米Appleは6月10日(現地時間)、サンフランシスコで開催しているWWDC 2013の基調講演でモバイル機器向けの次期OS「iOS 7」を発表した。2013年初の基調講演の舞台に立ったCEOのティム・クック氏は「(オリジナル)iPhoneの発表以来、最も大きなiOSのアップデート」と、刷新を呼べるようなiOSの変化を強くアピールした。

iOSデバイスは累計販売台数が6億台を突破したが、数ではAndroidデバイスに及ばない。しかしながら基調講演でAppleが示したデータによると、iPhoneユーザーの端末利用時間はAndroidスマートフォンユーザーの1.5倍、タブレットのモバイルWeb利用でiPadは82%のシェアを占める。iOSデバイスはライバル端末よりもユーザーに使われ、そして「好まれている」とクック氏。そして、こうした差を生じさせているのは"体験"の違いだと指摘した。

Androidスマートフォンユーザーの1.5倍もの時間をiPhoneと過ごすiPhoneユーザー

最新のOSへのアップグレードしやすいのもiOSの体験を引き上げている要因の1つ。これはアプリ開発者にとっても大きな魅力である

iOSのメリットである"体験"を中心に据えて、これからのiOSの進化の新たな起点になるように再デザインしたのがiOS 7である。具体的には、ジョナサン・アイブ氏が率いるデザインチームとクレイグ・フェデリギ氏が率いるソフトウエアエンジニアリングのコラボレーションによって誕生した。最大の特徴はフラットでシンプルなデザインだ。タイポグラフィー、新しいアイコン、カラーの選択や組み合わせ、細部までアイブ氏のデザイン思想が浸透している。その影響は見た目だけではなく、操作性にも及ぶ。上映された紹介ビデオの中で同氏は「突き詰めれば、デザインはユーザーの体験を際立たせる」と述べている。

機能的なシンプルさを追求した新デザイン

快適な体験を提供するためのデザインのこだわりは細部に及ぶ

変わるのはデザインだけではなく、iOS 7はiOSデバイスの使用体験を向上させるたくさんの新機能を備える。基調講演でフェデリギ氏は以下の11の機能を紹介した。

左からiTunes Radio、マルチタスキング、ホーム画面、コントロールセンター、Safariのタブ切り替え

  • コントロールセンター : エアプレーンモードのオン/オフ、Wi-FiやBluetoothのオン/オフ、メディアコントロールなど、ユーザーが頻繁に利用する操作にスワイプでアクセスできる。
  • マルチタスキング : ユーザーの端末の使い方(例 : Wi-Fi接続)に基づいて、効率的にコンテンツをアップデート。アプリをすばやく切り替えられ新デザインとの組み合わせで、スムースに複数のアプリを使用できる。
  • Safari : スマート検索ボックスが自動的に隠れて、大きくコンテンツが広がる。[戻る][進む]をスワイプ操作で行え、開いているタブもめくるようにスワイプで操作できる。パスワード管理機能「iCloud Keychain」に対応する。
  • AirDrop : Wi-FiまたはBluetooth経由で手軽にファイルをやり取りできるAirDropをiOSデバイスでも利用できる。「(ライバル端末のように)端末同士をぶつけ合う必要はない」とフェデリギ氏。
  • カメラ : 写真、動画、パノラマに加えて、正方形の写真撮影が可能に。Instagramのような写真加工フィルター機能も備える。
  • 写真 : 写真を年ごとに整理する「Years」、イベントなどで分類する「Collection」、さらに撮影日や撮影場所で写真を整理する「Moments」を使ったスマートな絞り込み表示が可能。

写真の「Years」表示。小さく並んだ写真でも、Retinaディスプレイならそのまま閲覧して選択できる

  • Siri : 男性・女性ともに自然で聞き取りやすい音声を採用。またBingやWikipedia、Twitterなど、Siriが参照するソースが拡大し、返信やボイスメールの再生などより多くのタスクをこなせるようになる。
  • アクティベーション・ロック : iOSデバイスのデータの消去や、リモートワイプ後の再アクティベーションにApple ID/パスワードを要求する「iPhoneを探す」の新機能。盗まれたiOSデバイスが再アクティベートして利用されることを防げる。
  • iOS in the Car (2014年提供予定) : 自動車のインダッシュシステムにiOSの利用体験を統合。iPhoneを接続し、車載の管理画面またはSiri Eye Freeを使って電話、音楽、メッセージ受信、マップなどをコントロールする。
  • App Store : アプリの自動アップデートが可能になる。新しいおすすめ機能として、ユーザーのロケーションに基づいた人気アプリを表示する。例えば、大リーグ球団の球場を訪れたら、MLB.comが「Polular Near Me」として現れる。
  • iTunes Radio : ストリーミング形式のネットラジオ。ユーザーが使うほどにユーザー向けにパーソナライズされる。まずは米国で提供開始となり、広告付きのサービスを無料で利用できる。iTunes Matchを契約している場合、広告は表示されない。

これらのほかプレゼンテーションのスライドの新機能一覧には、FaceTimeの音声チャット、通知の同期、電話/FaceTime/メッセージのブロック、長いMMSのサポート、PDFの注釈表示、アプリ単位のVPN、エンタープライズSSOなどが記載されていた。

Appleは11日にiPhone用のベータ版を開発者向けにリリース。iPad用の開発者向けベータは数週間後になる。一般向けの最終版のリリースは今年秋になる予定だ。アップデート対象機種は、iPhone 5、iPhone 4S、iPhone 4、iPad (第3世代/第4世代)、iPad 2、iPad mini、iPod touch (第5世代)など。