こうした相談のあと、参加した中高生の内、現役理系女子の子3名が代表して相談室の感想を述べた(画像21)。1人目の子は「実際に活躍されている理系女子の方と話ができて、とても面白かったです」とコメント。2人目の子は、「理系女子の先輩のお話は、自分の目指している分野とは違うのですが、聞いていてすごく興味深かったです。また、同じ班のほかの人たちの話を聞いて、もっと自分を見つめたいなとも感じました」という。3人目の子は、「私自身、将来どうしたいのかはっきりと目標が定まっていないのですが、自分から積極的にいろいろな人の話を聞いて、自分がいいと思える道を、最終的に選べるようになれたらいいなと思っています」とした。立派なものである。筆者はそのころすでにやりたいことがあったが、じゃあ、こうしたイベントに参加して、こんな立派な感想を述べられたかというと、正直、疑問符がつく(笑)。

画像21。いきなりマイクを向けられても、ちゃんと自分の言葉で答えていたリケジョたち

また、実際に中高生たちの相談に乗ってあげた、先輩リケジョの皆さんにも感想を聞いてみた。まずA班の獣医師兼ライターの石井さんは、「今日来ていた子たちはみんな真面目な子ばかりで、いわなくても勉強はすると思うんですよね。でも、勉強するにも体力がいるので、体を動かすのを忘れないようにしましょうという話はしました。体が健全じゃないと、頭もちゃんと働かないですから。数学が好きという子(第1部で優勝した子の1人)がいたんですけど、数学の研究者の伝記とかを英語で読んでみると、好きなものであれば楽しいから読むので、嫌いな科目がなくなっていくよ、という話もしました」とした(画像22)。

B班を担当した私立高校の教員である横江さんは、「私の担当した班は中学1~2年生の子が多くて、さすがにまだ将来についてピンと来てない子が多い感じでしたね。最近は、女性が理数工系にトライすることの壁みたいなものは取り払われては来ていると思うのですが、1人の女の子が、工学系に進みたいそうなのですが、親や教師から就職が難しいし、結婚にも差し支えるみたいなことをいわれているらしいんですよ。やはり何か資格を取った方がいいのかといったことで悩んでいるようで、意外としっかりと周りの目を気にしているんだな、というのを感じました。もっと今の子だから、ガンガン行くのかなと私は思っていたのですが、その辺りは気になるみたいですね。もしかしたら、今の子の方が気にするのかも知れません。結婚は、逆に理数工系の職場は男性の方が多いから、しやすいとは思うんですけどね」とコメント(画像23)。

次にC班を担当した、出版社に勤務をするようになって1年目という佐々木さんは、「私自身、「頭悪いんだから、理数系に行け」といわれて(佐々木さんの地元の岩手では、偏差値が理数系の方が下なのだそうだ。しかし佐々木さんは東京大学卒で、本当に頭が悪い人が日本の最高学府には入れるはずはないことを付け加えさせていただく)、でも「理系は嫁に行けなくなる」などともいわれたりもしたのですが、ここに参加した皆さんにはこのまま変な壁に突き当たらないでいってほしいなと、特に女の子たちには対しては思いましたね」としている(画像24)。

画像22(左):A班の様子。左端のこちらを向いている方が獣医師兼ライターの石井さん。画像23(中):B班の様子。右端のこちらを向いている方が私立高校の教員である横江さん。画像24(右):出版社に勤務の佐々木さん

さらに独立行政法人の土木・環境系の技術職(公務員)というD班の藤津さんは、「最近の中高生は真面目だなと感心しました。明確なビジョンを持たなきゃいけないって雰囲気が強くて、持てないせいで悩んでいる子も多いのかなと思うのですが、私自身は全然そういうところがなかったので、もちろん就職とかゴタゴタしたこともありましたが、今、ちゃんと就職できているので、ずっと好きなことをやって来てよかったし、なんとかなるよ、と。まぁ、親が許してくれたからなのですが(笑)。今の中高生が、まだ若いのに、将来のことに縛られてしまっているのかな、というのが少し心配ですね。それに加えて、今自分がやりたいことがあって、それを将来と結びつけられないことにも悩んでいる感じかなと。結びつける必要は全然ないと思うんですよ。そこら辺で、ちょっとかわいそうな感じがしないでもないです。最初から視野が狭い状態なんじゃないかと。そのせいで悩んでる子も多いんじゃないかと思いますね」とした(画像25)。

続いては、自動車部品メーカーの材料技術研究部に就職したあとに、さらなる向学のために現在は大学院の工学部に社会人学生として通ってもいるという保木井さん。E班の担当だ。「話をしていた時に、全員が全員、私の目をしっかりと見て話をしてくれていたのが、印象的でした。今日来てくれている子たちは、少なくとも自分の班の子たちは自分の信念を持っている子が多かったようです。だから、逆にくじけた時に、支えが必要かなとも思うんですよね。そんな時、先輩が楽しそうに仕事や勉強をしている姿を見せるのはすごくプラスになるんじゃないかと思うので、今日は、私は楽しみながら仕事も勉強もしているよ、というのを感じ取ってくれたらいいな、と思って話をさせてもらいました」としている(画像26)。

最後は、今回のスタッフの1人で、F班を担当した物理・理学系の矢部さん。「ここに来た子たちは意識が高くて、ちゃんと将来何になりたいかというものがあって、それをちゃんと自分の言葉でいえているのがしっかりしていて、日本の将来を任せられる子たちだなと感心しました。ただ、具体的にどうすればいいかがわからないところもあって、高校卒業後は大学へ進むべきなのか、それとも専門学校に進むべきなのか、という子もいましたね。もしかしたらほかのことにも興味を持つかも知れないので、もちろん専門学校もいいんだけど、大学に行ってみるのもありなのでは? ということをいいました。特に中学生の子は、可能性を狭めるような形にはしたくないですからね」とした(画像27)。

画像25(左):D班の様子。正面のこちらを向いている女性が、独立行政法人で土木・環境系の技術職を努める藤津さん。画像26(中):E班の様子。右側のこちらを向いている女性が、自動車部品メーカーの材料技術研究部勤務兼大学院生の保木井さん。画像27(右):F班の様子。今回のスタッフの1人で物理・理学系の矢部さん