第5工場の生産ラインの様子

パナソニックがPDP事業の終息を決定した理由は、同事業の赤字解消に目処が立たなかった点が大きい。PDP事業では、2013年度見通しで200億円の赤字を計上する見通しであり、今後も赤字脱却の青写真が描けない状況だった。

しかも、かつてのパナソニックの計画では、兵庫県尼崎市にある3つのPDP生産工場を稼働させることを視野に入れていたが、現在、第3工場は生産設備を撤去し停止中、最大規模を誇る第5工場は新たな生産設備を導入しないまま休止中となっており、現在、稼働しているのは第4工場だけだった。

当時の計画によると、第3工場と第4工場で、42型換算で年間1,000万台のプラズマテレビ用パネルを生産可能であり、第5工場では年間1,200万台規模の生産が可能になるという規模を見込んでいた。しかし、2012年度のパナソニックのプラズマテレビの出荷台数は、わずか191万台。3工場あわせて年産2,200万台という数字とは大きくかけ離れている。

昨年夏のロンドンオリンピックを控えた夏商戦ではプラズマテレビを前面に押し出した

こうした読み違いは、パナソニックが2011年度、2012年度と2年続けて、7,000億円を超える赤字を計上した元凶のひとつとなっている。

メーカーにとって、製造設備が動かないことの負担はあまりにも大きい。過剰な生産設備はパナソニックの業績を圧迫し、業績悪化につながっている。

パナソニックの津賀一宏社長は、「PDP事業は、これまで事業再生に向けて、固定費圧縮や大型化、電子黒板への展開などを行ってきたが、液晶が大型化され、電子黒板へも展開されるなどの状況があって、需要縮小が止まらず、赤字から脱却できなかった」とする。

津賀社長は、テレビ事業を統括するAVCネットワーク社社長や、パナソニック社長といったように、自らの立場を変えながら、PDP事業の生き残りを何度も模索してきた。

規模を追求すればするほど赤字幅が広がるという負のサイクルから脱却するために、年間700万台規模のプラズマテレビの生産台数を、250万台規模にまで縮小。収益性の高い付加価値モデルにだけ絞り込み、赤字脱却を狙った。

また、2012年にはPDPを活用した電子黒板市場に参入。2015年度には350万台の市場規模が想定されるなかで、20%のシェア獲得を目指し、PDP事業存続の道を探っていた。さらに、65型以上の大画面業務用ディスプレイ市場にも展開。デジタルサイネージとしての商業利用、文教分野や公共分野、色の再現性が求められる美術館や医療分野への展開を図ろうとしていた。

だが、結果として事業拡大につなげることができなかったのだ。

「PDP事業は、一時は1,000億円を超える赤字にまで膨らんだ。それを様々な施策によって200億円規模の赤字にまで絞り込んできた。しかし、その200億円の赤字を黒字に転換する、あるいは赤字を半減するといった施策が見えないことが、撤退という最終決断をした最大の理由」とする。

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