9月20日に発売された米Appleの「iPhone 5s」「iPhone 5c」は、発売3日間で全世界900万台以上を販売するなど早くもヒット製品となっている。日本では、NTTドコモがiPhoneの取り扱いを開始したことが話題となっており、主要3キャリアそれぞれの戦略や、ついにiPhoneを手にしたドコモがどのような"逆襲"を見せるかが今後の注目点となる。

ドコモの参入により、各社のiPhone 5s/5cの料金体系がどうなるのかにも注目が集まったが、KDDI、ソフトバンクの2社が前機種「iPhone 5」をほぼ踏襲した料金体系を発表したのに対し、もっとも攻めの姿勢の料金体系を示したのはドコモ。特にポイントとなるのはiPhone 5s/5cの端末代金だ。iPhone 5s 16GB、iPhone 5c 16GBの2機種は、3社ともに新規契約またはMNPで2年利用した場合の実質負担額が0円となっているが、それ以外の機種の実質負担額はドコモがもっとも安くなっている。

また通常、機種変更の場合には、新規契約・MNPと比較してキャリアの購入サポートが少なくなるため、実質負担額は増えることになるが、ドコモ版iPhone 5s/5cでは「iPhone買いかえ割」の適用により、新規契約・MNPと同額の購入サポートを受けることが可能。これにより、現在ドコモを利用しているユーザーであっても、iPhone 5c 16GBまたは32GB、iPhone 5s 16GBを実質負担額0円で購入できるなど、他社よりも機種変更しやすくしているのが今回のドコモの料金体系の特長だ。

また、端末の一括購入価格については、ドコモ版が他社よりも高くなっていたが、一括購入時の負担金を軽減する「プレミア購入プログラム」ならびに、割購入したユーザーの残債負担を軽減する「iPhone残債減額プログラム」などを導入。これらのキャンペーンは、発売前日の深夜に発表されたもので、今回のドコモの柔軟かつ攻めの姿勢には意外な印象を持った人も多いかもしれない。

モバイルナンバーポータビリティ(MNP)による他社からの乗り換え施策については、3社ともに力を入れているが、中でもドコモの「ドコモへおかえり割」はユニークなキャンペーンと言える。同キャンペーンは、以前ドコモを利用していたユーザーが当時の電話番号のままMNPでドコモに戻ってきた場合に適用され、「タイプXi にねん」の基本使用料780円が2年間無料となる。さらに、他社のiPhoneを最大20,000円相当で下取りする「iPhone下取りプログラム」も実施。これらのキャンペーンは、iPhoneを購入するためにドコモの契約をやめてソフトバンクやKDDIに乗り換えたユーザーを呼び戻すための本気の施策と言える。特に「おかえり割」はドコモのiPhone参入が真実味を帯びてきた頃からSNSなどで「ドコモがiPhone出したらカムバック割使えるのかな? 」などと期待する声が多かった。

また、ドコモではMNPで他社から乗り換えた学生を対象とした「ドコモへスイッチ学割」も実施。「タイプXi にねん」の基本使用料780円が3年間無料となるほか、パケット定額料が最大3年間1,050円割引となるなど破格のキャンペーンとなっている。上記の2つに当てはまらないMNPであっても「ドコモへスイッチ割」が適用され、「タイプXi にねん」の基本使用料780円が1年間無料となる。これまでMNPで転出超過が続いたドコモだが、「ドコモへおかえり割」をはじめとしたキャンペーンによって一気に攻勢に出た格好だ。

そのほか、ドコモではiモードケータイとiPhoneの2台持ちをサポートする「プラスiPhone割」も実施。iPhoneの基本使用料780円が最大1年間無料となるほか、iPhoneのパケット定額料が最大1年間、525円割引の4,935円で利用可能となる。フィーチャーフォンとiPhoneのセット割は、他社にはないキャンペーンであり、どうしてもフィーチャーフォンを手離せないがiPhoneも使いたいというユーザーに人気となりそうだ。

マイナビニュースの別稿では、iPhone 5s/5cの発売前日からドコモショップの行列に並んだ様子をレポートし、並んでいたユーザーの声を紹介している。現在ソフトバンクを利用しているという男性は、「やっとドコモからiPhoneが出るので嬉しい。ソフトバンクは電波が悪く田舎にいくとすぐ切れるのが不満だった」とコメント。また、ドコモを11年使い続けているという女性は、「(iPhone 5で)KDDIやソフトバンクにしようとは思わず、ドコモからiPhoneが出たら買おうと思っていた」と語っている。これらのユーザーの声からも、いかにドコモ版iPhoneが熱望されていたのかが読み取れ、またその声に応えるべくドコモショップでの在庫確保へ力を入れている様子だ。

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ついにドコモがiPhoneの取り扱いを開始し、20日にiPhone 5s/5cを発売した。これまでiPhoneを販売していなかったドコモに注目が集まったが、これまでの劣勢状態を受けて、他社と比べても攻めの姿勢を見ることができる。とりわけ他社と異なるのは、「iPhone買いかえ割」により、現在ドコモを利用しているユーザーの機種変更のサポートも手厚くなっている点だ。また、本稿では取り上げなかったが、テザリングサービスを他社が3年目以降は有料としているのに対し、ドコモでは永年無料となっている。これらの点からも、MNPによる乗り換えユーザーばかりを優遇する他の2社とは異なり、ドコモには顧客との長期的な関係を築こうとしている姿勢を読み取ることができるだろう。

iPhone 5s/5cの発売直後である現時点では、既存のiPhoneユーザーを中心としたiPhone 5s/5cを熱望していたユーザーの機種変更が多くなっていると思われる。しかし、今後、フィーチャーフォンやAndroidスマートフォンからの機種変更が進むにつれて、ドコモの快進撃が見られるかもしれない。各社のiPhone対決に今後も注目だ。