられることにつながると説明。

また、ラミクタールは、早期(服用後1カ月程度までの期間)の副作用はあるが、服用期間中、継続して続く晩期副作用はないことから、あまり副作用についての心配をしなくて済む薬剤だとし、「できる限り副作用を避けるためには、新規の抗てんかん薬を服用させるべき」とした。

さらに、妊産婦が抗てんかん薬を服用している場合の胎児への影響についても言及。「先天奇形発現率をみると、非てんかんの女性で3.27%で、ラミクタールの単剤で2.91%と、統計的な差がない程度だが、旧来薬の場合、単剤服用でも、ものによっては10.73%、併用療法の場合、ラミクタール+別の何かで5.59%だが、旧来薬同士であると、11.47%のものもあるなど、リスクが上がる。そういった意味でも、単剤で安全な薬を服用してもらう必要がある」としたほか、妊娠中の母親が抗てんかん薬を服用していた場合の3歳になった子供のIQを調査したところ、かなりの量を服用していた母親の子供のほうが認知機能の向上が見られないという注意する必要があるデータも報告されていることも指摘した。

気になる薬の効き目だが、「唯一気になる副作用である薬疹を抑えるための措置」として、通常は1~2週間をかけて薬の量を増やしていくとするが、実際にデータを採取したところ、飲み始めて発作が治まる時期としては1~5週程度が最も多く、薬量を上げていく途中で効きだすことが一番多いという。

なお、山本氏は、すでに新規薬剤へのパラダイムシフトが日本でも生じてきているとする。同病院のデータだが、最近の傾向として、旧来薬だけの人の割合は減少傾向で、ラミクタールなどの新規抗てんかん薬との併用の割合が増えてきており、処方箋ベースでも今年中に逆転する見通しだとするほか、同病院のようなてんかん治療で先行している病院ではすでに反転しているとする。

また、てんかんというと、全身発作のイメージが強いが、大脳の神経細胞の過剰な興奮により「人に話しかけられてもぼんやりしている」、「体の一部分が痙攣してものを落とす」、「唇をびちゃびちゃ音と立てて舐める」など、さまざまな症状が反復して生じるものを指すことから、知らぬ間にてんかんを発症していたという場合もある。大木氏に簡単な判断方法を聞いたところ、「成人など、ある程度、自己の意識をはっきりと持っている年齢の人であれば、その時の記憶があるかどうか。また、年齢が小さな子供の場合、本を読むなど集中している場合でなく、ボーっとしている場合、声をかけてみて、"お母さんの声が聞こえた?"などと聞いてみるのが、第一歩」とのことであった。