4Kテレビは今後急速な勢いで成長するとみられている(ディスプレイサーチの予測)

では、なぜ4K放送が開始されていないのにもかかわらず、4K対応テレビが売れ始めているのだろうか。マーケティングの観点からいえば、主要量販店では4K対応テレビの展示コーナーが設置され、ソニー、東芝、シャープといった主要メーカーの4K対応テレビが並び、来店客に対して訴求するという点での相乗効果が見られている点は大きな要素だろう。そして今年の夏商戦では、1インチ1万円を切る4K対応テレビが各社から登場していることも需要を後押ししている。

また、本稿の第1回目でも触れたように、大画面化する際の課題である「画素が粗くなる」という問題が4Kの高精細パネルによって解決されるという点も見逃せない。さらに、4K放送が開始されていなくても、4Kならではの画質を楽しむことができる超解像技術が各社のテレビに搭載されている点も販売を促進する大きな理由だ。

フルHD映像を4K画面でキレイに表示させる超解像技術

ソニーの「X-Reality PRO」」では、フルHD画像でオリジナル映像を引き延ばした結果、ぼやけてしまった被写体の輪郭や画素の劣化を、独自のデータベース型複数枚超解像技術により復元。オリジナルの映像信号がもっていた本来の質感やディテール感を再現し、地デジ映像からネット動画まで、あらゆる映像を鮮鋭感のある美しい映像へ作りかえるという。

また、東芝でも再構成型の超解像技術を用いた「レゾリューションプラス4」を採用。エッジ部の映像復元の際に画像の自己合同性を用い、エッジ部の周囲の部分から映像信号が近似した箇所を検出。その画像を重ね合わせることで新たな高精細画像を生成し、より正確で克明な補正を行なるとしている。

ソニーの「X-Reality PRO」、東芝の「レゾリューションプラス4」など、各社ともHDソースの映像を4Kの画面でキレイに見えるよう超解像技術に注力する

さらに、シャープでは「AQUOS 4K-Master Engine PRO」を採用し、入力信号をリアルタイムに分析して、映像のディテールを適切に復元。そのシーンに最適な高精細映像を創り出す。地上デジタル放送やブルーレイディスク(BD)のフルHD映像を、4K解像度の臨場感あふれる映像で再現できるという。また、シャープは、4K対応テレビ「AQUOS(アクオス) C-60UD1」「LC-70UD1」でTHX 4K ディスプレイ規格の認証を取得。映画監督のジョージ・ルーカス氏の取り組みから生まれたTHX認証は、映画監督の意図する映像を自宅でも忠実に再現するものであり、4Kコンテンツでも、鮮明な映像でホームエンターテイメントを提供できるテレビとして認められたとしている。

シャープの「AQUOS 4K-Master Engine PRO」

シャープは「C-60UD1」「LC-70UD1」において、THX 4K ディスプレイ規格の認証を取得

シャープの4K対応テレビ「AQUOS UD1」シリーズ

こうした各社の技術が、4K対応テレビならではの楽しみ方を実現している。

業界団体である一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の佐々木則夫会長(東芝副会長)は、「4Kテレビ、8Kテレビは、日本の電機業界がイノベーテイブなものに取り組んでいくという意味でのフラッグシップになる。コンテンツが4K、8Kであることも重要だが、日本のテレビメーカーは、2Kのコンテンツを4Kに変換するような技術が得意であり、ここで差別化できるとも考えている。技術で先頭を走っていく象徴的なものが4K、8Kとなる」とした。

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