――先日行われたほぼ日手帳の展覧会「手で書く手帳展。」では、横尾忠則さんのTwitter用の手書き原稿などが展示されていましたが、糸井さんはTwitterでの発言などはどのように管理していますか。

年に一冊本を出していることもあって、スタッフが全部保存してくれています。今はTwitterの環境が整って、ログはぜんぶ残っているって信じてはいますけど。

――「つぶやく」内容は今考えたことなんでしょうか、それとも書きためておいたものから取り出すようにしているのでしょうか?

前から考えていたことだけど今言いたいということもあるし、反射的に思いついたことを書く時もありますね。

Twitterについて、コンスタントに書いてはいるけれど、反響をあてにしすぎないようにしています。例えば、60万人がフォローしてくれてるからって、本を出しても60万冊売れるわけじゃないですし(笑)。でも、リプライは全部読んでいますよ。

あてにしすぎないっていうのは、何ていうのかな。Twitterは"自分の飲み屋"みたいな感じだと思っているんです。だから、いきなりドカドカやってきて「料理がまずい」だの、「店が気に食わない」だの騒ぐなら、「じゃあ帰ってください」って思っていますね。

――確かに、Twitterが「自分の飲み屋」に似ているというところはありますね。そういえば、Twitterでは迷い犬と猫のフォローを熱心にしていらっしゃいますが、これも「飲み屋」の仕事の一環なんでしょうか?

あれはねぇ、もう自分の仕事みたいになっちゃってて……ものすごく大変なの(笑)迷い犬・猫などの情報は、全部リスト化しています。

何でリストが必要になるかというと、ペットが見つかった人はすごく興奮してるから、「糸井さん!見つかりました!」ってひたすら返信してくるんだけど、それまでにも迷い犬・猫はまた新たに出てくるから、見つかったのはどの犬・猫なのか分からなくなっちゃう。それで最初は、例えば「どこのどんな柄の猫か」って、日付順にメモしていました。見つかったら、リストから外す必要があるじゃないですか。

――ところで、「ほぼ日刊イトイ新聞」の見出しには、日本のWeb媒体に見られる、いわゆる「釣る」要素がないのが特徴的です。ほぼ日で連載のタイトルやトップページでの見出しをつけるときに、気をつけていることは何ですか?

(タイトルで)「裸!」とか書かない、ということです。

――裸、ですか?

要するに「大声を出させないようにする」ということですね。ほぼ日でも、入社して間もないスタッフが(見出しなどを)書くと「!」マークが並びがちなんだけど、「そのエクスクラメーション・マークはいらないんじゃない?」というような、教育的指導は先輩から後輩へ脈々と行われているところがあるかもしれません。

強調しすぎないということは、大切だと思うんですよ。単純に言えば「嘘をつかない」ということ。そして、責任がとれるかどうかということです。さっき言った「裸」にしても、裸が記事の中に本当にあるならいいけど、「裸か?」は違う、みたいなことで。あらゆる文章にはそうなった理由が必ずありますからね。そこに正直にならないと。

――最後に、クリエイティブにかかわる職業を目指している人たちにアドバイスや人生のヒントなどがあればおねがいします。

「クリエイティブな職業」っていうコトバの範囲がすごく狭くなっている気がするんです。そうじゃないと、いろいろ表現しにくいのですが。

農業だってものづくりのクリエイティブだし、たとえば会社の経理の人が人材募集をしようとすることだって、クリエイティブだし。"みんながやりたいこと"って、当然競争率も激しいわけだから「すばらしい必要がある」んだけど、みんなそういう覚悟はちゃんとできているのかな?と思いますね。

例えば、ある時みんなが「ラーメン屋はクリエイティブだ」って気づいちゃったから、ラーメン業界の競争率はすごく高くなった。クリエイティブを発揮できる仕事はいっぱいあると思いますよ。それに、何よりも「食えるチカラ」っていうのが大事ですからね。

――ありがとうございました!