レノボ・ジャパンが、第2世代となる「新しいThinkPad X1 Carbon」を発売した。2012年8月に発表した「ThinkPad X1 Carbon」以来のフルモデルチェンジであり、製品名に「新しい」という言葉を用いたように、大きく新たな進化を遂げたことを自ら宣言するモデルとなっている。

14型Ultrabookとしては世界最軽量を実現する一方、キーボードの最上位に動的に変更可能なタッチパネル式キー「Adaptiveキーボード」を搭載。これまでにない新たなユーザーインタフェースの形を提案してみせたのは、ThinkPad X1 Carbonならではの挑戦だといえよう。

新しいThinkPad X1 Carbonはどんな狙いで開発されたのか。大和研究所を取材した。

新しいThinkPad X1 Carbon

「新しいThinkPad X1 Carbon」はなにが「新しい」のか

まず気になるのは、今回の新製品名に「新しい」という言葉を付けた点である。アップルが第3世代iPadで「新しいiPad」と表現。日本マイクロソフトもOffice 2013に「新しいOffice」という呼称を用いるなど、ちょっとした「新しい」ばやりではあるが、レノボ・ジャパンが「新しい」という表現を使ったのは、今回の「新しいThinkPad X1 Carbon」が初めてのことだ。

では、今回の「新しいThinkPad X1 Carbon」は、なにが「新しい」のか。レノボ・ジャパン 先進システム開発・第一先進システム設計の小柳常雄氏は、「新しい」点をいくつかの観点から説明する。

レノボ・ジャパン 先進システム開発・第一先進システム設計の小柳常雄氏

ひとつは、新たな市場をターゲットとした点だ。「ThinkPadの主要ターゲットは、大企業ユーザーやPCを使い慣れている人が中心だったが、ThinkPad X1 Carbonでは、ThinkPadを初めて利用するようなユーザーを強く意識した。そして、新しいThinkPad X1 Carbonでは、一般ユーザーを含めたより広いユーザー層に新鮮味を持って使ってもらえるような製品を目指した」とする。

コンシューマ利用も強く意識したのが、「新しいThinkPad X1 Carbon」の特徴のひとつで、例えば、USBポートや電源ポート部の色も、本体にあわせて黒に統一。細かいところまでデザイン性にこだわっている。わざわざ金型を起こし、コストもかけた部分だ。

そして、多くの人は気がついていないが、新しいThinkPad X1 Carbonでは、従来のThinkPadシリーズで採用していたブラックの筐体カラーよりも、若干明るいグラファイトブラックカラーを採用している。これもコンシューマユーザーを意識した新たな挑戦のひとつだという。

従来のThinkPad X1 Carbon(上)と新しいThinkPad X1 Carbon(下)。天板カラーをマットな黒から明るいグラファイトブラックに変更している

左側の端子類。USB 3.0ポートや電源ポートの色はブラックに統一されている

2つめは新たなキーボードとして、Adaptiveキーボードを採用した点である。ThinkPadはキーボードに長年のこだわりがある。伝統的な7段キーボードがその象徴的なものだが、近年ではこれを6段キーボードへと統一し、ThinkPadの次なるキーボードの姿を定着させたところだ。だが、今回の新しいThinkPad X1 Carbonでは、その6列キーボードをさらに進化させ、最上段となるファンクションキー部をタッチパネル式へと変更。ThinkPadが提案する新たなキーボードの方向性を明らかにしたのだ。

本体キーボード部。最上段のファンクションキーはタッチパネル式のAdaptiveキーボードへ大胆に進化した

そして、今回の新しいThinkPad X1 Carbonでは、高いスペックを維持しながら、より薄く、より軽く、それでいて操作性は決して犠牲にしないという点にもこだわったという。

WQHD(2,560×1,440)液晶搭載モデルの薄さは、最薄部で13.2mm。最厚部でも19.2mm。そして重量は1.28kg。マルチタッチ液晶搭載モデルでも最薄部で13.9mm。最厚部でも20.15mmとなり、重量は1.43kgだ。

「ThinkPad X1 Carbonのノンタッチモデルと、新しいThinkPad X1 Carbonのタッチモデルで比較しても、薄さには最大2.2mmの差がある。厚みが18mmを切ると持ち歩きやすいサイズになる。だが、薄くしすぎると持ち運ぶ時にエッジが刺さる痛みがあるため、あえて厚みを持たせる工夫もした」(レノボ・ジャパン ノートブック製品 機構設計の大塚亮氏)という。

ThinkPad X1 Carbonのノンタッチモデルと、新しいThinkPad X1 Carbonのタッチモデル。新しいThinkPad X1 Carbonの方が薄くなっていることが目視できる。また、天板のロゴ位置も、従来は利用者からみて正位置だったのが、新しいThinkPad X1 Carbonでは対面から見て正位置に変更している

レノボ・ジャパン ノートブック製品 機構設計の大塚亮氏

また、使い勝手については、「UE(ユーザーエクスペリエンス)スペックの資料に基づいて作り込んでいった」(レノボ・ジャパン UX&ノートブックSW開発・先進ソフトウェア開発の中尾竹伸氏)とする一方、ThinkPadが追求してきた構造設計の堅牢性やキーストロークの確保に代表される操作性、アプリケーションの使いやすさなどは変わらないと自信をみせる。

また、有線LANポートを内蔵したのは、企業ユーザーのニーズに対応するものであり、これもThinkPadとしての使い勝手を継承している。有線LANポートの搭載は、既存のThinkPad X1 Carbonでは見送られていたが、これを復活させた格好だ。

このように、従来の使い勝手の継承と、新たな使い勝手の提案を両立することにこだわったのが。ThinkPad X1 Carbonである。

右側面に配置された有線LANポート(上部)