組み立てラインで熟練の技におどろく

工場見学最後のパートは、組み立てラインの見学だ。工場見学後にVAIO Duo 11の組み立て体験が待ち受けているためか、参加者の皆さんもこれまで以上に熱心に説明を聞いたり、作業している方の手元をじっと注視する。

通常、組み立てラインでは1つのラインで、液晶ディスプレイやバッテリなどを組み付けていくことが多い。その場合、製品が完成するまでのリードタイムが長くなってしまうという。長野ビジネスセンターの組み立てラインでは、液晶ディスプレイやバッテリなどそれぞれにラインがあり、組み付けの段階でラインが統合。複数のラインで並行して作業が進むため、リードタイムを短縮しているという。

ラインの各工程では、部品の位置決めなどの組み立て作業を補助する専用のジグを使って作業が行われている。VAIOの開発では設計部門と製造部門の間に「製造技術」という部門があり、設計段階からどのように組み立てるか、ジグなど組み立てに必要な機材の製作を行って、スムーズに製造が行える仕組みを作っている。

圧倒的なスピードで作業が進められていく様子を見学

VAIO Duo 11ではディスプレイを立てたときに見ることができるのだが、本体とディスプレイは薄いフレキシブルケーブルで接続されている。このケーブルは本体側の非常に狭いスペースを通す必要があり、一見するとかなり難しそうな作業に見えるが、ジグに鏡を取り付けるなどして、スペースを見つけやすくする工夫が採られている。

しかし、見学したときの作業員の方はほとんどその鏡を見なくてもあっという間に狭いスペースにケーブルを通していく。こうしたジグに加え、長く長野の地で培われた熟練の技により、VAIOの薄型・軽量化が実現されていると実感する。

また、VAIO Duo 11では、ソニーストア限定のオプションとして、液晶保護シート(別売)の貼り付けサービスを提供している。ラインでは、液晶保護シートの貼り付け作業の様子も見ることができる。透明なシートで覆われ、ほこりが入らないようになっている作業スペースで貼り付けが行われている。昨今のノートPCでは、Webカメラを搭載していることが多い。保護シートを貼り付けるときもカメラ部分をきちんと外す必要があり、その位置決めも素人では非常に難しい。

組立てラインではやはり、シートを貼り付けるためのジグを用いて位置決めをし、一気にシートを貼り付けていく。ほこりや気泡もないきれいな仕上がりになっている。スマートフォンですらシートの貼り付けに四苦八苦している筆者にとってもぜひ利用してみたいサービスに映った。

製造ラインでも要所要所で装置を使った検査が行われており、ヒューマンエラーを最小限にする工夫が撮られている。特に製品の梱包後に重さを計測し、重さの違いによって付属物などが漏れていないかチェックする仕組みなどに参加者は驚いていた。

VAIO Duo 11は"二刀を使いこなす侍"

イベントではVAIO Duo 11開発陣とのトークも行われた。開発陣自らの手で本体を分解しながら、それぞれの開発の話が聞けるというプレミアムなイベントとなった。

開発陣を囲んだ座談会も行われた

はじめにVAIO Duo 11のプログラムマネジャーからVAIO Duo 11のコンセプトが語られた。ソニーではこれまでにも「VAIO U」などスライド式のPCの開発を担当してきた。「以前からVAIOではコンバーチブルモデルの製品にチャレンジしているが、ようやくOSが追いついてきた」という。

VAIO Duo 11について、Windows 8のタイル状のUIと、デスクトップUIをシームレスに切り替えて活用できるスタイルを考え、VAIO Duo 11を「2つの刀を使いこなす剣豪」(=宮本武蔵)になぞらえて社内でプレゼンテーションを行ってきたのだという。

このほか、開発陣からRapid WakeやcTDP、デジタイザースタイラスなどVAIO Duo 11に搭載された機能の解説が行われたあと、実際に分解された本体を見ながら内部の実装に話が進んだ。

開発者から直接VAIO Duo 11に搭載されているさまざまな機能についてレクチャーを受けることができた

やはり注目は同社がSurf Slider(サーフスライダー)と呼ぶスライド式の機構で、本体側でもかなりのスペースをヒンジに割いている。スムーズな切り替えを行うには、かなりの試行錯誤があったという。ディスプレイの起きる力が弱ければスムーズな切り替えとはいかず、逆に強いと本体にかなりの衝撃と負荷がかかってしまうことになる。

開発中もさまざまな形式のヒンジを試作し、検討が行われた。ディスプレイの立ち上げを補助するバネや、起こした際の衝撃を小さくするダンパーなどを採用し、また本体とディスプレイをつなぐフレキシブルケーブルも通常のものより柔軟性があるものを開発したという。

また、VAIO Duo 11ではサウンド面もかなり力が入れられていることが語られた。同社がこれまでのwalkman開発で培ってきたノウハウを取り入れて、オーディオ基板を作成している。小型で薄型のボディに収めるために、コイルやICをVAIO Duo 11用に新たに製作。ヘッドホン使用時にはwalkmanでも用いられているフルデジタルアンプ「S-Master」による高音質なサウンドも楽しむことが可能で、開発陣も「付属のイヤホンなどでぜひ聴いてもらいたい。感動する音に仕上がっている」と自信をみせていた。

トークの終盤では分解したVAIO Duo 11をもう一度組立てて電源を入れるデモも行われた。あっという間に組み立てが終わり電源を入れ、起動画面が立ち上がると参加者からも拍手が湧いていた。

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