日本時間の5月22日深夜に始まったMicrosoftの次世代Xbox発表イベント。ネットでも配信されていたため、眠い目をこすりながら視聴した方も少なくないだろう。同社のインタラクティブエンタテインメント事業担当社長であるDon Mattrick(ドン・マトリック)氏が紹介する「Xbox One」は、スタンバイ状態で音声認識による起動や、チャンネル変更、コンテンツ選択などを可能にしている。

これらはさらにパワーアップした新型Kinectの存在が大きく、既にWindows OSに対応する新型Kinect for Windowsにも着手しているそうだ。今週はXbox Oneの概要とMicrosoftが目指す方向性を探る。

エンターテインメントプラットフォームを目指す「Xbox One」

現地時間5月21日午前10時、次期Xboxと呼ばれていた「Xbox One」が正式に発表された。古くからパーソナルコンピューターに触れてきた方は、シャープの8ビットコンピューターを連想してしまいそうだが、ともかく第8世代に数えられるゲーム機器として、任天堂のWii U、ソニー・コンピュータエンタテインメントのPlayStation 4、そしてMicrosoftのXbox Oneと主要な3機種が姿を現したことになる。

ゲーム好きの方はライバル機種との機能差や、本体と同時にリリースされるゲームタイトルに興味を持たれるかもしれないが、本レポートでは、コンピューターをプライベートやビジネスに深く活用するユーザーにとって、Xbox Oneがどのようなポジションに位置するのか。Windows OSとの親和性はどのようになるのか。この点を踏まえて新デバイスの情報を整理する(図01)。

図01 同社のインタラクティブエンタテインメント事業担当社長であるDon Mattrick(ドン・マトリック)氏が紹介する「Xbox One」

前述のプレスリリースを精読すると興味深いことが浮かんでくる。冒頭からテレビやエンターテインメントとの連動を強調しているのだ。Xbox Oneの特徴を紹介する上で筆頭に掲げているのが「TV on Xbox One」。ケーブルテレビや衛星放送経由の放送をXbox One経由で楽しめるSTB(セットトップボックス)的な役割を担うという。ただし、発売時に利用できるのは米国のコンテンツに限定し、同社は徐々に世界展開を進めると述べている。また、Xbox OneはHDMI入力を備えているが、同機能の利用にはLive TVに対応するHDMI出力を備えた受信デバイスが、別途必要となるそうだ(図02)。

図02 Xbox OneのTV視聴モード。どの程度日本で利用可能になるかが評価に影響を与えそうだ

続く2つめの「Home」は、リビングでの利用シーンを強調しているらしく、標準装備のKinectによる音声認識をアピールしている。ユーザーは「Xbox On」と言うだけで電源が入る仕組みを紹介。NUI(ナチュラルユーザーインターフェース)を具現化したものだ。3つめの「Snap」は、Windows 8における「スナップ」に似た機能を使うことで、2つのアクションを実現可能。例えばライブTVを見ながらSkypeで友人と会話し、ゲームを楽しみながらWebブラウジングを行うといった操作を行えるという(図03)。

図03 こちはらXbox One起動直後に現れる「Home」。異なるサイズのタイルとしてコンテンツが並ぶ

そのSkypeだが、Xbox Oneでは標準サポートしていることを4つめの「Skype for Xbox One」でアピール。Microsoftが2011年5月にSkypeの買収を発表したのは、Xbox Oneのためではないのは明らかだが、85億ドルという高額な買収額の元を取るため、従来のIM(インスタントメッセンジャー)を廃し、Skypeに集約させるのは正しい戦略だろう。

プレスリリースでは、この他の特徴としてXboxコミュニティに参加しているユーザーの興味分野を検索できる「Trending」や、音声認識で番組ガイドの表示や検索を行う「OneGuide」なども列挙し、ようやくここからゲームタイトルの具体的な紹介が始まるのだ。このようにMicrosoftはXbox Oneを単なるゲーム機器としてではなく、すべてのエンターテインメントを扱うオールインワンデバイスとして位置付けているのだろう(図04~05)。

図04 コミュニティの間で人気のコンテンツが並ぶ「Trending」。見栄えは良いがどの程度使えるかは疑問

図05 事実上のテレビ番組となる「OneGuide」。声で時間を告げると好みの番組の検索できるという

前述したようにTrendingなどは、以前から提供されているXbox Live上のコミュニティと連動するが、コンテンツをダウンロードする際のロジックを見直し、利便性を向上したと記載されていた。現在Windowsストアアプリとして提供されている「Xbox SmartGlass」もXbox One向けに対応し、Windows 8やWindows RT、iOS、Android対応のデバイスを複数接続できるという。このあたりは筆者がXbox 360を使っていないため、どの程度の差が生じるのか不明だが、Windows OSに限った連動性を向上させる機能は現時点で用意されていない(図06)。

図06 Surface RTもしくはSurface Pro上で動作するXbox One対応の「Xbox SmartGlass」

Xbox Oneに後方互換性は用意されておらず、またXbox One上でXbox 360用タイトルは実行できず、今後もXbox 360用タイトルのリリースやサポートは継続するという。これらのことから、Xbox OneはXbox 360の後継機ではなく、新しいエンターテインメントプラットフォームとして開発されたと述べても過言ではなさそうだ。