MYCODEの提供を支えた共同研究

東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター DNA情報解析分野 教授 宮野悟氏

MYCODEは、文部科学省と科学技術振興機構が推進する「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」の一環として、2013年夏から東大医科研とDeNAが行ってきた共同研究の社会実装の部分を担う。

同研究は、「日本人のための疾病リスク予測モデル研究」と「消費者直販型(DTC)サービスによる消費者行動の変容解析」「ヘルスビッグデータ社会実装においてELSI(Ethical, Legal and Social Issues:倫理的・法的・社会的問題)面の課題抽出と対処法の研究」から成る。7月9日に開催された発表会では、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター DNA情報解析分野 教授の宮野悟氏による、日本人のための疾病リスク予測モデル研究に関する報告が行われた。

MYCODEでの遺伝子情報分析に使用する「日本人疾病リスク予測アルゴリズム」は、ゲノムワイド関連解析(GWAS)手法をもちいて遺伝子のタイプと疾病との関係を研究した論文を調査・分析することにより実現した「より日本人に合った新たなデータベース」を利用して作成された。

GWAS研究は、2002年に理化学研究所によって開始され、2014年時点では全世界で約1900報の研究論文が報告されているという。今回の研究では、282種の疾患と437種の体質に関する研究論文、計1415報から選定した442報(疾患:294報 体質:148報)を分析したという。

宮野氏は、「論文選定フローにおいて、日本人を対象としたものから優先順位を付けて選出し、対象疾患・体質と統計学的に有意に関連するSNPの情報や、関連SNP同定に至ったデータ解析のプロセスを抽出することにより、GWASカタログにはない情報を得ることができた」と説明した。

論文選定フロー

論文内容の分析に関して

加えて、「抽出した情報を疾患別に整理することでデータベース化した結果、より日本人向きの新たなデータベースを作成するに至った」と研究を評価した。

同研究には、東大医科学研究員のほか、DeNAから5名の生命系博士号保有者が参加し、連携を図りながら取り組んできたという。

構築した「日本人疾病リスク予測アルゴリズム」

論文調査体制

DNAの検査を行う専用ラボは? DNAの保管場所は?

実際に提出された遺伝子の検査を行う場所は、東大医科研内に設けられた「MYCODE専用の検査ラボ」となる。このラボでは、サービス利用者から届いた検体の受け入れから、Micro ArrayによるDNA解析まで実施する。

MYCODE専用の検査ラボでのフロー

唾液からDNAを抽出する作業は、プログラミングされた自動分注器によって行われるため、ミスや異物の混入などの心配はない。抽出されたDNAと検査データはバーコードにより匿名で管理され、提出された唾液は、検査レポートがサービス利用者に開封されたことが確認できた時点で廃棄される。

DNA解析で使用する機械一覧

また、DNAと同意書が保管される「保管部屋」への入退場は、カードキーの認証に加え、静脈での認証も実施され、限られた人しか入れない環境を構築したという。

保管部屋へ入場する際のセキュリティ

右は唾液を採取するキット、左はDNAの容器