ディスプレイサイズの大きなスマートフォンが流行している。いまのトレンドは4インチ後半~5インチあたりである。スマートフォンが大画面になれば、色々なことが捗る。そのひとつが手書き入力だ。そこで本稿では、最新のスタイラスペンの使い勝手をスマートフォンを使って検証していきたい。

手書き入力が捗るスタイラスペンの実力を検証する。本レビューでは人気の高い「Su-Pen」を用いた

レビューに用いたのは、MetaMoJiが販売している「iPad/iPhone用スタイラスペン Su-Pen P170M-AS」「同Su-Pen P201S-ASC」(7knowledge)である。ちなみに、筆者はこれまで市販の安価なスタイラスペンを使い、それなりに満足してきたつもりだった。Su-Penに持ち替えることで、書き心地はどれ程向上するだろうか。そのあたりも紹介していきたい。

Su-Penシリーズの特長

ペンの書き心地を左右する最も重要な要素は、当然ながらペン先にある。そこでまずP170M-ASの先端に注目してみた。見た感じは何だか布っぽい。触ってみると布のような手触り。調べてみたところ、やはり布だった。Su-Penシリーズでは、ペン先に特殊な「導電性繊維」を採用しているという。このペン先は単独でも別売りされており、任意で交換できるようになっている。つまり本体を1本買ってしまえば、その後は先端の交換だけで使い続けられるというわけだ。次に、銀色に輝くステンレスボディに着目する。これは燕三条の磨き職人が仕上げたものだという。このあたり、メーカーのこだわりがひしひしと感じられるのである。

iPad/iPhone用スタイラスペン Su-Pen P170M-AS(価格は2980円)。ペン先部分には特殊な導電性繊維を使っている

ペン先を外してみたところ(写真左)。Su-Pen交換用ペン先2本セットR170M-2の価格は2200円に設定されている

同シリーズのP201S-ASCは、P170M-ASと少し形状が違う"ミニペン先モデル"。先端部分がくびれており、ペン先の直径は6.6mmと細めにできている。

iPad/iPhone用スタイラスペン Su-Pen P201S-ASC。価格は3280円

ペン先を保護する専用のキャップが同梱される(写真左)。P170M-ASと同様、ペン先は交換が可能だ。Su-Pen 交換用ミニペン先2個+アダプタセットR201S-2Aの価格は2200円

使ってみた感触は?

本製品を使えば、メモ用紙にモノを書くようにスラスラと文章が書けるのだろうか。早速検証してみた。使用したのは5インチディスプレイを備えるスマートフォン「htc J Butterfly」と、手書き入力に対応した2つのAndroidアプリ「7notes with mazec-T」「Handrite Pro」である。

手書き入力に対応したAndroidアプリ、7notes with mazec-T。手書きした文字を後からテキストに変換する「後から変換」機能などを備える

ディスプレイにペンを走らせてみると、さすがに書きやすい。これは例の、特殊な導電性繊維によるところが大きいのだろう。ディスプレイとペンが滑らかに接触するので、非常に軽快にペンが走る印象を抱いた。感度が良いので、速記しても書きもらしがない。これが安心感へとつながっていく。

手書きのメモ帳が簡単に作成できるAndroidアプリ、Handrite Proは繊細なタッチの違いが表現できるのが特長。ペンの色や紙(背景)も自由に変えられる

モノを書くとき、安心感はとても大事である。これまで筆者が使用していた安価なスタイラスペンでは、手書き入力のスピードを上げると正しく文字が書けていないことがあった。自分としてもそういうものだと割りきって使っていたので、確実性を求める仕事には紙とボールペンで対応してきた経緯がある。しかしこのSu-Penなら、取材先でも活用できそうだ。

他のスタイラスペンとどこが違うのだろうか

違うのはペン先だけ?

市販のスタイラスペンとSu-Penでは、どこが違うのだろうか。決定的に違うのは、既述の通りペン先である。これまで筆者が使用していた製品では、ペン先にゴムを使い弾力性を確保していた。このような市販品は多いことと思う。ゴム製ペン先の短所は、ディスプレイとの摩擦で「抵抗力」が生じることだ。これでは書き心地が良いわけはない。また、速く書くとペンが跳ね書き損じるため、力を入れてゆっくり書かなければいけないという制約もあった。Su-Penでは導電性繊維による柔らかなペン先で、この課題をパスしていた。 また、Su-Penの書きやすさの特長には「重心のバランスがペン先にある」ことも挙げられるだろう。これにより指先で力む必要がなくなり、書くことに集中できるのだ。総括するとペン先の技術開発のみならず、製品全体の重心のバランス、そして摩耗する部品を交換できる工夫、ひいては磨き職人による美しいデザインなど、トータル的によく考えられた製品に仕上がっていた。

今後、スタイラスペンの活躍する場が増える予感

最近の端末はディスプレイの大画面化に加え、タッチパネルの精度も向上してきている。スタイラスペンの活躍できる土壌が整ってきた、と言えるのではないだろうか。最後に蛇足だが、紙とペンで文章を書く人たちの中には"愛用の万年筆"を長年使い続けている人がいる。その同じ万年筆でないと仕事ができないのだそうだ。今回、こだわりのスタイラスペンを使ってみて、そんな気持ちが何となく分かった筆者であった。