東京大学 先端科学技術研究センター、富士通、興和は8月7日、コンピュータ上で仮想的に設計・評価するIT創薬により、がんの原因となるタンパク質の働きを抑える医薬品の候補となり得る新規活性化合物を創出することに成功したと発表した。

共同研究では、東大先端研が研究している「疾患を引き起こす原因と考えられるタンパク質の情報」をもとに、IT創薬による方法と従来の低分子創薬技術とコンピュータを用いた低分子化合物探索の併用による方法の2つの方法で、がんを標的疾患とする創薬研究を進めてきた。

IT創薬による方法では、富士通が医薬品の候補となる低分子化合物を設計し、興和が低分子化合物の合成と実験による阻害活性測定を行ってきた。

共同研究では、がんの原因となるタンパク質に対し、医薬候補化合物設計技術によりコンピュータ上で多様な化合物構造を設計し、それらの阻害活性を高精度活性予測技術で予測して絞り込んだ後、合成と実験による阻害活性測定を行うという手法をとっている。

これにより、既知化合物の改変による従来の創薬では得がたい新規の化合物構造でありながら、阻害活性の高い医薬候補化合物を、高い確率で創出することを目指してきた。

コンピュータ上で設計した多様な化合物構造の中から、標的タンパク質との相互作用により安定な複合体を形成すると考えられる22の化合物構造を選択し、そのうち8化合物構造を合成し、実験による阻害活性測定を行った結果、1低分子化合物が目標とする阻害活性を示し、新規活性化合物を創出することに成功した。

12.5%という、従来の低分子創薬技術と比べて高い確率で、新規活性化合物を創出したことになるという。