人間の代わりに木を切り倒してくれる伐倒ポータブルマニピュレータ「巽」

タイトルとは順番が逆になるが、最初に紹介されたのが伐倒ポータブルマニピュレータ「巽」だ(画像22~24)。林業従事者の代わりにチェーンソーを使って木を切り倒すロボットである。巽の本体重量はおおよそ12kgで、チェーンソーをつけると18kgほどだ。人が持ち運びできる程度の重量を目指しているという(背負えるような仕組みなら、12kgなら山道でも運べない重さではない)。仕様としては、以下の通りである。

  • 人力で運搬できる重量:20kg以下
  • 自立稼働の保証:エンジンチェーンソーの搭載
  • 作業性確保:チェーンソーの着脱
  • チェーンソーに最適な伐倒手法の選択:受け口・追い口伐り採用
  • 伐倒時の作業者の安全確保:自動動作
  • 対応直径:3500mmまで

画像22(左):伐倒ポータブルマニピュレータの巽。画像23(中):巽を反対側から。シンプルな構造なのがよくわかるはず。画像24(右):巽のプロトタイプI号およびII号のイメージCG

ちなみに、辰年から巳年にかけて開発されたことから辰巳とし、同じ訓読みをする巽となったというわけだ。また竜(辰)のように力強く、蛇(巳)のように縦横無尽に森の中で活躍することを期待しての命名でもある。プロトタイプのI号機、II号機を経て、今回持ち込まれたのがIII号機だ。

巽の使い方は、巽を木の根元に設置して木の直径を入力すれば、後は自動的にチェーンソーの軌道を計算して木を切り倒してくれるようになっている(作業中は、木から人が離れていられる)。木は重いものになると1tにもおよぶため、倒れる時が最も事故が起きるタイミングだそうで(狙った方向に倒れないことも多いほか、倒れた瞬間に予期せぬ方向に跳ね上がったりもする)、その時にそばにいなければそうそう事故は起きないそうである(動画2・3)。

動画
動画2。巽の実機がアームを動かす様子。さすがに室内なので、チェーンソーのガソリンエンジンは始動していない
動画3。巽が実際に伐木した際の様子(セミナーで上映された動画を撮影)