天井と床に穴を空けて設置! 独自の落下試験装置

TOUGHPAD FZ-E1の特徴は、とにかく堅牢であるという点に尽きる。そのひとつが3メートル落下耐性を実現したことだ。

3mという高さは、大型トラックの運転席から乗り降りする場合、あるいは倉庫で1.5mの脚立に乗り作業をしていた際に落下するシーンを想定したものだ。その時、地面はコンクリートという状況が多い。

FZ-E1は、米国国防総省の性能試験のひとつである「MIL-STD-810G」に加えて、パナソニック独自試験として、本体の6方向に対しそれぞれコンクリート面への3m落下試験を行い、それをクリアするだけの堅牢性を実現したという。

3mの落下試験を行う試験機器

試験機器は、開発現場である神奈川県横浜市のパナソニックシステムネットワークス内に新たに設置。同設備の設置のために、わざわざ天井と床に穴をあけて、3mの検査ができる状況を作り出した。

6方向での実験が的確に行えるように、落下地点直前までは製品の向きを機械が保持する形で落下。直前で製品を放し、落下速度のままコンクリート面に叩きつけるという厳しい実験だ。

これまで堅牢性をうたってきた業務端末や他社の堅牢スマホでも、2mや1.2mの高さから、ベニア板への落下実験だという。これと比較しても、3mの高さからコンクリート面に落下した際の衝撃耐性は、これまでの基準を大きく上回るものであることがわかる。

FZ-E1を利用する環境を想定すると、画面サイズが大きい他のTOUGHPADシリーズよりも落とすシーンが多く想定される。それだけに、より高い落下衝撃耐性を考慮したこだわりだといえる。

この落下耐性を実現するために、内部構造の見直しとともに、本体の周りにゴムの樹脂であるエラストマーを配しているが、これもこれまでのTOUGHBOOKとは異なるものを採用。より耐衝撃性に優れたものを選定したという。

落下試験装置の上部。天井に穴を開けて設置

落下試験装置の下部。床に穴を開けて設置

落下地点直前までは製品の向きを機械が固定する

【動画】TOUGHPAD FZ-E1の3m落下試験(※音が出ます)

一方で、ディスプレイ部では、400g鋼球の落下衝撃耐性も実現した。

同社では、80cmの高さから、400gの鋼球をディスプレイ部に直接ぶつける試験を実施。この実験では、他のスマホの画面は当然割れるが、FZ-E1はまったく画面に損傷がなく、しかもタッチ操作もそのまま動作させることができた。

400gの鋼球というのは、本体のみで約435gのFZ-E1自身に近い重さ。例えばズボンのポケットからFZ-E1が落下した場合、落下距離は約80cm。その際地面に堅い突起があり、それが画面にぶつかったという状況を想定した実験だ。

「液晶にはコーニングのGorilla Glass 3を採用しているが、厚みはFZ-E1独自のものを採用する。ただ、同じガラスを使っても、同じ堅牢性は実現できない。ここにひとつのノウハウがある。長年、TOUGHBOOKで培ってきた技術やノウハウも活用している」と、パナソニックシステムネットワークス ターミナルシステムビジネスユニット商品開発室機構設計チーム・望月賢一主任技師は胸を張る。

パナソニックシステムネットワークス ターミナルシステムビジネスユニット商品開発室機構設計チーム・望月賢一主任技師

さらに、防塵・防水性能でも、TOUGHPADならではのこだわりをみせる。

FZ-E1では、75μmの粉塵が入らないこと、1.5mの水圧に30分間耐えられるというIP65/IP68の防塵・防水性能を実現。さらに、水がかかった状態で操作するとタッチパネルが誤動作を起こしたり、雨水が当たることによってタッチパネルが反応してしまうという課題も解決している。

「濡れても誤動作しない機能は、パナソニック独自の水滴誤動作防止機能によるもの。特許出願中の技術となっている」(二文字屋参事)という。

取材時には、防塵・防水性能を手軽に確かめられる簡易装置も現れた。すべて「手作り」という

実際に土に埋めたり、水を掛けたりしても、動作に影響はなかった

【動画】TOUGHPAD FZ-E1に流水をかける簡易実験(※音が出ます)

1.5mの水圧に耐えるかどうかを確認する試験装置。水を張った巨大な試験官管のようだ。試験は2人1組で行い、端末をカゴにくくりつけゆっくりと沈めていく。こちらも、再び水から上がった際、動作に問題はみられなかった

【動画】TOUGHPAD FZ-E1の1.5m耐水圧試験(※音が出ます)

また、一般的なタブレットは0度~40度までの動作を保証するが、FZ-E1では、マイナス20度~60度までの動作保証をしている。これも実際の利用環境を想定したこだわりだ。

「北海道旭川の平均最低気温はマイナス20度。寒冷地のほか、冷凍倉庫内での利用も考えるとマイナス20度といった環境が想定される。一方で、外部機関の調査によると、気温35度の環境で正午から午後4時までの日中の車内温度は53度にまで上昇する。デバイスを車中に置いたままの状態を想定した温度」(二文字屋参事)というわけだ。

さらに、寒冷対策としては、本体内にヒーターを内蔵。バッテリ部分をヒーターで暖めることで、氷点下の状況でもバッテリの駆動をサポート。これによって寒冷地での安定的な性能を実現するという。

マイナス20度の環境では、多くの機器がまったく動作しない状況になるが、ヒーター機能により、ある程度の時間が経てば安定した利用が可能になるという。PCやタブレット、スマホでは、熱対策のための冷却が重要視されるが、FZ-E1では逆にヒーターを搭載することで寒冷地対策を実現している点がユニークだといえよう。また、炎暑対策では、部品ひとつひとつを見直し、熱に強い部品を採用。これによって、60度までの動作を可能にしたという。