Tegra 4i搭載スマホのリファレンスプラットフォームも

また、同社はTegra 4i搭載スマートフォンのリファレンスプラットフォームとして、"Phoenix"(フェニックス)を公開した。同プラットフォームは5型の1080pパネルを採用しながらも、8mmという薄さを実現。ビデオプレイバック時に各ピクセルの色を明るくすることでバックライトの消費電力を低減するPRISM(Pixcel Rendering Intensity and Saturation Management)は、より締まった黒や、なめらかな階調表現を実現する2.0へと進化。高速なマルチタッチ処理を可能にするDirectTouchやComputational Photography Architectureなども実際に体験できるリファレンス設計となっている。同社はこの"Phoenix"をWMC2013で公開するほか、パートナーへの提供を始める意向で、今年前半にはチップのサンプル出荷を開始し、同SoCを搭載した製品が年末には市場に出回る見通しだと説明する。

Tegra 4iのリファレンスプラットフォームとなる"Phoenix"の特徴

Phoenixリファレンスプラットフォームの内部構成

話はやや横道にそれるが、この"Phoenix"というプラットフォーム名に、ニヤッとした方は、なかなかのアメコミ通(または、アメコミ映画通)と言えるかもしれない。ご存じのとおり、NVIDIAは、Tegraの開発コードネームをすべて、アメコミのヒーローで統一しており、Tegra 4iの"Project Grey"も、X-Menの登場人物であるJean Grey(ジーン・グレイ)から取られたものだ。そして、Tegraシリーズのコードネームの中では唯一のヒロインとなるJean Greyの別名として知られているのが"Phoenix"というわけだ(そのいきさつなどは、割愛する)。ちなみに、Tegra 4を搭載するNVIDIAのゲーム端末"Project SHIELD"も、アメコミヒーローたちを管理する組織「S.H.I.E.L.D.」から名付けられている。

新興市場などで、急速に普及が進んでいる低価格スマートフォン市場において、100ドル台を実現するTegra 4i搭載スマートフォンがどれだけ成功を収めるかも注目だ

Tegra 4とTegra 4iでは、異なる市場をターゲットとしていることが分かる

2011年11月のTegra 3発表時点のロードマップ。モバイルプロセッサとして世界初のクアッドコア化を果たしたTegra 3以降、コードネームにはアメコミのヒーローの名が与えられるようになった

2012年のNVIDIAの投資家向け会議で公開されたTegraとIceraの統合計画で、すでに"Grey"の計画が明かされていた

"Wayne"ことTegra 4と、"Grey"ことTegra 4i以降、Tegraの進化は二極化していく可能性もあると、業界関係者は指摘する

NVIDIAは、このTegra 4iを低価格が進むスマートフォン市場を勝ち抜くための切り札と考えており、「Tegra 4iを搭載するスマートフォンは、100~300ドル台で市場に出回るだろう。しかし、その大半は100ドル台になると見ている」と、Wuebbling氏が説明するように、メインストリームスマートフォンの性能を底上げするとともに、Tegra 4シリーズならではの機能を低価格スマートフォンにもたらすことで、モバイルプロセッサ市場における影響力を高めたい考えのようだ。

そして、同社に近い業界関係者の話によれば、NVIDIAは、"Kal-EL"(スーパーマン)からスタートし、"Wayne"(バットマン)、"Lorgan"(X-Men)、"Stark"(アイアンマン)と続くTegraの本流は、高性能タブレットやスーパーフォン向けとし、Tegra 4iからスタートするメインストリーム向けのSoCが、今後、開発コードネームにヒロインの名前が与えられた新しい潮流となる可能性もあると指摘する。その意味では、アメコミ初のスーパーヒロインとも称されるJean Greyの名を冠したTegra 4iが、NVIDIAのモバイルプロセッサ戦略において、どう発展していくかも注目したいところだ。