さあ、そしてColdplayの出番だ。まずは間もなくリリースされる予定の新作"Ghost Stories"のオープニングチューン"Always In My Head"を演奏、前作"Mylo Xyloto"から"Charlie Brown"、"Paradise"と続く。

レーザーやムービングが動き回っても、セットは比較的シンプル

先行シングルの"Magic"、"Clocks"を挟んで、"Another's Arms"へ。冒頭のAlways In My Head"はもちろん、新作からのトラックはこれがライブでは初のお披露目。その意味でもこの日はプレミアムな一夜となった。

"Viva La Vida"では場内一体となって大合唱

MCでChris Martinは「次の曲は、皆にも一緒に歌って欲しいんだ」と一言。 iPodのCMにも使用された"Viva La Vida"のイントロが流れると、一階はもちろん、大人し目にしていたバルコニー席のオーディエンスも総立ちに。場内の熱気は一気にピークへと向かい、"Oh, oh, oh, oh, oh"の大合唱が始まる。iPhone/iPad、Mac/PC、Apple TVで視聴していたみなさんも、この場面では同じ興奮、歓喜の瞬間を共有していたことだろう。Coldplayの人生讃歌、ここにあり。

Coldplayは、その輝かしい実績にも関わらず、長い間自分たちの楽曲をタイアップソングとして使用することを拒んできた。08年の"Viva La Vida"リリース時、メンバー自身がiPodとiTunesのCMに出演してからはAppleとの蜜月が続いており、11年のTunes Festivalでもヘッドライナーを務めている。このことについて、Chris Martinと女優・Gwyneth Paltrow夫妻の実娘"Apple"ちゃんの存在がどの程度関係しているのかは定かでない。

ここからは後半に突入(この日はヘッドライナーではあったのだが、演奏時間は1時間程度とやや短め)、曲は昨年末に公開された『ハンガー・ゲーム2』の公式テーマソング"Atlas"だ。そこからドラマティックかつ華麗な"Every Teardrop Is a Waterfall"へ。

じっくりと聴いていて、改めて思うのは、Coldplayの支持の幅の広さだ。壮大にしてダイナミックな曲調、ポップでキャッチーな面は大衆向けではあるが、その一方で、サウンドデザインにブライアン・イーノを起用してみたりと、マニアックな層にもアピールできるというのは簡単にできるものではない。前述したAppleとの蜜月は、こういう幅広い層に受け入れられるというところから来ているのかもしれない。

後半はピアノを弾く場面が多かったChris Martin

「マレーシアで起きてしまった事故を想って、彼らの事を考えているということを伝えたい」というMCに続いて、本編ラストの曲"Fix You"が始まった。こういった他者に対する思い遣り、遠くはなれたところで見守っているオーディエンスに対する気遣いも彼らの大きな魅力だ。

大きな拍手の歓声に包まれて、ステージを後に。そして迎えたアンコール。

またまた新作から先行でPVが発表された"Midnight"をプレイ。一際目を引いたのが、スクリーンに投影されたステージ上の丸いテーブル。このテーブルに先行シングル"Magic"で使用された鳩のビジュアルが映し出されているのだが、実はこれ、"Reactable"という楽器の一部なのだ。Reactableは電子ブロック上のモジュールを組み合わせて演奏ができるというもので、Bjorkがライブで使用したことから一躍有名になった。Reactableはハードウェアベースのもの以外にiPhoneアプリが存在する。興味のある方は是非ダウンロードしてみてほしい。SXSW内のイベントでこれを導入するというのはいかにも「らしい」ことだなあと感じた。

"Midnight"はモジュレートされたヴォーカルにダウンビートという、実験的なエレクトロ色の強い曲だ。派手に盛り上がるというタイプの曲では決してないが、こういう曲をアンコールに持ってくることからも、新作のクオリティにかなりの自信があるということが窺える。

(C) iTunes Festival at SXSW