調査会社のAsymcoが先週7月4日(米国時間)に公開した、WindowsとMacの市場シェア比較の推移を示したデータが話題になっている。1984年の初代Macintosh登場以来、Windowsを含むPCマシンにシェアの差を広げられ続けていたMacだが、2004年からその関係が反転し、その差をピーク時の3分の1まで縮めている。そしてMacに加え、iPadやiPhoneといったiOSデバイスのシェアを加えると、その関係はさらに違う姿を見せることになる。

MS-DOSのようなCUIシェルの全盛時代にGUI+マウスという新しい操作体系を引っさげて登場してきたMacだが、値段が高価などさまざまな問題もあり、初期は必ずしも順風満帆ではなかった。下のグラフ1はMacの販売台数に対し、Windowsを含むPCマシンの販売台数がどの程度あるかを倍率で年ごとの推移として示したものだが、1990年までPC優勢が続いた後、1995年まで両者の差がいったん縮まっている。Windowsではなく「PC」としているのは、Windows自体がまだメジャーな存在でなく、MS-DOSのほうが主軸だったためだ。Macがシェアを伸ばした時期は互換機なども登場して廉価なMacモデルが多数出揃った時期でもあり、ここでユーザーを多数獲得したためとみられる。

グラフ1 Macに対するWindowsを含むPCの販売台数の割合。18xとなっている場合、PCがMacの18倍の台数売れているということを示す(出典: Asymco)

状況が変化するのは1995年以降で、ここから急速にPCのシェアが伸びている。これはMacの売れ行きが鈍ったというより、言わずと知れた「Windows 95」の登場でPC販売に一気に加速がかかったためといえるだろう。この傾向は2004年にPCがMacの56倍になるまで続き、PCが圧倒的優位に立った。途中、1999年にMacのシェアが一時的に巻き返した様子もみられるが、これはおそらくボンダイブルーでお馴染みの初代「iMac」の登場によるものだろう。

ところが2004年以降、PC圧倒的優位の状況から少しずつ変化が起こり、現時点で20倍を下回る水準まで差が縮まっている。原因はいくつか考えられるが、まずユーザーがMacを購入するトレンドができたことが挙げられる。この時期のメジャーな変化といえば、MacのプロセッサをPowerPCからIntelにスイッチしたことだろう。これにより、性能・発熱・安定供給の面で問題を抱えていたPowerPCを離れ、高性能プロセッサをノート製品へと持ち込むことが可能になり、後のヒット商品となるMacBookシリーズが誕生した。初期はオープンソース開発者など一部の先進ユーザーが試験的に導入を始めていた程度だったが、しだいに一般にも利用が広まり、現在では「iOSアプリの開発マシン」としてもMacはなくてはならない存在となりつつある。

とはいえ、いまだ両者の差は18倍以上で、Macのシェアが2004年の水準から現在まで3倍以上に拡大したといっても、ここからさらに差を詰めるのは容易ではないだろう。しかし、このMacのシェアにあるスパイスを加えると、グラフはとたんに違う姿を見せることになる(グラフ2)。

グラフ2 先ほどのPCの販売台数の割合グラフに、Mac陣営としてiPadとiPhoneの数値を加味したもの。現時点でMac+iPad+iPhoneの販売台数は、PCの総販売台数の半分(2x)の水準まで迫っている(出典: Asymco)

上のグラフはMacのシェアにiPadとiPhoneの販売台数を加えて、PC販売台数との比較を行ったものだ。2011年のデータでは、Macの台数にiPadの台数を加えることで、PCとのシェアの差を6倍にまで縮めている。これにさらにiPhoneの台数を加えると、なんと2倍にまで縮まる。いまの両デバイスの販売台数増の勢いを考えれば、ここでシェアの伸びが止まるとは思えず、おそらくはそう遠くない未来に両者が同等、あるいは逆転する状況が発生する。異なる種類のデバイスを比較するのはフェアではないという考え方もあるが、こうしたトレンドの変化はMicrosoft自身も気付いており、だからこそのWindows 8/RTやWindows Phone 8の積極プッシュなのだろう。

さて今回のAsymcoの分析だが、公開からすでに5日以上経過しているにもかかわらず、コメント欄には大量の書き込みでディスカッションが行われており、非常に盛り上がっている。宗教戦争ともいえるPC(Windows)派とMac派の意見のぶつけ合いは日本の掲示板でもお馴染みだが、いくつか興味深い意見があるので簡単に紹介しておく。例えばNeilMという読者は「利益率」について触れている。単純にシェア比較を行うとこのデータ通りだが、PCメーカー各社が日々利益をギリギリまで削って競争を繰り広げているのに対し、Appleがどれだけの利益を上げているのかに注目すべきだと指摘している。「今日のAppleの繁栄があるのも、強力なサプライチェーンを築いたTim Cook氏の手腕」と同調する声があり、今回のデータには見えない部分に興味を向けている。また製品の魅力についても「Windows RTは機能限定版Windowsにしか見えない」という意見があり、プラットフォームに対するAppleとMicrosoftのスタンスの差が、そのままユーザーからの製品の見え方の違いとなっている様子もうかがえる。

さてこれらのデータ、数年後にどのような傾向を見せているだろうか?