アビーは1日、日本製の熱溶解積層方式の3Dプリンタ「SCOOVO X9H」、および同社初となる光造形式3Dプリンタ「SCOOVO MA30」「SCOOVO MA10」(MAシリーズ)の3機種を発表した。

個人だけでなく、プロや業務ユースを意識した新製品となる。同日より販売開始し、同社直販サイト「アビーストア」で先行予約を開始する。発送予定は9月中旬。

「SCOOVO X9H」の希望小売価格は税別299,800円。「SCOOVO MA30」は税別2,980,000円、「SCOOVO MA10」は税別1,680,000円で提供する。

SCOOVO X9H

SCOOVO MA30とSCOOVO MA10

同日、記者向けの説明会が行われた。同社代表取締役の坂口信貴社長は、「いずれも主に個人だけでなく中小企業や小規模事業者の購入を見込んだ製品」とし、従来機とともに建築や医療、教育現場などでの活用を想定する。

また、特にMAシリーズでは、コスト面のメリットだけでなく、提供する保守サービスにも言及。「アフターサービスの有無など、業界的に全体の料金が不透明な部分があるが、このMAシリーズでは基本的にランニングコストは消耗品のみ。保守サービスが必要な場合もパッケージとして提供したい」と語った。

同社は、既存モデルを含めた「SCOOVO」全機種で、3,900台/年の販売を目指す。

同社代表取締役の坂口信貴社長

SCOOVO X9H

既存モデル「SCOOVO X9」の上位に位置づけられる、熱溶解積層方式の3Dプリンタ新製品(「SCOOVO X9」は併売)。既存モデルと比べ最大造形領域が1.9倍となるW200×D200×H340mmに拡張。特にZ方向の造形エリアが340mmまで広がったことで、建築デザインやキャラクターデザインなどで需要があった高い造形が可能となった。一方、必要設置面積は「SCOOVO X9」から1割増に抑えられている。

最大造形サイズは歴代トップの高さとなる340mm(写真左)。写真中央は既存モデル「SCOOVO X9」の最大造形サイズとなる230mm、写真右はX9の前モデル「SCOOVO C170」の最大造形サイズとなる175mm高の造形物だ

搭載ノズルやデュアルファンなど、ハードウェア部はほぼ既存モデルを踏襲

もう1つの進化点として、前面に搭載した液晶パネルがある。SDカードスロットも装備し、PCがなくとも、液晶パネルの操作だけでSDカード内のデータが出力可能となった。

新たに設置された液晶パネルとSDカードスロット

付属のソフトウェアは、従来の「SCOOVO Studio」から「SCOOVO Studio SE」となり、インタフェースなどを改善。初心者でも扱えるよう、よりシンプルな操作性となった。モータやデュアルファンなど、ハードウェア部に大きな変更はない。

主な仕様は、最小積層ピッチは0.05mm、ファイルデータ転送方法はSDカード、造形マテリアルはPLA フィラメント (Φ1.75mm) / ABS フィラメント (Φ1.75mm)、入力形式は.stl、液晶ディスプレイはSTNブルー液晶など。

本体サイズはW406×D383×H556mm、重量は約19.9kg。シャーシはスチール合金、エクステリアにはアルミニウム合金を採用する。表面はアルマイト処理。カラーはシルバー(SCV-X9H-S)とブラック(SCV-X9H-BK)の2種類。サポートOSはWindows 7 / 8 / 8.1。ビジネス用途を中心とするため、正規販売店や特約店などを通じ販売する。

フィラメントを積層していく小型のエクストルーダなど、主要なハードウエアはX9から引き継ぐ

製作できる造形物の例

SCOOVO MA30・SCOOVO MA10

SCOOVO MA30(写真左・ブラック)とSCOOVO MA10(写真右・シルバー)

造形中のイメージ。吊り下げ式のため、造形物は天地逆で成形される

「SCOOVO MA30」「SCOOVO MA10」(MAシリーズ)は、吊上げ式の光造形3Dプリンタ。光造形とは、光を当てると硬化する液体樹脂を素材とし、レーザー光などを照射して成形していく3Dプリンタ。MAシリーズは液体樹脂の損失を低減する吊り上げ式を採用し、一般的なレーザー照射方式の光造形機と比べ、低ランニングコストでの造形が特徴だ。

具体的には、従来の光造形方式の3Dプリンタでは、小型の造形物でもタンクいっぱいに液体樹脂を注ぐ必要があり、樹脂の入れ替え時に多量に樹脂を捨てなければならなかった。今回のMAシリーズではタンクに造形用のベルトを設置し、液体樹脂をベルトで一層ごとに塗布することで、小さな造形物であれば少量の液体樹脂で製作できる。

造形は液体樹脂を一層ずつ塗布し、下部から光を照射することで硬化させていく

少量の液体樹脂でも造形することが可能

液体樹脂用のタンク

これにより造形時の低コスト化が見込めるほか、液体樹脂の空気への接触が少ないため不要な部分の硬化が低減できる。造形途中に液体樹脂が不足した場合、動作を一時停止させ、樹脂を足すことも可能。

高原はLED・レーザーのハイブリッドDLPプロジェクションを本体下部に装備し、全面一括露光により造形時間の短縮を図る。光源寿命は約20,000時間。積層ピッチは、上位の「SCOOVO MA30」が0.025mmもしくは0.05mm、下位の「SCOOVO MA10」が0.05mm固定。樹脂はアクリル樹脂とゴムライク樹脂の2種類が使用でき、2つを配合して造形物の柔らかさを調節することも可能。カラーは12色を予定し、価格は1kgで約30,000円程度という。

樹脂はアクリル樹脂とゴムライク樹脂の2種類が利用できる。2種の配合も可能

MAシリーズで造形した物の例

このほか、MAシリーズの特徴として1年間の無償保証に加え、カスタマイズ可能な保守契約も用意する。料金はセンドバックで480,000円/3年、オンサイトで750,000円/3年を予定。

上記以外の「SCOOVO MA30」の主な仕様は、最大造形サイズがW96×D54×H150mm、XY解像度が0.05mm、データ入力形式が.stlなど。消費電力は約650W。本体サイズはW684×D554×H1042mm、重量が約65.0kg。カラーはシルバー(SCV-MA30-S)とブラック(SCV-MA30-BK)の2種類。

「SCOOVO MA10」では、最大造形サイズがW100×D75×H150mm、XY解像度が0.1mm、データ入力形式が.stlなど。消費電力は約500W。本体サイズはW684×D554×H922mm、重量が約63.0kg。カラーはシルバー(SCV-MA10-S)とブラック(SCV-MA10-BK)の2種類。

サポートOSはいずれもWindows 7 / 8 / 8.1。専用ノートPCが付属する。

専用ソフトウェア「SCOOVO Studio SE」

MAシリーズにはノートPCが1台付属する

本体側面

電源は家庭用コンセント(AC100V)