テレビ市場はどうなったか
2013年のテレビ市場では、4Kモデルが話題となった。ご存知の方も多いように、4Kの映像ソースは現時点ではほとんど存在しておらず、もっぱら2K(フルHD=1,920×1,080ドット)の映像をアップコンバートして観賞するのが主な利用法となっているのだが、これはこれで意味がある。
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ソニーの4K対応テレビ「KD-65X8500A」。CEATEC 2013でもアピールされていた |
テレビの適正な視聴距離は、画面の高さの約3倍とされている。リビングルーム用として一般的な40V型程度のテレビでは約1.5mだ。この距離で視聴した場合、2Kでも画面のドットは気にならない。一方で、それよりも大きなテレビ、例えば60V型の場合は、約2.2mが適正距離ということになる。40V型と60V型では、画面の面積は2倍以上になるのに距離は1.5倍弱だ。大画面になればなるほど、画面のドットの粗さが気になってくることになる。
4Kテレビは、もちろん将来的には4Kネイティブな映像を楽しむことができるのだが、現状でも、超解像処理により補間した精細な映像を4Kパネルに映すことで、大画面の粗さを感じさせなくする効果がある。ここが、いまひとつ盛り上がりに欠けた3Dとの違いだといえるだろう。
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シャープの4K対応「AQUOS(アクオス) UD1」シリーズ |
また、ミドルクラス以上のテレビのほとんどが、USB HDDへの録画機能を備えるようになったのも、2012~2013年の大きな流れのひとつだ。「テレビ & レコーダー」の組み合わせよりも、「テレビ & HDD」という組み合わせのほうが、見たら消すスタイルのユーザーには手軽だということだろう。
ただし、「テレビ & HDD」という組み合わせには、まだ課題も残されている。著作権保護の関係で、録画した番組をそのテレビでしか見ることができないという点だ。DLNAやDTCP+の仕組みによって、DTCP-IPサーバーやモバイル端末などへのダビングは可能になっているが、まだこれを活用しているユーザーは多くはない。
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CDからの買い替えは進むか - ハイレゾ音源
ハイレゾ音源も2013年にブレイクしたもののひとつだといえるだろう。音楽CDのサンプリングレート44.1kHz、量子化ビット数16bit、DATの48kHz/16bitを超えるものがハイレゾ音源と呼ばれている。96kHz/24bit、または192kHz/24bitのリニアPCMまたはFLAC形式のファイルが一般的だ。また、もともとはSACD用に作られた音楽フォーマットのDSDも、ハイレゾ音源に含まれている。
ハイレゾ音源は、PCオーディオの世界を中心に盛り上がりを見せているが、これがより広がりを見せるかどうかは、2014年以降の注目すべきポイントだといえるだろう。
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Cambridge Audioの超小型USB DAC&ヘッドホンアンプ「DacMagic XS」 |
かつて、オーディオのソース(音源)といえば、アナログレコードが主流だった。CDの音質は、アナログレコードよりも優れているわけではない。ただ、一定水準の音質をより手軽に扱えるというのが大きく、アナログレコードからCDへの買い替えは比較的スムーズに行われた。アナログLPで購入したアルバムをCDで再び購入するということも比較的普通に行われていた。
音楽メディアの主流は現在、配信サービスに移行しつつある。実は、世界中で日本のみ、CDが音楽メディアの主力であり続けているといっても過言ではない。音楽ソースを購入する層の多くがまだCDを消極的ながらも支持しているのは、国内の配信サービス側にも問題があった。音楽配信サービスに関しては、日本のみサービス開始が遅れるといった"初期のゴタゴタ"のイメージもあるが、これはサービス初期の低い音質も影響してるだろう。少々利便性が向上したとしても、低ビットレートの非可逆圧縮ファイルによる配信サービスにCDから乗り換えるメリットは決して高くはなかった。
「それを解消するのがハイレゾ音源では……」という見方や期待が広まりつつある。音楽業界としては、同じソースでもう一度対価を支払ってもらえるありがたい話だろうし、オーディオ業界的にも、より高音質な再生が可能なシステムの売り上げ増につながる可能性がある。
実際のところ、「PC」+「USB DAC」+「BAヘッドホン」という比較的手軽なシステムで聴いても、ハイレゾ音源の音の違いは明らかだ。ハイレゾ音源により、音楽配信サービスは、利便性だけでなく、音質までもCDを凌駕したことになる。個人的には、音楽CDからの2度目の買い替えを進めてしまうかもしれない。
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