TLCの一部をSLCとして扱う「TurboWrite」とその効果

Samsung SSD 840 EVOに搭載された新技術の中でも、特に重要なものが「TurboWrite」と呼ばれる技術である。TurboWriteでは、NANDフラッシュの一部領域を、あらかじめハイパフォーマンスバッファとして確保しておく。ライト命令が来たら、まずこの部分にデータを書き込むのだが、ハイパフォーマンスバッファはTLCではなく、SLCとして扱われることがポイントだ。

TLCでは電荷を8段階で制御する必要があるが、SLCでは2段階で済むので、より高速な書き込みが可能なのだ。ただしTLCをSLCとして扱うため、例えば36GB分の領域でも、書き込めるデータはその1/3となる(最大12GB)。ハイパフォーマンスバッファに書き込まれたデータは、ホスト(PC)がアイドル状態のときに通常のTLC領域に転送される。TLCをSLCとして使うことで高速化する技術は、"コロンブスの卵"的な素晴らしいアイデアといえるだろう。

Samsung SSD 840 EVOの新技術「TurboWrite」の解説。1TBモデルの場合、36GB分の領域がハイパフォーマンスバッファとして確保されている

その36GB分の領域をSLCとして扱うことで、容量は12GB相当となる

SSD容量によって、TurboWriteが利用するバッファ領域のサイズは異なり、120GB / 250GBモデルが3GB(TLCとしては9GB)、500GBモデルが6GB(同18GB)、750GBモデルが9GB(同27GB)、1TBモデルが12GB(同36GB)だ。120GBモデルや250GBモデルで一度に3GBを超えるシーケンシャルライトが行われた場合は、バッファが一杯になった時点で、通常の領域にTLCとして記録する。このときライト速度は低下してしまうが、一般的な利用シーンでは、そんなに大きなサイズのシーケンシャルライトが行われることはほとんどないとのことだ。

書き込みを行う場合、まずハイパフォーマンスバッファに記録。SLCとして書き込むことで、書き込み速度は大きく向上する。その後、ホストがアイドル状態のときに、パフォーマンスバッファから通常のTLC領域にデータを転送

TurboWriteの効果。シーケンシャルライト速度は、TurboWrite有効時は120GBモデルで410MB/s、250GB / 500GB / 750GB / 1TBモデルで520MB/s。TurboWriteで利用するバッファが一杯になると、TurboWriteが効かなくなり、120GBモデルで140MB/s、250GBモデルで270MB/s、500GB / 750GB / 1TB品で420MB/sに低下する

TurboWriteに使うバッファ領域は、SSD容量によって異なる。120GB / 250GBモデルが3GB、500GBモデルが6GB、750GBモデルが9GB、1TBモデルが12GBである。120GB / 250GBモデル3GBというサイズでも、一般的な利用シーンでは十分な容量とのことだ

内部温度の上がり過ぎを防ぐ「Dynamic Thermal Guard」

信頼性を高める技術としては、「Dynamic Thermal Guard」がある。環境温度が高いとSSDの内部温度も上がり、温度上昇が大きすぎるとSSDの製品寿命が短くなってしまう。そこでDynamic Thermal Guardでは、SSDの内部温度を監視し、一定の温度を超えるとパワーダウンモードに自動移行する。パワーダウンモードではパフォーマンスが低下するものの、温度上昇を抑えることが可能だ。内部温度が一定温度まで下がると、再びパワーダウンモードが解除される。

高信頼性について。一般的に、NANDフラッシュのプロセスがシュリンクすると耐久性は落ちるが、信号処理によって十分な信頼性を実現している

HDDに比べて、消費電力が小さいこともSSDの利点だ。アイドル時の消費電力は7,200RPMの500GB HDDが0.5Wなのに対し、最新のSamsung SSD 840 EVOでは、11分の1(0.045W)になっている

信頼性を高めるために「Dynamic Thermal Guard」と呼ばれる技術を搭載。SSDの内部温度が上がり過ぎると、パワーダウンモードに移行して温度を下げる仕組みだ

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