既存売上を維持しつつ、収益貢献度の低いビジネスを「撒き餌」に
「Windows Phoneライセンス無料化」「9インチ未満タブレットのWindowsライセンス無料化」「Office無料バンドル」「Office for iPadの提供」など、従来のMicrosoftから考えれば「随分と太っ腹な施策」に見えるが、その実は「エンタープライズ市場での盤石さ」を武器に、収益貢献度の低い事業をあえて無料開放して顧客の間口を広げるのが、現在のMicrosoftの戦略だと筆者は予想している。
実際、Windows Phoneの世界シェアはわずか数%程度であり、Windowsタブレットも先ほどのThe Guardianの記事のIDCのデータを参照するとわかるが、AndroidやiPadに大きく水をあけられている。Officeもバンドルライセンス比率はどんどん下がっており、Microsoft自身がOffice 365への誘導を理由に売上減少を受け入れている。「どうせ負けているなら、無料開放して競争のハードルをライバルと同水準まで下げる」という作戦も成り立つだろう。
とはいえ、利益率の指標となるGross Profitは近年急速に減少を続けており、(本来であれば利益率の高い)ソフトウェア企業の優等生であるMicrosoftが、従来のソフトウェア企業から「別の何か」へと変貌しつつある過程が垣間見えてくる。
Microsoftには課題がある。それはサービス事業や(主に企業へのライセンス販売)を主軸にしようとしながらも、新しいデバイスやプラットフォームの種類が増えて相対的にシェアが減少したことで、結果的にデバイスからサービスへと誘導する間口が狭くなっていることだ。
かつてのPC時代であれば問題はないが、現在はスマートデバイスの市場が拡大しており、スマートフォンとタブレットの比率が急速に伸びている。Surfaceの提供やNokiaのモバイル部門買収によるWindows Phoneデバイスの提供など、AndroidやiOSに対抗して「入り口を用意してやる」のは重要な作戦だ。また、これらデバイスはXbox LiveやBingのサービスを利用するための入り口でもあり、ゲーム機のXboxシリーズと並んでサービス事業の拡大実現に必要だ。競争の激しいミニタブレット市場でのWindowsライセンス無料化や、ローエンドを意識したWindows Phoneでのパートナー拡大は、こうしたサービス誘導戦略の一環だとみられる。前述Gross Profit低下も、これを受け入れたうえでの(相対的に利益率の低くなる)デバイス拡大政策へと結びついている。