既報のように、米AppleがTwitter等のソーシャル分析サービスを提供するスタートアップ企業の米Topsyを2億ドルで買収したことが話題になっている。本稿では、これについてもう少し細かく分析していく。

***

同件を最初に報じたWall Street Journalによれば、Appleにしては珍しく非上場のスタートアップ企業の買収案件で事実を認めたという。その目的については語っていないものの、それだけAppleの戦略上重要な位置を占める買収であることは間違いないようだ。

Topsyウェブサイト

WSJでの報道内容やTopsyのページを参照すると、同社はTwitterやGoogle+などでのユーザーの活動内容を分析し、それを統計的手法でまとめて企業ユーザーに情報として提供する企業となっている。戦略的提携により、Topsyは2006年のTwitter創業時の蓄積ツイートまですべてを取得可能な数少ない企業の1つであり、1日5億ツイートのペースで作成される膨大な数のデータを分析対象としている。ただ、AppleとTopsyとの間での買収合意はTwitter抜きでの話とみられ、このあたりの関係が今後どのようになるかが争点の1つとなる可能性がある。

Topsyの設立は2007年で、米カリフォルニア州サンフランシスコを拠点にしている。創業者の1人はVipul Ved Prakash氏で、過去にはNapsterに在籍していたほか、自身が設立したCloudmarkでアンチスパム技術の開発や研究を行っていたこともある。キーワードを基にツイートを解析するTopsyの手法は、この技術の延長にあると考えられる。2011年にTopsyはCisco Systems出身のDuncan Greatwood氏をCEOに迎え、Prakash氏はCTOとして引き続き同社の技術部門を率いている。Dow Jones VentureSourceによれば、Topsyは設立から今日まで3200万ドルの資金調達に成功しており、最近ではFacebookやGoogleなど数多くの著名企業への投資で知られるWestern Technology Investmentからも300万ドルの融資を引き出しているようだ。

Topsyの主要サービスは、地域的/トレンド的要素から各種要素を交えての分析が可能なツール「Topsy Pro Analytics」と、直近のリアルタイム情報のみをキーワード検索するTwitterに対して、より分析的視点からユーザーのSNS活動を検索可能な「Topsy.com」、そしてこれら分析データを利用するための公開APIに大別される。最近、Topsyではツイートの発信元を地域的に特定できる仕組みを実装しており、国別であれば全ツイートの95%の範囲で、都市別では4分の1程度を判別できるようだ。これにより、キャンペーンのさらなる絞り込み等が容易になる。またWikipediaでも紹介されているように、Twitterと共同で選挙キャンペーンの動向をまとめた「Twitter Political Index」や、アカデミー賞の動向をまとめた「Twitter Oscars Index」など、Twitterとの直接的な協業も多く見られる。だが過去の買収事例をみれば、Appleに買収されたTopsyが対外的なサービス提供を停止する可能性が高く(実際すでにPro Analyticsサービスへの申し込みは停止されている)、Twitter自身を含む既存の顧客企業への影響が気になるところだ。