Windowsのアップグレードを毎年低価格方式へ移行か

図09 Windows Blueの情報を報じる「The Verge」

現時点では未確定な情報に過ぎないが、今後のWindows OSに大きく関わると判断し、ここに報告する。以前から次期Windows OSの開発コード名として「Windows Blue」という名がネット上で噂されていた。これが本当に次期Windows OSとなるのか、Windows 8 Service Pack 1のコード名なのか確証を得るのは難しかった。だが、海外ニュースサイト「The Verge」が報じた内容によると、Windows Blueは毎年低価格でアップグレードするOSだという(図09)。

従来のMicrosoftは、Windows OSリリース直後から次のOS開発をスタートさせ、リリースまでに数年の月日を必要としてきた。同社は既にWindows 8に続く次期Windows OSを開発中だが、これまでの開発スタイルを刷新し、低価格あるいは無料でWindows Blueを2013年半ばにリリースする予定だという。興味深いのはWindows BlueはWindows 8と異なるUIを搭載するという点だ。

Windows 8のスタート画面に関して賛否両論あるのは、Microsoftも認識しているのだろう。このUI改変がスタート画面を含むものなのか、それとも部分的な改変にとどまるのか現時点では不明だが、プラットフォーム内部にも改変を加えるという情報を踏まえると、従来のService Packというよりも次期Windows OSと捉えた方が正しいのかもしれない。

そして、最大のポイントとなるのが、毎年低価格でアップグレード可能にするという点。そもそもWindows 8 Proの価格はパッケージ版が5,800円、ダウンロード版は3,300円と過去にない低価格設定に方針転換を行った。その背景にはWindows 8の普及率向上と、ライバル企業であるAppleが採用している低価格でほぼ毎年リリースしている低価格方式を参考にしたとするのが素直な見方だろう。

Macintoshのシェア(市場占有率)はNet Applications.comによると、6.21パーセントに過ぎないが、iOSを含めると12.37パーセントに上昇する。Windows OSは81.92パーセントと圧倒的なシェア率ながらも、調査会社のAsymcoが今年7月に公開したWindows OSとMacintoshのシェア比較推移データを踏まえてもわかるように、iPhoneを含めた両者の差は大きく縮まっているのが現状だ(詳しくはJunya Suzuki氏の記事をご覧いただきたい)。良い所は遠慮なく取り込み、自身の血肉としてきたMicrosoftが、Appleの低価格方式を取り込むのは自然な流れなのである(図10)。

図10 Net Applications.comによる各OSのシェア状況

話をWindows Blueに戻そう。The Vergeの記事では、正規版のWindows 8に対して低価格もしくは無料で提供し、海賊版の場合はWindowsストアが機能しなくなるという。また、ソフトウェア開発に必要なWindows SDK(Software Development Kit:ソフトウェア開発キット)を更新し、Windows Blue用アプリケーションの開発を推し進めると同時に、Windows 8用Windowsストアアプリの受付は停止される。なお、開発済みのWindows 8用WindowsストアアプリはWindows Blue上でも使用可能になる予定だ。

パーソナルコンピューターを取り巻く環境は大きく変化した。AppleはiOSで復活を遂げ、GoogleはLinuxをベースにスマートフォン向けOSとしてAndroidを開発し、Microsoftが築いてきた牙城に迫りつつある。タブレット型コンピューター向け機能を大幅に強化したWindows 8の存在が、その現状を裏付けていると述べても過言ではないだろう。Microsoftが各ライバル企業に対して競争力を高めるため、毎年低価格方式へ移行するか否かは、同社広報担当者もコメントを避けているため、ふたを開けてみないとわからない。だが、現状を踏まえれば、この方式へ移行するのが理にかなっているのは確かだ。

阿久津良和(Cactus