ソニーがここ数年で資産売却を進め、それが業績を支えてきたのは周知の通りだ。2007年の旧本社2号館の売却をはじめ、2013年には、かつてテレビ事業の聖地と言われた大崎西テクノロジーセンター跡地に建設したソニーシティ大崎を売却。これによって、米国会計基準での営業利益や、最終利益での収益増を実現してきた経緯がある。2012年度の黒字化は、エレクトロニクス事業をはじめとする本業での赤字を不動産売却によって営業黒字化したとの見方はアナリストの間では一致している。

2013年度は目立った資産売却による利益計上がなく、2012年度のようなウルトラCが使えないことも、赤字の原因の1つといえよう。一方で、2014年度はどうなるのだろうか。

テレビ市場の回復はまだ遠い?

残念ながら、エレクトロニクス事業の厳しさはしばらく残ることになりそうだ。4Kテレビでは圧倒的なシェアを誇るソニーだが、まだ4Kテレビの市場規模事態が全体の1.1%(台数構成比)に留まり、収益に貢献する事業と呼ぶには時期尚早だ。そして、テレビの市場回復にもまだ時間がかかる。また、テレビに代わるようなエレクトロニクス事業を牽引する製品が見当たらないことも厳しい理由のひとつだ。

その一方で、先ごろ売却した旧本社ビルの利益が、そのまま営業利益に計上されることが見逃せない。これまでの資産売却に比べると貢献規模は小さいが、黒字化にはプラス効果となる。

ちなみに、売却した旧本社ビルは「NSビル」と呼ばれる。これは、ニッキとソニーの頭文字を取ったものだ。今回の旧本社売却に向けては、旧本社と隣接するソニー3号館のソニー持ち分をニッキに譲渡し、NSビルのニッキ持ち分をソニーが取得。それによって、旧本社をソニーの100%持ち分とした上で売却するという仕組みを活用。用意周到に売却準備を進めてきた経緯がある。

困ったときの「スパイダーマン」

そして、もう1つのプラス効果がスパイダーマンだ。現在、映画「アメイジング スパイダーマン2」が公開。これが北米映画興行収入ランキングで初登場首位となり、今年一番のヒット作になるとの呼び声も高い。

「過去3回ほど、スパイダーマンに助けてもらったことがある」とは、あるソニー関係者の声。実際、スパイダーマンは、ソニーの業績不振を何度か助けている。

2002年の初の映画作品となる「スパイダーマン」、2004年の「スパイダーマン2」では、エレクトロニクス事業の不振を、それぞれ映画部門でカバー。結果として、全社の営業増益を達成している。2007年の「スパイダーマン3」では、エレクトロニクス事業の業績好調があり、スパイダーマンは好調であったもののそれほど出る幕はなかった。一方で、2012年の「アメイジング・スパイダーマン」では、エレクトロニクス事業の赤字を尻目に、エンターテインメント事業における営業利益を約40%も増益。やはりスパイダーマンが下支えした。

アメイジング スパイダーマン2の出足をみると、2014年度もまた、スパイダーマンが助けてくれそうではある。

しかし、本業のエレクトロニクス事業の黒字化は遅れ気味であり、2014年度には分社化したテレビ事業の復活に向けた総仕上げの年となり、利益貢献があったとしてもわずかに留まるだろう。だが、スパイダーマンに助けてもらうのは、2014年度をそろそろ最後にしなければ、もはやソニーはエレクトロニクス企業とはいえなくなるのではないか。

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