パナソニックは3月28日、国や用途によって異なる方式、標準、規格(無線通信モード)を、無線LSIで同時検出し、無線通信モード間のソフトウェアを共用化することで回路規模や信号処理量を削減し、小型・長時間駆動が可能な無線モジュールを構成できるM2M(Machine to Machine)センサネットワーク向け無線通信技術を開発したと発表した。

同技術は、従来のFSK復調回路ではなく、Short-time DFTを用いた異なる無線通信モードの周波数成分を同時に検出し、そのモードの伝送レートをハードウェアで判定する技術と、受信した伝送レートに最適な制御をする復調器の開発、ならびにハードウェアで判定した伝送レートに応じてソフトウェア制御を切り替える方式を、モード間のソフトウェアの共用化を図る技術を組み合わせることで、従来、無線通信モードの数だけ必要となっていた無線LSIを1チップで構成することで実現したという。

また、各無線回路を安定に動作させるためには動作周波数や温度に関わらず一定の電圧を供給する必要があったが、今回、低消費電力化に向け、新たに動作周波数、温度、素子バラつきによって電圧自体をダイナミックに制御し回路電流を最小にする、インテリジェント電源技術を開発。これにより、受信時に最も多くの電力を消費していた高周波発振回路の消費電流を従来比で約70%削減できるようになったほか、受信した信号を処理するA/D変換回路(ADC)に対し、低速クロックの立ち上がり部分を用いて、高速クロック利用時と同等のタイミング生成用パルス状クロックを生成する技術を開発したことで、高いSN比を実現可能なΔΣ式ADCと同等のSN比を実現できる低消費電力なSAR式ADCを実現、従来品比で消費電力を約60%削減したことに加え、フィルタレスの小型ADCを実現したとする。

さらに、従来の発振回路では、トランジスタの素子バラつきに起因する回路電流の増加を抑えるために、大きなコイルを用いていたが、新たに開発したインテリジェント電源制御で素子バラつきを補正するで、発振周波数を2倍にすることが可能となったとのことで、これにより、コイルの大きさを小さくできるようになったほか、1/2の分周器で構成する、低消費電流で小型な発振回路を実現したとする。

なお、同社では、今回開発した技術を活用することで、最大3モードに同時対応しながら、従来のシングルモード用無線受信部と同等サイズで、30秒に1回の間欠レートの機器間通信を産業用リチウム電池(容量1200mAh)で行った場合で約20年の電池駆動が可能な無線通信モジュールが実現できるようになるとしている。

パナソニックが開発した統合無線技術を適用した試作モジュール