今回発表した中期経営計画では、2013年度までを「構造改革ステージ」と位置づける一方、2014年度および2015年度を「再成長ステージ」とした。

高橋次期社長は、「当社の原点である誠意と創意をはじめとする創業の精神以外は、すべてを変える覚悟で新生シャープを築き上げる。勝てる市場、勝てる分野へ経営資源をシフトするとともに、自前主義からの脱却やアライアンスの積極活用、ガバナンス体制の変革による実行力の強化という3つの基本戦略が、これまでのシャープとの決別には必要。これにより、再生と成長を実現していく」と語った。

中期経営計画の初年度となる2013年度は、売上高2兆7,000億円、営業利益800億円、当期純利益50億円を目指す。

「営業利益は上期150億円、下期650億円と黒字を維持する。最終利益は、上期は200億円の赤字が残るが、下期は250億円の黒字とし、通期で50億円の黒字を見込む」と、最終黒字の達成に意欲をみせた。

2012年度に大幅な赤字を計上した液晶事業の黒字転換が、同社の通期業績を左右することになりそうだ。

中期経営計画では、2013年度の最終黒字化に続き、2014年度を収益体質のさらなる強化を掲げ、売上高で2兆8,200億円、営業利益1,100億円、当期純利益400億円を目標とし、2015年度には営業利益率5%の達成を目標にする。

2013年度を2012年度下期に続く構造改革ステージと位置付け、2014年度以降の成長実現を目指す

2015年度の営業利益1,500億円、当期純利益800億円が中期経営計画のゴール

2015年度における部門別売上高は、デジタル情報家電が年平均成長率1.2%増の7,600億円、健康・環境が8.9%増の4,000億円、太陽電池が4.0%減の2,300億円、ビジネスソリューションが5.6%増の3,500億円、液晶が7.4%増の1兆5,000億円、電子デバイスが10.0%増の3,600億円とした。

部門別売上高の2012年度実績と2015年度の見込み

グループ全体での営業利益の推移予想

まず、2013年度に営業利益800億円、当期純利益50億円を目指す

上期で大幅な営業損失を計上した液晶事業だが、下期はやや改善がみられた

高橋次期社長は、中期経営計画で掲げた「再生と成長」を実現する重点施策として、「事業ポートフォリオの再構築」「液晶事業の収益性改善」「ASEANを最重点地域とした海外事業の拡大」「全社コスト構造改革による固定費削減」「財務体質の改善」の5つを挙げる。

「事業ポートフォリオの再構築」では、勝てる分野での勝負を掲げ、「液晶テレビや液晶は、これまでグローバルスケールの市場においてパワーゲームに巻き込まれ、苦戦を強いられた。価値を提供するグローバルバリュー市場や、地域ごとのローカルフィットが必要になるリージョナルバリュー市場で戦い、安定性、収益性を優先する」とボリュームより利益を追う姿勢を説明した上で、「特に欧州向けテレビ、BD事業、欧州ソーラー事業の収益性改善に重点的に取り組む」と語った。

事業別の改革方針

「液晶事業の収益性改善」では、限界利益(貢献利益)の改善が重要だとし、付加価値ゾーンの強化と安定顧客との取引拡大による販売増に取り組むという。「IGZOや高精細タッチパネルなどのシャープの優位性が発揮できる領域において、新たな顧客を開拓する。収益性が高く、収益変動リスクが低い付加価値ゾーンの強化を進める」とした。

液晶事業はIGZOなどの付加価値を生かして収益変動リスクを抑える

2012年度は液晶において、6社の大手重点ユーザーと契約。だが、これが全体の約3割に留まっていた。2013年度にはこれを9社に拡大。2014年度以降には、大手重点ユーザーによる売り上げ構成比を6割にまで高める計画だ。また、亀山第2工場の操業度(稼働率)を高め、2013年度第2四半期にはフル稼働に近いところにまで引き上げるという。

安定顧客を増やすことで工場の操業度をフル稼働に近付ける

次ページ: 顧客を起点にした姿勢で再生と成長を図る